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虹に届くまで  作者: 爽風
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第八章 9.真実、タイムトリップの理由

ここは、何処だろう?

どこかで、声が聞こえる。


「患者の容態急変しました!バイタル下がっています!!」

「除細動の準備!!」

「まこ!」

「まこと!」

「ご家族の方。大変危険な状態です。覚悟してください。」

「そんな…まこ、戻ってこい!」


ここは、どこ?

あたしは今どこにいるの?

ああ、ここは元の時代のあたしの病院だ。

戻ってきたんだ。

そうか、あたし、死ぬのか……。


"いいえ、まだ貴女は死んではいない。生きるのです。"


誰?


"私は時を司る者。"


神様ってこと?


"いいえ、時空の番人です。

神は貴女に辛い運命を赦しました。

貴女は平成の世に生を受けながらも、魂は幕末に生きるよう定められているのです。

それは貴女自身が望み、ある人物もまた強く貴女を望んだからです。"


あたしはそんなこと望んだことない!

あたしを呼んだのは誰??


"貴女の魂の半分を持つ者。

それは貴女自身の魂が知っています。

貴女の想いが、その人物の想いが時空の理を歪めてしまった。

あの落雷でできた時空の歪みに、貴女の魂は飛ばされたのです。

身体は平成の世に残っているのに魂だけが離れて実体化したのです。

貴女は現代と幕末両方に生きている。

幕末でいきる貴女も、現代で眠る貴女もどちらもあなた自身。表裏一体の存在です。

現代の身体が死ねば幕末での貴女も、逆に幕末での貴女が死ねば現代の貴女も死にます。

貴女の命が尽きるとき再び身体と心はようやく一つに戻る。"


あたしはここで、何をすればいいの?


"命尽きるまで、この世界を、仲間たちの最期を見届けること。

それが貴女の使命。

そして時空の理を歪めてしまった罰として、

貴女を望んだ、あなたの魂の半分をもつ人物とは

この世では結ばれぬ運命を背負い、生きてゆくのです。無理やり結ばれそうとすれば、約束を違えた罰として貴女も、貴女の魂の半分をもつ者は死して尚地獄の炎に焼かれ二度と生まれ変わることもできなくなってしまうでしょう。"


そんなの知らないわ!

お願い、もうあたしを元の世界に返して!


"これは貴方自身が望んだこと。

もはや元の世界へは戻れません。"


嫌だ、帰りたいよ。

ねえ、あとどのくらい生きればいいの?

あとどのくらいで楽になれるの?


"身体と心が離れていられるのはそう長くはありません。

ただ未来は常に変容するもの。

無理をして魂をすり減らせば死期は早まる、その逆もありうるのです。

選択の可能性は無限にあるのですから。

さあもう時間です。

戻りなさい。

生きなさい。

貴女の魂の赴くままに。

その命続く限り魂を燃やして走り続けるのが貴女の使命です。"


……

………。

…って…!

…戻ってこい、水瀬!!


もう、疲れてしまったの。

もう少し寝かせて。

あと少しでいいから。


あたしはうっすらと目を開けた。

誰?

あたしを呼ぶのは?


「水瀬!!気がついたか!」


土方さん?

そこには額から汗を滴らせて血走った目であたしを除き込んで睨む土方さんがいた。


「まったく心配させんな、馬鹿野郎!!」


怖い顔。

そんなに睨まないで。

大丈夫ですから。


「ひじかたさん…っつう!!」


あたしは起き上がろうとして全身に激痛が走った。


「馬鹿!あと一寸ずれてたら死んでたんだぞ!今は血が足りねえからもいっぺん寝ろ!」

「…はい。」


あたしの額に水で濡らした手拭いを山崎さんが置いてくれた。

ひんやりとした手拭いが心地よい。


「まあ、目が覚めたなら大丈夫や。暫くは熱が出るかもしれへんけど飯持ってくるさかいそれまでゆっくり休み。」


いつになく優しい山崎さんの声。

ああ、あたしまたここに帰ってきちゃったのか。

あたしは貧血も手伝ってすぐに意識を手放した。

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