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ファントムの日常

2036年6月2日 A.M.7:30

福井家

 

 平日の朝は穏やかにして、学生にとっては波瀾万丈な時間帯だ。

 授業開始までの密度の高いスケジュール、一つのミスはすべての崩壊を意味し、遅刻という結果を得る。

 しかし僕はそんな中でも布団の中で穏やかな時を過ごしていた。

 …いや、足音が聞こえてくるまでのことだな。

「れんか~。朝だよ~」

 そんな甘えたような、幼い声が聞こえた。

 僕は決意を固め、ふて寝をする。

 ドアを開けたような音がして、僕の横に気配がやってきた。

 気配は僕を優しく揺する。

蓮花れんか…朝だよ。ほら起きて」

 天使の誘いのような声に意識をゆるめ、目を開けてしまいそうになるが、断固としての拒否を決め込む。

 揺れは強くはならず徐々に重く……いや、何かが僕の上に乗っているかのような感覚がする、揺れもなくなっている。

 まさか――僕は、浮かんだ考えを否定する。

 僕は目を開け、自分の上に目を移してみると汚れなどまったくない可憐なる美少女が、口元に手を当て、目を潤ませ、僕の上に乗っていた。

「何回も言っているだろう。次やったら怒るって」

 その少女は僕の上で四つん這いになっているため、イヤと言うほどに近い、というか一部は当たっている、双丘ともいう場所だ、はっきり言えば胸だ。

 少女は全く気にしていない様子で、僕の上から降りていく。

「やっと起きたよ。早く着替えて降りてね」

その少女は俺の上で四つん這いになっているため、イヤと言うほどに近い、というか一部は当たっている、双丘ともいう場所だ、はっきり言えば胸だ。

 少女は全く気にしていない様子で、俺の上から降りていく。

「あ、起きました? 早く着替えて降りてきてくださいね」

 少女は、僕の言葉をあえて無視しているのか、にっこりと微笑むと立ち上がった。

 クマの絵がプリントされた、黄色いエプロンが目に映る。

 おたまを片手に持っているあたりが可愛らしい……

「わかった。シャワーを浴びてから着替えるよ」

 僕が立ち上がり、パジャマに手をかけたあたりで、少女は顔を真っ赤にして部屋をでていった。

「こんなところは、すぐ反応するんだよな…」

 僕は呆れながら真っ赤になった少女のことを考えた。

 ――おっと、はやくしないとご飯を吟味する時間がなくなる。急ごうっと。


+ + + 


 私立水連大学付属中等教育学校。それが、僕の通う学校である。

 校則など無いに等しいほどの自由度の高い学校で制服はなど存在せず私服で登校したりやIDカードで出席確認したりなどすごかったりする。

「蓮花……?」

 ちなみにただ自由度の高いとゆうことでもなく偏差値もすごく高いので、私立といえどバカにはできなかったりする。

「ぐす……蓮花……」

「次は、なんだって…なんで泣いてるんだよ?」

「れんかが、無視するから……ぐす……」

 福井蓮花ふくい れんか。僕の名だ。

 両親は現在単身赴任中で、いつ帰ってくるかわからない…いや多分帰ってこないと思う。

 料理家事が苦手な僕をほっていくのはどうかと思うが、目の前にいる少女がすべてを解決してくれる。

 福井昴ふくい すばる、とりあえず言うが嫁ではない、俺の姉だ。

 セミロングの黒髪で、目の色が青紫色だ。

 あとモデルのようなスタイルのくせに精神年齢が低いのは事情が、あったりなかったりする。

「悪かったから泣かないでくれ」

「う、うん……」

 成績優秀、運動神経も人並み、家事全般OK、そのうえ美少女。

 子供より仕事を選んだダメ親から生まれたとは思えないできすぎた姉だ。

 すこしーーいや、だいぶ天然でドジで泣き虫で子供っぽいところ(つまりさっき言った見た目より精神年齢が低いところ)があるが、それがまた男子生徒諸君に好評な魅力らしいので善しとしよう。いや、全然良くはないのだが。

 昴は僕に撫でられて赤くなるが、すぐに青ざめた。

 それと同時に、焦げたようなにおいが漂う。

 なにか黒い煙がたってたりするが……まさかな……

 昴は、作り笑いを浮かべている。

 僕も笑みを浮かべるが……頬が引きつっているのがわかる。


* * *


「ごめんなさい……」

 昴はショボンと肩を小さくする。

 目の前にあるのは焦げきった目玉焼きと手作りの野菜スープ、そしてこんがりと焼かれた食パンだ。

 わかっているとはおもうが、目玉焼きが焦げたのだ、火の消し忘れで。

 こんがり、と表現した食パンのほうは悪い意味のこんがりではないと記しておく。

 幸い、スープの方はきっちりと火を消していたようで、おいしくいただける。

「気にしなくていいから、なっ」

「うん……」

 そういいながらも昴はショボンとしたままだ。

 失敗したとき、みている方がつらくなるくらいものすごく反省するのがこいつの悪い癖だ。

 下手したら一日はそのままだ。

 僕は腹をくくり、目玉に箸をのばす。

 昴がそれに気づくが、そのころには目玉焼きの一切れが僕の口に入っていた。

 苦い、それに加えて砂のようなザラザラ感がある。

 僕はそれをどうにかして飲み込み、笑みを浮かべた。

「十分おいしいよ。だから元気だしなって」

 昴を立ち直らせるただ一つの方法、とりあえず誉めることだ。

まえにいちど、小学校ぐらいの時にこうしたら機嫌を直してくれた。あのときは……なんだったかな?

「蓮花……」

 昴はなにに感動したのか、目を潤ませている。

 少し頬を赤くして、満面の笑顔を見せてきた。

 とりあえず、機嫌は直ったようだ。

 僕はそう結論づけて、スーブを含む。

 昴は食事を終えるまで、終始笑顔を絶やさなかった。

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