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MAGIC SCHOOL  作者: 永羅
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第二十二話 親友

 「あの時、何で断らなかったの?」

 別に断ろうとしたわけではないんだけど、どう考えてもメリットはないしただめんどくさいだけだろうから。

 「あの人は何かを知っている。そしてそれを隠している」

 「同感。それに最後の溜息、絶対に何かおかしい。そして何よりあの表情……凪とそっくり」

 凪こと、久世凪くぜなぎ。小学校の2年の頃に出会ってからずっと親友だった。ただ、中学に行く頃に父親が死んだ。元々母親がいなかった凪は、どこか他の所に引き取られた。丁度母さんが失踪したのと同じくらいの時期だ。もしあの夢が本当だったら、恐らく母さんが凪を引き取る、または連れ去ったのだろう。そうすればこの学校にいるということも全て結びつく。元々あいつは虐待を受けていた。そのせいもあり、いつの間にかどんな時でも笑うことはできなかった。泣くことも、どんなことも表情に表せなくなっていた。心から笑っていても表情に自然と出ることはなかった。だから、表情を作ることにしていた。そのうち、他の人から見たら笑っていなくても作り笑いさえすれば本当に笑っていると思われる程表情を作ることがうまくなっていた。でも、何故か僕には凪の気持ちがわかっていた。香奈ですらわからないのに、何故か僕にはわかった。彼女は凪の時の感覚と全く同じだった。彼女を凪にすれば何もかも納得いく。

 ……そんなことないか。ありえないことだとはわかっている。でもそうとしか考えられないし、そう考えれば全て辻褄が合う。ただ一つおかしなことがある。あいつは男だ。それに好んで女装などする訳も無い。でも、やっぱりあれは凪としか考えられない。

 「ちょっとあの人に聞きたいことがある。香奈は先に部屋に戻って!!」

 僕は、ひたすら走り続けた。彼女に会って聞くんだ。『貴方は何者なのか、本当に凪なのか』と。


           Ж       Ж       Ж


 「ふぅ……」

  最近はどうも振り回されてばっかだ。本当はこんなつもりじゃなかったのに。まぁこんなことを考えていても仕方ないか。二人も帰ったようだしもう帰ろうかな?

 そんなことを考えていると、勢いよくドアが開いた。

 「すいません! ちょっと聞きたいことが」

 「何?」

 そう言って、笑顔を作ってみた。


           Ж       Ж       Ж


 ドアを開けると、椅子から立ち上がって今帰ろうとしている彼女の姿があった。

 「えっとー……あの、貴方は─」

 「奈美でいいわ」

 どうやら彼女、いや彼の名前のようだ。いや、偽名と言った方がいいか。

 「えっと、奈美さん 聞きたいことがあります」

 「敬語じゃなくていいって。で、何?」

 「わかった。じゃあ本題に。貴方は……」

 「凪なの?いや、凪なんでしょう!!」

 「え?何のこと?」

 「とぼけないでよ!!もうばれてるんだよ!?隠してどうするの!!」

 すると、目の前の人は舌打をした。

 「ハァ……。やっぱりばれたか。そうだよ、海菜。俺は凪だ」

 「やっぱりそうか。じゃあその格好は何?そして凪は何を知って─」

 「そんなに急くなって。ちゃんと話すから。とりあえず落ち着け」

 「ごめん」

 つい興奮してしまった。いくら凪のこととはいえやりすぎたな。

 「まず、城菜は大の男嫌いだ。これはわかるよな?」

 今言っていたように、母さんは大の男嫌いだ。父さんも中性的な顔だし、僕や香奈をこうして育ててきたのもそれが原因だ。

 「お前はここまで言えばわかると思うが、まぁそのせいで俺はここまで女らしくさせられてしまったと。顔はいつの間にかこうなっていたし髪は切ることを許されなかった。この学校に入れと言われても女子として入学させられるし」

 恐らく母さんのことだ。顔は知らない間に整形させたか薬を使ったな。

 「そして俺の知っていること。それはお前、香奈、鈴菜、城菜。そして俺の能力だ」

 「え?」

 「能力は暴走したら大変だから気をつけろよ」

 「いや、能力って??」

 「驚くのも無理ないか。今まで誰にも聞かされてないんだし。お前の家系は特別な家系だ。それぞれに特別な力が与えられるらしい」

 「で、何で凪にその能力が?」

 「俺は城菜の伯父の孫だ」

 「えぇー!?」

 つまり、僕と凪は親戚?ってことになるな。

 「ここまで、だ」

 「何で?ここまで来たのに」

 「わざわざそんなことを話すのもめんどくさい。自分で見つけろ」

 「さっき話すって言ったよね?」

 「言った。だけど何で俺がそこまでしないといけない?理由は無いだろう」

 「凪ぃー!!」

 「そう怒るなって。自分の力くらいは自分で理解した方がいいだろ?それに何より……」

 「何より?」

 「面白くない」

 とりあえず殴ってみた。鈍い音が部屋に響き、凪は床に倒れこんだ。

 「痛ってー……。全く、魔力込めて本気で殴るなよ。感動の再会だろう?」

 「今ので全部吹き飛んだよ」

 「お前も随分凶暴になったな。昔なら『何それぇ?』とか言ってちょっとむくれるだけだったのに。つか血ぃ出てるし」

 顔を見ると、本当に口元から血が流れていた。

 「知らない。自分で治療しな」

 「お前本当に冷たくなったな」

 「只単に機嫌が悪いだけだ!!」

 「悪かったって。本当言えばこれ話したら城菜からの拷問があるから言えないだよ」

 「……治療、するよ」

 「あぁ、頼む」

 凪は昔と全然変わってない。人をからかって面白がるけど、何故か憎めない。目は何処か悲しそうで、遠くを見つめている。全てにおいて、全く同じだった。

 「何にやにやしてんだ?」

 「ん?いや、凪が帰って来たんだなぁと思ってね」

 その言葉を聞くと、凪は笑い出した。つい僕も笑ってしまう。ここに凪がいる。それが僕にとってとても嬉しく感じた。

因みに香奈と凪はまぁまぁ仲はいいけど海菜程では無いようです(笑)

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