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婚約破棄された生活魔法の天才 隣国で魔法特許都市を作ったら世界一の国になりました  作者: くま3
第2章 追放と旅立ち

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第14話 父の決断

辺境伯アルヴェルトは、執務室の窓外を凝視したまま、

地を這うような重い口調で冷徹な事実を提示した。


「リリア。私はこれまで軍事貴族としてこの国を支えてきた。

 だが、もはやこの国に守るべき未来はないと判断した」


父は机の上に、王国の崩壊に向けた

『崩壊のロードマップ』を広げた。


それは、現場を知る実務家としての、悲痛な結論だった。



「第1段階は、既に始まっている。

 王太子による独断の婚約破棄だ。これは単なる男女の問題ではない。

 王家自らが国内の結束を破壊したのだ」


「次に訪れる第2段階は、『政治混乱』だ。

 王が帰国しても、王太子派は保身のために反発を続ける。

 国内は不毛な派閥争いで疲弊しきることだろう」



父の分析は、技術的な停滞という根深い問題にも及んだ。


「第3段階は、『技術停滞と商業格差』だ。

 王国が軍事魔法という破壊の力に全予算を投じている間に、

 隣国は生活魔法による社会革命を起こす」


現在の王国の予算、その八割は軍部が独占している。

農業や産業は、数十年前から時間が止まったままだ。



父は地図の向こう側、新天地を見据えるように言葉を継ぐ。


「そして第4段階で、『経済流出』が起きる。

 優れた隣国へ、商人が一斉に移住を開始する。

 その結果、第5段階で軍事投資は単なる無駄なコストと化し、

 財政危機が王国を襲う」


「最終的な第6段階。

 経済破綻、貴族の離反、そして飢えた民衆による暴動。

 王国は内部から崩壊する運命だ」



父はリリアに向き直り、静かに、しかし強く問いかけた。


「リリア。お前には二つの選択肢がある。

 このまま沈みゆく泥舟に残るか。

 それとも、お前の才能を正当に評価する新天地へ向かうかだ」



リリアは、自身が積み上げてきた、

『生活魔法カタログ80』の研究成果を脳裏に浮かべた。


彼女の魔法は、従来の常識を根底から覆す。


・魔力消費量:0.01%以下

・精密制御 :誤差0.01度以内


その技術群は、すでに一つの文明を構築できるほどに多岐にわたっていた。



【生活魔法カタログ:主要カテゴリー】


■第1:水・衛生革命

(清浄水生成、魔法水道インフラの基盤)


■第2:料理革命

(食材の細胞を壊さない魔法冷蔵・冷凍、発酵制御)


■第3:家事革命

(自動掃除、衣類乾燥、害虫排除システム)


■第4:農業革命

(土壌組成の最適化、魔法的日照調整による多毛作)



「私の魔法は、王太子殿下が言うような『役立たず』ではありません」


リリアは、第6カテゴリーの室温調整や、

第7カテゴリーの物流輸送技術を思い返した。


これら80件以上の技術は、本来、王国を救うための

社会インフラになるはずのものだった。


「ですが、人を傷つける力以外は価値がないと切り捨てられました」



王太子アルドリックは断言した。

『生活魔法など王妃には不要だ』と。

公衆の前でリリアを嘲笑した。


「お父様。私は、この魔法が本当に無価値なのか、別の場所で証明したいです」



父アルヴェルトは、愛娘の言葉に満足げに頷いた。


「ならば、隣国アルディナ王国へ行け。

 あそこは戦争よりも、商業と技術を重視する合理主義の国だ。

 あそこには、発明を保護する『魔法特許』という制度がある」


「お前の持つ0.01%の魔法は、隣国の産業を根底から変える革命の種になるだろう」



辺境伯は、娘の亡命を公式な指示として許可した。


「私はここに残り、王国の末路を見届けよう。

 だがお前は、新しい世界で魔法の真の価値を示してこい」


父はリリアに、十分な軍資金と精鋭の護衛を約束した。

これは、辺境伯家が事実上、現王権と決別したことを意味していた。



リリアは、決意を胸に深く一礼した。


「承知いたしました。私は隣国で、魔法による産業革命を起こします」



かつて『お冷を運ぶだけの魔法』と蔑まれた技術が、

世界最大の都市の礎となることを、彼女はすでに確信していた。


王太子が捨てた『役立たずの少女』は、

今、自らの意志によって、王国を捨てる決断を下した。

挿絵(By みてみん)

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