題二十話 夢
「私と一緒に行こう」
何で?
「貴方には特別な能力があるの」
どんな?
「来てくれればわかる。そして私はそれを教えてあげる」
俺をどうするつもりだ?
「私は貴方の能力を発揮させたいだけ」
それを利用する気か。
「ふふふ…… なかなか鋭いわね。」
はぁ…… で、俺は何をすればいい?
「私の言う通りにするだけよ。 他は自由にすればいい」
わかった。あんたの言う通りにする。ただ、それなりの事はしてもらうぞ。
「交渉成立ね。じゃあ行きましょうか」
あぁ。その前に、あいつには何て言っておくか?
「その辺は私が何とかしておいてあげる。心配しないで」
そうか。じゃあ安心してついていけるな。
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目を開ける。すると白い天井 いや、正しくはベッドの下の部分が映し出されていた。
夢……? それにしてもはっきりしていた。
何故か母さんとあいつがいて、何か話しているみたいだった。そして、二人で何処かへ歩いく 二人が見えなくなって─
「海菜ー!!」
爆音とともに入ってきた。僕はソレを思いっきり殴り飛ばす。そして倒れこんだソレを踏み潰した。悲鳴を上げたがそんな事気にしない。そして、関節技を使った。
「毎回毎回よくこんなことをするな。変態」
「ちょっと、痛い!謝りますから許して!!」
「このまま腕を切り落としてやろうか?」
「海菜?何かキャラ変わってるよ?」
僕は舌打ちをすると、モヤモヤした気持ちのままいつものように身支度を済ませた。
何なんだろうか? あれは。何で今頃になってあいつの夢なんて見たんだろう。どうもスッキリしないな……。
小説とかだとこんな時にその本人と出会ったりするけどまさかそんな事無いよね。
「海?何ぼーっとしてるの?」
いきなり、声が聞こえてきたので、僕は我に返った。
「ん?いやちょっとね」
「ふ〜〜ん」
疑り深い目から逃げ出すために、僕はその場から逃げ出す事にした。
少し校内を歩き回ってみた。仕掛けがないかどうかとか見取り図の完成も兼ねて。無論、いつでも逃げられるようにね。
丁度校長室にさしかかった頃、声が聞こえた。
「何でそう無計画に物事を進めようとするんですか!?その度に私が迷惑しているんですよ?」
声の様子からして女性のようだ。どうやら何か言い争っている。少ししてから、一人の男が出てきた。勿論、この学校の制服を着ている。恐らく、さっきの声の人はこの中にいる。そして、校長にあそこまで講義ができるのは生徒会長くらいだろう。今は女子が会長、男子が副会長をしているというし。となるとさっきの人は副会長かな?
うん、最近鈍っていると思われていた状況判断も大丈夫だ。
そんな事を考えた後、パンを買ってから部屋に戻った。
「で、どうしてなの?」
そしてそこには恵美が待ち構えていた。そこまで追求する必要もないし、たいした事じゃないのに何でこんなにも執着するのか。
「そこまで大して事じゃないんだけど、変な夢を見てね」
「ふぅ〜ん。で、どんな?」
「アイツ…… 凪が母さんと何かを話していた」
「そう」
それを聞いて、安心したのかそれともすっきりしたのか、笑顔で部屋から出て行った。いつもはここまで気にしないのに何でだろう?……今日は考えすぎか?何かおかしい。それとも感覚が戻ってきているのか?まぁそこまで気にすることでもないけど。
そういえば香奈はまだ寝てるのかな?まだ見てないけど。
「ここにいるんだけど?」
「っ!?いたの?というか何で考えてることがわかった?読心術?」
香奈は普通に椅子に座っていた。
「うるさいなぁ。どこか遠くを見つめていると思ったらいきなり我に帰って自分の部屋に入っていこうとするんだよ?普通わかる」
なかなか鋭いことで。まぁそりゃわかるけどね。
「全く。海兄らしくないよ?いつも何も考えてないか考えてるけど表に出さないかなのに」
「うん。自分でもそう思った。ちょっと考えすぎかもね」
「あえて何考えているのかとかは聞かないけどさ。しっかりしてよね」
「はいはい。わかってるって」
その後も、何だか調子がおかしかった。胸騒ぎがするというか……。どうもあの夢のことが頭から離れなくて。
何だかちょっとシリアスっぽくなったような気がします