第十一章 4.愛でもなく、恋でもなく
総司と一緒に寝ようとしたのはこれまでの関係を意地でも続けるためだった。
あえて離したらきっと気まずくなってきっと普通のふりが出来なくなる。だから、平気なふりをして寝た振りをした。
自分が総司の気持ちから逃げてるのは嫌でも感じている。
ずるいと思う。卑怯だと思う。
でも壊したくなかった。
だから総司が言わない限りあたしは普通の振りを続けると思う。
そして願わくば言わないでくれることを願ってる。
だから総司に急に抱きしめられた時、あたしは正直これで私たちの関係が終わったとおもった。
もう前には戻れない、そう思った。
あたしは自分の行動が総司を追い込んだんだと思って自分に腹が立った。
あたしは結局総司の優しさに甘えてるだけで、この関係を壊したくないのも全部自分のためだったから。
でも総司は自分で自分の行動に驚いているみたいで、迷子の子供みたいに泣きそうで、あたしは…あのときどうしてあんな行動をとったのか分からないけどただ総司を抱きしめたいって思った。
ただこの沖田総司という人間が愛おしくて支えたいって思った。
間違ってるのかもしれない、こんなことは。
ふしだらだって言うひともいるかもしれない。
でも総司と抱きしめあっているあの時間はすごく優しくて、それだけで完結したものだった。
強いて言うのならばぎりぎりの必要性。
愛じゃない、恋じゃない…
それを定義する言葉はみつからない…
でもこのどこまでも優しい泣きたくなるような気持ちはなんなんだろう。
総司はあたしに覆いかぶさる様な形であたしを優しく抱きしめている。
ふと視線が絡まった。
沈黙…
やおら総司はふっと笑った。
「ありがとう…ここに居てくれて…」
かすれた様な低い声で総司が言った。
「…うん。いつか…きっとみんな志の為に走って誠の為に死んじゃうかもしれなくても、あたし…きっと見守るからね。あたしきっとその為にここにいる。」
いつかそう遠くない未来、みんな死んで行くのだろう。
あたしはその時きっと泣くし、止める。みんなが生きられるように。
でもそれでも目を逸らさずにどんなことがあっても、みんなの志を見守る。
それがそれだけがあたしのここでの生きる意味だと思うから。
総司は何も言わず小さく笑ってもう一度しっかりとあたしを抱きしめた。
あたしたちは、その夜怖いくらいの静寂の中でただ互いの手を握り合って眠りに落ちた。