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藤花の舞姫  作者: yuzuki
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闘技場の恐竜退治1


 街道を行き交う冒険者たちを眺めながら、天音あまねはオープンテラスのカフェでお茶を飲んでいた。

 木でできた丸いテーブルの上には、紅茶の入ったティーカップと、食べかけのショートケーキ、隣ではそのケーキを食べようかどうしようかと悩んでる一匹の狐がいた。

 西欧の街並みを思わせる街道の片隅に、薄紫色の和服を着た彼女の姿は少しだけ周りの風景とは浮いて見えるのかもしれない。しかし、それを気にする者は誰一人としていない。給仕をするウェイターも、隣のテーブルに座る貴婦人も、彼女の姿に意識を向けることはない。

 なぜなら、道を通り過ぎる冒険者たちの姿は、彼女に負けず劣らず様々に奇抜な格好をした者が多かったから。

 全身を覆う黒い甲冑を着た者が、自分の丈より大きな大剣を持って軽やかに歩いていく。

 まるで踊り子のような薄い衣装を着た女性が、隣に道化師(ピエロ)を連れて楽しげに通り過ぎていく。

 人間だけでなく、おとぎ話に出てくるような妖精の姿やまるで獣のような姿をした亜人たち、冒険者だけでなく、この〝地域(リージョン)〟の住民であるNPCでさえ騎士や魔法使いを思わせる、勇ましい格好をした者たちばかりだった。

 人を眺めているだけでいつまでも時間が潰せそうだった。姿や背恰好から、その人のプレイスタイルや職業を考える、それも冒険者(プレイヤー)観察の一つの楽しみ。

 天音はまた紅茶を一口飲んで、人ではなく街並みを遠く見渡した。

 西欧の中世期を思わせるこの街は、この〝地域(リージョン)〟唯一の都市。

「リージョンの名前は、グラディウス。ランクはA。マスター名は…………チャンピオン?」

 知らない名前。

 でも、この街にはとても相応しい名前のマスターだと思った。きっと、こんなリージョンをいつか作るために、チャンピオンという名のキャラクターを一から育て上げたのだろう。

 この〝世界(グローブ)〟では、そういった個人のこだわりを持ってプレイする者がとても多い。

 そんな奇抜なプレイヤーの一人である彼女は、そうと自身では全く自覚せずに、また一歩また一歩とその〝世界〟の片隅に足跡を残していく。プレイヤーの強いこだわりを感じさせる和装の姿は、彼女のその整った容姿とコロコロと変わる無邪気な表情と相まって、思いのほか冒険者(プレイヤー)たちの視線を集めていた。

 そんな中、人の視線も全然気にしない様子で、彼女はフォークに刺したケーキを子狐に与えている。

「リージョンも、ヒトもNPCも、ずいぶんと変わったよねぇ」

 本当にそう思う。

 たった二年、彼女がこの〝世界〟を離れていた期間。それだけの時間の中で、ビックリするほど〝世界〟は進化を遂げている。

「私も少しは実戦を思い出しておかないと、マズイかなぁ……」

 前のリージョンで出会った雪乃(ゆきの)のこともある。自分からはあまり過激なクエストを受けるつもりはないが、何の拍子で強敵に遭遇してしまうのかは分からない。桃源郷の幽霊の時は、運良く二人だけでも切り抜けることができたが、この〝世界〟のクエストはそう甘いものばかりではない。S級リージョンで戦うようなガチガチの装備は必要ないとはいえ、ある程度の備えというものは必要となってくるだろう。

 天音は和服の袖から、小さな赤い巾着袋を取り出した。

 袋の中に手を入れると、彼女の視界の隅にはフワリと道具の一覧表が現れた。これはアイテムボックスを補助する特殊アイテムである。通常のアイテムボックスは実際に手で操作しなくても道具を取り出すことができるのに対し、このアイテムは中に手を入れて取り出す操作を行う必要があった。しかし、急に取り出すことはできないものの、実質アイテムボックスが二つあるようなものなので、こういったアイテムは非常に貴重でありとても重宝する代物である。初心者でなければ、リージョン移動アイテムと並んで、ほとんどのプレイヤーが所持している必須アイテムである。

