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勇者の陰に英雄あり ~手柄をすべて譲った俺は、悪神の加護を手に理不尽な世界を叩き潰す~  作者: 日向ぼっこ
第三章:理想郷の胎動と魔王の戴冠

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033.カイルの帰還と詰問

 大陸各地での苛烈な魔物討伐を終え、勇者カイルがシトラス王国の王都ガイアへ帰還した。

彼が通る大通りは、英雄の凱旋を祝う民衆の歓声で埋め尽くされていた。

以前よりも一層鋭く、神々しい輝きを放つようになった聖剣と、その身に纏う圧倒的な「威光」。

人々は彼を現人神あらひとがみのように崇め、熱狂的にその名を呼ぶ。


 しかし、白銀の甲冑に身を包み、愛馬を進めるカイルの瞳に光はない。

彼には、民衆の笑顔が自分を縛り付ける呪詛に、賞賛の声が自分を削り取るノイズにしか聞こえなかった。


 王城の謁見の間。

カイルは国王ルイン・シトラスの前に跪き、淡々と戦果を報告した。


「……以上が、辺境および北部国境地帯における魔物討伐の全容です。

 脅威はすべて排除しました」


「見事だ、カイルよ。

 貴殿の武勇は今や大陸全土に響き渡っている。

 プロイン帝国の皇帝からも、我が国の勇者を称える親書が届いたほどだ。

 これでシトラスの威信は不動のものとなった」


 満足げに頷く国王に対し、カイルは無表情のまま、しかし確固たる意志を込めて言葉を継いだ。


「陛下。

 約束通り、私は勇者としての威光を示しました。

 今一度、クロス共和国への親書を賜りたい。

 外交ルートを通じて、私の正式な入国許可を取り付けてください」


 カイルのその願いに、謁見の間の空気が一瞬で凍りついた。

国王は鼻で笑い、玉座の背もたれに深く体を預けた。


「まだそんなことを言っているのか。

 貴殿は救世主だぞ?

 あの魔窟で一人の罪人ごときを追い回すなど、もはや身分にそぐわぬ。

 民は、貴殿がより高潔な、正義の象徴であることを望んでいる」


「……陛下、約束のはずです。

 威光を示せば、道は拓けると」


「道なら拓けている。

 プロイン帝国が軍事同盟の旗頭はたがしらとして貴殿を指名してきた。

 これは『勇者』としての公務だ。

 一個人の友情よりも優先されるべきは、大陸の平和であろう?」


 カイルの喉の奥から、乾いた笑いが出そうになった。

結局、この王は ――この国は、自分を親友のもとへ行かせる気など最初からないのだ。

自分が強くなればなるほど、その価値が上がれば上がるほどに、彼らは自分を便利で頑丈な「置物」として囲い込み、利用しようとする。


「……私は、人形ではありません」


 カイルが静かに、だが低く唸るような声を出した瞬間、聖剣が鞘の中で微かに震えた。

周囲の近衛騎士たちが息を呑み、一歩後ろに下がる。

国王の眉がぴくりと動いた。


「言葉に気を付けよ、カイル。

 貴殿が今その地位にいられるのは、神の加護と、我が国の支援があってこそだ。

 ……貴殿が追っているガルシアという男は、今や共和国の裏社会で暗躍し、不法占拠者たちを扇動しているという報告も入っている。

 もはや、君の知っている親友ではないのだよ」


「それは、直接会って確かめます」


「ならぬと言っている!

 貴殿はシトラスの、いや、人類の宝だ。

 薄汚れた地下に踏み入ることは、この国の威信が許さぬ。

 ……クロス共和国への働きかけは、今後一切行わない。

 これは王命である」


 カイルは深く首を垂れた。

顔は見えないが、彼の表情は憎悪と悲しみが混ざり合い、異様な歪みを見せていた。

どれほど魔物を斬っても、どれほど人々を救っても、本当に救いたい唯一人の男には近づくことさえ許されない。

 王城の廊下を戻るカイルの足取りは重く、その背中には、かつてマインの山で見せた快活な少年の面影は、どこにも残っていなかった。


 ◇◇◇


 一方、クロスの地下。

ガルシアは、運ばれてきた物資を確認していた。


「……小麦が十袋、抗生剤が二十。 これで当分は凌げるな」


 ノエルが横で、届けられたばかりの物資を分配している。

彼女は最近、地下の住人たちから「蒼氷そうひょうの聖女」と呼ばれ始めていた。

彼女が微笑むだけで、絶望に沈んでいた者たちの心に灯がともる。

だが、その背後でガルシアは自分の右手をじっと見つめていた。


 昨夜の掃除で、何人殺しただろうか。

 相手が略奪者だろうと、人殺しだろうと、その命を奪った感触が消えない。

 俺が汚れるほど、地下は清らかになる。

 その歪な構造に、耐え難い吐き気を感じていた。


『――くふふ。

 カイルは王の鎖に繋がれ、お前は民の期待という鎖に繋がれた。

 どちらも同じ「奴隷」ではないか、ガルシア。

 お前たちの再会は、互いが互いの鎖を断ち切るために殺し合う、その時だろうよ』


「……黙ってろ、ロキ」


 吐き捨てるように呟いた。

地下に満ちる氷の蒼光が、二人の親友を分かつ、越えられない境界線のように冷たく輝いていた。

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