005.無双の拳、震える指先
アジトの扉は、俺が叩き込んだ見張りの男と共に無惨な木屑となって散らばっていた。
薄暗い倉庫の中、埃の舞う光の中に足を踏み入れる。
「なんだてめぇッ!」
「見張りの野郎をどうしやがった!」
奥から飛び出してきたのは五人の男たちだ。
どいつもこいつも、路地裏で俺をボコボコにしやがった覆面どもの仲間だろう。
以前の俺なら、こいつらの殺気に気圧されていたかもしれない。
だが、今は違う。
視界が、異常に冴え渡っている。
男たちがナイフを構える予備動作、床を蹴る筋肉の動き、飛び散る唾液のひとしずくまでが、まるで止まっているかのように見えた。
「――邪魔だ。 どけ」
地を蹴る。
爆発的な加速。
自分でも驚くほどの速度で、俺は先頭の男の懐に潜り込んでいた。
みぞおちへ、軽く拳を置く。
それだけのつもりだった。
だが、放たれた一撃は「衝撃波」となって男の背中から突き抜けた。
「が、はっ……!?」
男の体がくの字に折れ、背後の壁まで弾き飛ばされる。
それを見た残りの四人は凍り付いていた。
無理もねえ。
ただの人間が、一突きで大の大人を十メートルも吹っ飛ばすなんてただの悪夢だ。
「ひ、化け物……ッ!」
「死ねぇ!」
恐怖に駆られた二人が左右から斬りかかってくる。
俺はそれを最小限の動きでかわし、二人の頭を掴んでそのまま床へ叩きつけた。
重低音が響き、石造りの床に蜘蛛の巣状の亀裂が走る。
立ち上がることさえ許さない、圧倒的な力の差。
これがロキの言っていた『欲望を実現させるための力』か。
――最高に、気分がいい。
残った連中を文字通り一蹴し、俺はアジトのさらに奥へと歩を進めた。
重厚な鉄の扉を蹴り破ると、そこには豪華な椅子に深々と腰掛けた一人の巨漢がいた。
「うるせぇな! 何騒いでやがる!」
盗賊団のボスだろう。
そいつは、自分の部下たちが全滅している光景を見て、顔を引き攣らせた。
「てめぇ…… 何者だ。
ここがどこか分かっててやってんだろうな!」
「うるせぇ!
ガタガタ言わずに、攫ったあの子を返しやがれ!!!」
俺は一歩、また一歩と距離を詰める。
ボスは腰の長剣を抜こうとしたが、その指がガタガタと震えていた。
「ま、待て!
あの娘は王国の貴族様からの依頼なんだぞ!
奪えばただじゃ済まねえぞ!」
「そんなもん、知るかよ!!」
俺の拳が、ボスの横腹に突き刺さった。
鎧ごとその脇腹を粉砕し巨漢が床を転がる。
悶絶するボスの横を通り過ぎ、俺は部屋の隅にある小さな檻に近づいた。
その中には、麻袋から引きずり出されたあの少女がいた。
栗色の耳を伏せ、膝を抱えてガタガタと震えている。
「……おい。もう大丈夫だぞ」
俺は檻の閂を引き千切り、そっと声をかけた。
だが、少女は俺の顔を見た瞬間、悲鳴こそあげなかったがさらに体を小さく丸めた。
その瞳に宿っているのは感謝ではなく、得体の知れない怪物を目撃した時のような、深い拒絶と恐怖だった。
「……あ」
助けに来た。
その一心で振るったこの拳が、今はこの子を怯えさせる凶器にしか見えない。
俺は差し出しそうになった手を、反射的に引っ込めた。
――その時、耳の奥で響いた気がした、ロキの笑い声が。
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