表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虹に届くまで  作者: 爽風
169/181

第十九章 1.北の大地:土方歳三

北の大地は冬の訪れが早い。

まだ十一月のはじめだというのに、雪がちらつく。

鈍色の空。

枯野色の大地。

ここは、終わりの地。


俺は空を仰ぎ息をついた。

白い息の塊が空に溶けた。


明治と年号を変えたのはつい先月。

俺たちは10月に仙台から蝦夷のこの地へ無血上陸した。

ここは最期の戦場になるだろうことはひしひしと感じていた。


「土方君。どうしたね?」


榎本武陽が俺の肩をたたく。

この男は幕臣で、幕府の旧艦隊を掌握する男だった。

異国への留学経験もあるとかで、博学ぶるのがどうもいけ好かない。

実戦で使えるのか?



「いえ。蝦夷の冬は早いと思っていたのです。」


「ああ、だが、ここが新しい新天地になる。」


その自信はどこから来るのだ?俺は鼻白んだ。

俺は正直新天地だろうが開拓地だろうが関係ない。

ただ、ここにいるのは戦があるから。

それだけだ。


俺は榎本さんを残し踵を返して歩き出した。

枯れた草がサクサクと音を立てる。



俺ははっとして振り返った。

北風が髪を揺らす。その風の音の紛れて声が聞こえた気がした。


誰の?


世界で一番愛おしい女の。

その声が。


聞こえた気がした。


そして馬鹿なと思い直す。

あいつは江戸にいるはずだ。

俺自身が望んだこと。


でも、時折ふと、逢いたくなる。

いやいつでも求めてやまない。

あいつの笑顔を。

それは過ぎた願いだ。

鬼として走りぬくと決めたのだから、もう会わぬと決めたのだから。



限りなく続く枯野の大地。

限りなく続く鈍色の空。

ここは

俺の最期の地。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