「二年ぶりだからなぁ。中に何入ってたっけ?」

 通常の戦闘では使わないような、レアアイテムや素材アイテムを収納しておくことが多い。すぐに使うものは通常のアイテムボックスへ入れておき、回復アイテムのストックを中に詰め込んでおいて無くなったらすぐに補充する、それが冒険者としての常識。

 とりあえず、今の自分にできること、身の回りの物を確認すること、自分自身のスキルを確認すること、それが備えの第一歩だった。

 天音の巾着袋からも、回復薬といったいくつかの消耗品アイテムが出てきた。

 しかし、それだけでは済まないのが、彼女が彼女たる所以。

「……なに、これ?」

 取り出した物は、木でできた小さな剣の形をしたものだった。その剣の先には、紐で繋がれた赤い丸い玉。玉の方には、穴が空いている。

 アイテムの種類は武器、それも短剣に分類される。木製のため攻撃力は低いが、これが鉄製で、もっと大きな物であったなら、ある意味武器として通用するものなのかもしれない。

 袋の中から見つけたものは、どう見てもけん玉(・・・)だった。

 思わず目が点になる天音。

 テーブルの上の子狐は、不思議そうな表情でふらふらと揺れる赤い玉を見つめている。

「私、こんなの持ってたっけ?」

 この〝世界〟にけん玉があることも驚きだが、それが自分の持ち物の中から出てきたことにもビックリしてしまった。いつ買ったのか、どこで手に入れたものなのか全く覚えていない。この〝世界〟の中で、けん玉で遊んだ覚えは全くない。

「よっ! ほっ、ほっ!」

 皿の上に玉を乗せて、順に皿を移し替えて『世界一周』、さらには調子に乗って『宇宙遊泳』とか『稲妻落とし』とかやりそうになったが、狭いカフェの店内だと思い出して自重した。

 隣のテーブル席に座る男の子が、目を丸くしてこちらを見つめていた。笑顔で手を振ってあげると、その隣のお母さんに隠れるように、そっぽを向かれてしまった。照れているのかもしれない。

「遊んでる場合じゃないよね……」

 気を取り直して、また巾着袋に手を入れた。

 もちろんそこにいる男の子もそのお母さんも、NPCであってプレイヤーではない。貴婦人然とした格好のプレイヤーはもちろん存在するが、プレイヤーの制限上、こんな小さな子どもがプレイしているはずがなかった。亜人の種類によっては背が低い小柄な種族は存在するが、ただの人間型(ヒューマン)でこの年齢設定はあり得ないものだった。

 そんなNPCのシャイボーイを眺めながら、天音が次に取り出したものは、小さな笛のような形の物だった。いくつか枝分かれしており、先っぽにはグルグルと巻かれた派手な紙のような物がついている。

「……」

 笛の先のようになっているところに口を付け、天音はフッと息を吹き込んだ。

 ピ~ピロピロピロ――

 グルグルに巻かれていた先っぽが、ニョキニョキと勢いよく伸びた。

 『吹き戻し』というおもちゃをご存じだろうか。夜店で売っているピーヒャラとかなんとかいうアレである。

 それはもはや、武器でもなんでもなかった。しかし、アイテムの区分はあくまで武器。きっと特殊なスキルを合わせてセットすることで、とてつもない追加効果を発揮するに違いない。

 伸びたり縮んだりするそのおもちゃを見て、隣の男の子は目をキラキラと輝かせていた。

「これ、良かったら、あげよっか?」

 差し出すと、その子はパァッと笑みを浮かべて、そのおもちゃを受け取った。恐る恐る息を入れて吹いては戻したり。母親も一緒になって「ありがとう」とお礼を言われながら、対して彼女の方は酷く落ち込んでいた。

