表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の陰に英雄あり ~手柄をすべて譲った俺は、悪神の加護を手に理不尽な世界を叩き潰す~  作者: 日向ぼっこ
第二章:異なる正義の旅路と亀裂

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/32

028.擦れ違う背中、塗り替えられる真実

 どれほどの「ゴミ」を凍らせて砕いただろうか。

返り血さえ凍りついて塵となった俺の周囲には、夏のバランとは思えぬほどの極寒が漂っていた。


「……こんなもんだろ」


 西側の国境付近にあるこの街で、主要な人身売買の拠点と、ノエルの記憶を汚していた界隈を徹底的に「掃除」し終えた頃、俺は深い吐息を漏らした。

路地裏には粉々に砕けた氷の破片が散らばり、太陽の熱に晒されて霧となって消えていく。

それはまるで、この街の悪意そのものが浄化されていくようでもあり、同時に、俺という異物が刻んだ深い爪痕のようでもあった。


 俺は急いで宿へと引き返した。

部屋を覆っていた分厚い氷の繭を解くと、中ではノエルが不安げに、だが俺の気配を感じて安堵したような表情で立ち上がっていた。


「……ガルシアさん」


「待たせたな。

 ……行くぞ、ノエル。 この街に用はねえ。

 今すぐ、大陸中央のクロス共和国へ向かう」


 俺は彼女の手を強く引き、街が騒ぎに包まれる前にクロス共和国に向かった。

背後で、ようやく恐怖から解き放たれた民衆の悲鳴と、自警団の鐘の音が遠ざかっていく。

俺は一度も振り返らなかった。


 ◇◇◇


 それから数日後。

バランの東側国境から、荒野を強行軍で突き進んできた一団の白銀の騎列が、ようやく街へと到着した。

先頭に立つのは、黄金の礼装に身を包んだ「勇者」カイルだった。


「勇者様、ご到着です。

 ……ですが、街の様子が尋常ではありません」


 随行する騎士の言葉に、カイルは無機質な瞳を街に向けた。

数日前、国境で聞いた「赤髪の魔人の虐殺」という報告。

その言葉が誇張でないことを、街のあちこちに広がる破壊の痕跡が物語っていた。


「……あいつが、これを」


 カイルは馬を降り、路地裏に残された微かな冷気の残滓ざんしに手を触れた。

聖剣が不浄な魔力を感知して低く唸りを上げる。

カイルの網膜には、かつて優しかった親友が、無慈悲に人々を凍らせていく光景が幻影となって浮かび上がった。


「酷い…… なんて惨いことを。

 賊とはいえ、これでは虐殺です」

「やはり奴は、王の懸念通り『魔人』に堕ちたのだ……」


 兵士たちの罵声がカイルの耳を打つ。

カイルは否定したかった。

ガルシアには、何か理由があったはずだと。

だが、目の前に広がる破壊の痕跡と、怯えきった民衆の姿は、あまりにも「悪」としての説得力に満ちていた。


「……カイル様、聞き込みの結果が出ました。

 件の魔人は数日前、既にここを去っています。

 ……北東、大陸中央のクロス共和国方面へ向かったとの目撃証言が」


「……そうか」


 カイルは聖剣の柄を強く握りしめた。

東の国境からこの街まで、あいつを追って必死に駆けてきた。

だが、あいつはさらに遠くへ、さらに深い闇へと進んでいる。


「……まずは、この街の負傷者の救護と復興を優先する。

 混乱に乗じた他の盗賊もいるはずだ。

 ……それが終わり次第、クロス共和国へ追撃を開始する」


 カイルは、ガルシアが救ったはずの(そして恐怖させた)民衆のために、聖なる癒やしの魔法を使い始めた。

ガルシアが壊し、カイルが直す。

その対照的な構図は、二人の間に横たわる深い断絶を象徴していた。


 聖なる光に包まれながら、カイルは遠い中央の空を見つめる。


「ガルシア……  君はどこまで、僕から遠くへ行くつもりなんだ」


 その呟きは、誰に届くこともなく、バランの乾いた熱風に掻き消された。

「面白かった!」

「続きが気になる!」

「今後どうなるの!?」


と思ったら、

下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いします!!


面白い!なら☆5つ、つまらない!!なら☆1つ、

正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です。


ブックマークも頂けると本当にうれしいですし、はげみになります!

よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