第十九章 1.北の大地:土方歳三
北の大地は冬の訪れが早い。
まだ十一月のはじめだというのに、雪がちらつく。
鈍色の空。
枯野色の大地。
ここは、終わりの地。
俺は空を仰ぎ息をついた。
白い息の塊が空に溶けた。
明治と年号を変えたのはつい先月。
俺たちは10月に仙台から蝦夷のこの地へ無血上陸した。
ここは最期の戦場になるだろうことはひしひしと感じていた。
「土方君。どうしたね?」
榎本武陽が俺の肩をたたく。
この男は幕臣で、幕府の旧艦隊を掌握する男だった。
異国への留学経験もあるとかで、博学ぶるのがどうもいけ好かない。
実戦で使えるのか?
「いえ。蝦夷の冬は早いと思っていたのです。」
「ああ、だが、ここが新しい新天地になる。」
その自信はどこから来るのだ?俺は鼻白んだ。
俺は正直新天地だろうが開拓地だろうが関係ない。
ただ、ここにいるのは戦があるから。
それだけだ。
俺は榎本さんを残し踵を返して歩き出した。
枯れた草がサクサクと音を立てる。
!
俺ははっとして振り返った。
北風が髪を揺らす。その風の音の紛れて声が聞こえた気がした。
誰の?
世界で一番愛おしい女の。
その声が。
聞こえた気がした。
そして馬鹿なと思い直す。
あいつは江戸にいるはずだ。
俺自身が望んだこと。
でも、時折ふと、逢いたくなる。
いやいつでも求めてやまない。
あいつの笑顔を。
それは過ぎた願いだ。
鬼として走りぬくと決めたのだから、もう会わぬと決めたのだから。
限りなく続く枯野の大地。
限りなく続く鈍色の空。
ここは
俺の最期の地。