「私……この〝世界〟を離れる前、いったい何してたんだろう……」

 きっとお祭りをやっていたリージョンで夜店をまわっていたに違いない。そう思った。

 こんなよく分からないおもちゃをわざわざ生産する方も生産する方だが、それを買う方も買う方である。しかし、それを見つけた時に嬉々として購入している自分の姿が容易に想像できるので、それがなんとも悲しかった。

「……いや、だって、こんなものを作る職人がいるわけだから、その苦労は誰かが買ってあげないと」

 そう言い聞かせて、自分の気持ちをなんとか納得させた。

 でも、巾着袋の中を漁るのはもう止めることにした。これ以上変なものが出てきたら、立ち直れないような気がして、いや、確実に何か怪しいアイテムが出てくるので、見て見ぬフリすることを決め込んだ。巾着袋の紐を固く結んで封印する。

「そろそろ、このリージョンのメインスタジアムの方へ行きましょうか」

 彼女の相棒、テーブルの上に座る子狐に向かって問いかけた。子狐は「行くの?」と分かったような分からないような顔で首を傾けた。食べかけで置いてあったショートケーキは、この子がきれいに食べてくれたようだ。

「私のケーキ……」

 もう少し食べたかったなと思ったが、また食べに来れば良いと思い直して、天音は席を立つ。

「行こっか。小雪(こゆき)ちゃん」

 子狐はテーブルからピョンと飛び降りて、天音を見上げて嬉しそうに尻尾を振る。

「ここには、どんなクエストがあるんだろう」

 そう呟いた天音の見上げた先。

 巨大な建物の影が見えた。

 街の中心部に位置するもの。街だけでなく、このリージョンの中核と言っても良い建造物。外側にある街は付属品のようなもので、それを盛り立てるために作り上げられた見掛けの物でしかない。

 丸い大きな円形をしたその建物は、外壁の外から見た姿は何かのスタジアムといった様相だった。

 それは『闘技場(コロッセオ)』と呼ばれるもの。

 リージョンランクA『グラディウス』とは、冒険者のプレイヤー同士が戦うために作られた、剣闘士(グラディエーター)たちが集る特別なリージョンだった。




 街道を真っ直ぐに進むと、正面に闘技場の大きな入り口が見えた。

 まるでお城の正門のような立派な建物。中を覗くと、大きなフロアの中には数多くの旅人や冒険者たちの姿があった。真ん中には大きな受付カウンターがあり、数人の受付嬢が笑顔で強面の冒険者たちへ対応を行っている。

 受付カウンターでは、闘技場で開催される大会への参加の他に、大会の見学者用の受付や、通常クエストの受注も行っているようだった。壁際には巨大なクエスト掲示板が設置されている。

 天音は小雪を肩に乗せて、おのぼりさんの気分で辺りを眺めながら、まずは正面のカウンターで話を聞くことにした。受付へと近づく。

「こんにちは」

「こんにちは。ようこそ、冒険者さん。あなたも武道大会に出場されますか?」

 受付嬢の女の子は、彼女に向かって笑顔で大会参加を勧めてくる。

「いえ、私は参加しないのですけど。見学だけとかって、できますか?」

「はい、可能ですよ。参加されない方は見学料が必要となります。ただ、冒険者さんの場合は、何かクエストを受注されることで、無料で見学することが可能となりますが」

「クエスト、ですか?」

「はい」

 受付嬢は頷いた。

 天音自身は、特に戦闘狂というわけでもないので、大会に参加するつもりは全くなかった。大会に参加する以外のクエストがあるなら、そちらの方を何か受けてみたいところ。

「どういったクエストがあるんですか? 私、それほど戦闘が得意ではないんですけど……」

「そういった方には、裏方の仕事として生産職の方でも受注できるクエストがいくつかありますよ。例えば、回復魔法の得意な方なら戦いで傷ついた出場者たちを癒す救護室での仕事を、刀鍛冶が得意な方なら武器の修理を行う仕事があります」

 大会運営の裏方として、いくつかのクエストが張り出されているようだった。このようなクエスト以外にも、この街の近辺で薬草の採取や魔物の討伐依頼といったオーソドックスなクエストも一応あるらしい。

「私、回復も、刀鍛冶も、あまり得意というわけでは――」

「そんな方にもオススメなのが、こちらの仕事です」

 そう言って差し出された受注票を天音は見た。


――グラディウス(ランクA)

 『闘技場の売り子』

 依頼内容:「人手が足りません! 誰かヘルプ~!」

 クリア条件:スタジアム客席でお弁当の販売。報酬は、基本給プラス売上の歩合制。


 クエストの受注というよりアルバイトの募集といった感じで、見ていて微妙に切なくなってくるのは彼女の気のせいだろうか。

「あなたなら、美人さんですし、きっと十分な売上が期待できますよ!」

 ニコリと微笑む受付嬢。

 というか、このクエストを引き受ける冒険者は果たしているのだろうか。スキルを使用するクエストならレベルアップも期待できるが、弁当の売り子ではスキルの上昇は全く期待できない。何のために用意されているのか、よく分からないクエストだった。

「この〝世界〟に来てまで、バイトするのはちょっと……」

 さすがの天音も受注する気にはなれなかった。

 とりあえず、他のクエストも確認したかったので、受付の女の子にはお礼を言って天音はフロアの端にある大きなクエスト掲示板の方へと向かった。

「ここのリージョンは、人が多いなぁ」

 他の冒険者たちの隙間を縫うようにして、彼女はクエスト掲示板の前に立った。

 端から順に受注票を確認していく。

「大会参加以外のクエストとなると、出場者の治療の手伝いや、武器・防具の修理がほとんど。おもしろそうなクエストは、何か…………あ。出場者のセコンドをやるクエストがある」

 それはおもしろそうだなぁと、天音は受注票を見つめた。

 作戦の指示や応援だけでなく、きっと途中からは大会へのセコンド乱入クエストに発展するに違いない。格闘技などで、何らかの理由で完全決着を避ける必要がある場合、セコンドが乱入することによって反則負けによる不透明決着に持ち込むことがある。そういった仕事も、セコンドとしての重要な役割の一つである。負けられない戦いが、そこにはある。

「でも、それを期待してクエストを受注しても、乱入クエストが発生しなかったら意味ないし」

 その場合、自ら乱入して試合をぶち壊してやろうと密かに決意して、天音は受注票を手に取った。

 あとはこれを受付へと提出すれば、このリージョンでのクエスト契約は成立となる。

「セコンドをやる選手が、なんとかマスクとか面白いキャラだったらいいんだけどな~」

 その場合、天音もなんとかピンクマスクを被る必要があるのだろうか。それはそれで楽しいのかもしれない。

 そんなことを期待しつつ受付の方へ向かおうとすると、何やら周囲が騒がしいことに天音は気が付いた。

 クエスト掲示板の方ではない。そこから真ん中の受付カウンターを挟んだ反対側のフロア、大会参加者用の専用受付の近くで、何やら人だかりのようなものができていた。

 天音はそちらの方へと、こっそり近づいた。

 中心では、一人の男性が声をあげていた。

「くそっ! 誰か一緒にクエスト受けてくれるやつはいないのか?!」

 大きな斧を背負った竜人型(ドラゴニュート)の戦士だった。肌は緑色の鱗に覆われていて、鎧は胸当てまでしかない比較的小さなもの。斧は天音の身長くらいはありそうな、刃渡りの大きな三日月斧(クレセントアクス)と呼ばれるタイプのものだった。厳つい顔がさらに険しい表情になって、周囲のギャラリーたちを威圧している。

「イヴァン、止めろって! ますます人が寄って来なくなる」

 その竜人型(ドラゴニュート)を宥めているのは、人狼型(ライカンスロープ)の男性だった。茶色の濃い毛並みに、大きな牙を持つ狼の頭。装備は、武器などは何も持っておらず、鉄の鎧ではなく武道着のような布製の鎧を身に着けている。着ぐるみのような大きな手からは、鋭い爪が覗かせていた。

「だってよー! これだけ粘っても誰も手伝ってくれないんだぞ!」

「それはお前のせいだろ?!」

 周囲へと向かっていた矛先が仲間へと向かい、二人は言い争いを始めていた。

 人が集まっているように見えたのは、この二人が原因だったようだ。彼らには、他に仲間はいないようだ。その二人を中心に、半円を描くようにして、他の冒険者たちがひそひそと様子を窺いながら仲間内で話をしている。

 天音の方は、なんとなく嫌な予感がして、少し腰が引けていた。

(ま、まさか……)

 人だかりに近づいたのは、その声にどこか聞き覚えがあったから。

 数年ぶりに聞いた、かつての仲間たちの声。見つかってしまったら何を言われるだろうという不安と、それでも昔みたいに話したいという淡い期待があった。

 でも、そこにいた人物は、彼女の知るかぎりの一番の問題児(・・・)の姿。

 少し迷ってから、天音はクルリと背を向けた。

「み、見なかったことにしよう……」

 彼女の肩に居座る小雪が、名残惜しそうに後ろを見ていた。

 しかし、彼女自身はあまり気にかけていないことだが、この〝世界〟の中においても、天音の美しい和服姿というのは否が応でも目立ってしまうもの。

 背を向けた彼女の後ろの人込みの中から、ざわりと小さなどよめきが上がった。

 その瞬間、彼女の右手が握られた。

「え……」

 天音の小さな手よりも、一回りも二回りも大きな手。固い鱗に覆われていながらも、握られたその手の平はとても温かいものだった。

 彼女は振り返る。

 後ろには、慌てて彼女を捕まえた竜人型(ドラゴニュート)の男性の姿があった。しっかりと手は握られているものの、その表情はかなり驚いているようだった。

「あ、天音……か?」

 まるで幽霊でも捕まえたような、そんな戸惑った様子の彼。

「うん……」

 彼女は小さく頷く。

「イヴァン……だよね?」

 彼女も確認するように、彼を見上げて質問をする。彼も無言で頷いた。

 天音の手を握ったまま、考え込むように二人で見つめ合って、そして彼の表情が驚愕に変わる。

 金縛りが解けた瞬間、イヴァンは叫んだ。

「うおーっ!! 天音ぇーー~!! どこ行ってたんだぁ! みんな心配してたんだぞーっ!!?」

「きゃー! ちょ、ちょっと、抱きつかないで~!!」

 慌てる彼女を気にした様子もなく、彼は古い旧友との再会に、両手を広げて思いっきり彼女に抱きついた。

 周囲の人目もあって、彼女は顔を真っ赤にして叫んだ。しかし、力自慢の戦士に思い切り抱きしめられ、彼女は抵抗空しく成すがままにされていた。

 本能のままに再会を喜ぶ男。その腕の中で悲鳴を上げながらも、天音はそれが決して嫌なことではないと感じていた。懐かしい気持ちで胸がいっぱいだった。

「天音ー! 良かった、まだ続けてたんだな!」

 竜人の暑苦しい男は泣いていた。

「だ、だから、とりあえず、はーなーれーろ~っ!!」

 本気で喜んでいる彼の様子に悪い気はしないものの、さすがにいつまでも引っ付いていられると困る。肩に乗る小雪は、珍しく彼の方を威嚇しているようだった、少し拗ねたような雰囲気が感じられた。

 そして、しばらくして、暴走する彼にはようやく第三者の痛烈なツッコミが入れられた。

「イヴァン、いい加減にしとけ!」

「ふごっ!」

 彼の横面に、狼男の鉄拳が決まる。割と本気で殴られて、彼の遠慮の無い一撃に竜人の男は沈んだ。




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