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勇者の陰に英雄あり ~手柄をすべて譲った俺は、悪神の加護を手に理不尽な世界を叩き潰す~  作者: 日向ぼっこ
第二章:異なる正義の旅路と亀裂

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016.後手、あるいは友情の終わり

 カイルがこの町に来ている。

その事実は、俺の心に安堵よりも先に、鋭い警鐘を鳴らした。


 安宿の狭い一室。

窓から差し込む月光を背に、俺は荷造りを進める。

マインから持ってきたボロボロの袋に、僅かな衣類となけなしの食料を詰め込んだ。


「……本当に行くんですか、ガルシアさん」


 背後から、ノエルの静かな声がした。

振り返れば、彼女もまた旅の支度を終えている。


「ああ。

 ……昼間の兵士の声、あれは聞き間違いじゃねえ。

 カイルがここに派遣された理由は『港を凍らせた賊』の討伐だろうな」


 俺は自嘲気味じちょうぎみに笑い、右拳を握りしめた。

自分が正義だと思って振るった力が、今やあいつに「親友を捕まえろ」という残酷な命令を下させている。


「俺がここにいれば、あいつは俺を捕まえなきゃならなくなる。

 ……あいつは勇者だ。

 国を裏切るなんて、あのお人好しにはできねえよ」


 自分が消えることが、カイルへの唯一の友情だ。

そう自分に言い聞かせるが、胸の奥ではロキがたのしそうに声を弾ませてやがる。


『――ふふっ、逃げるか。

 勇者という名の偶像ぐうぞうを守るために、己の居場所を捨てる。

 ……お前さんもなかなかに「お人好し」じゃのう、ガルシア』


「……うるせえよ。 俺は俺のやりたいようにするだけだ」


 翌朝、霧の立ち込めるカリムの港を抜け、俺たちは町を出ようとしていた。

だが、町聖剣で、俺の足は自然と止まった。


 そこに、一人の少年が立っていた。

かつて肩を組み、共に笑いあった『親友カイル』だ。

だが、今のあいつにはかつてのような眩い光はない。

霧の中に立つその顔は、まるで幽霊のように青ざめて見えた。


「……ガルシア」


 震える声が、俺の耳を打つ。

カイルの手は、腰に下げた聖剣の柄に掛かっていた。

だが、抜くことができない。

その迷いがあまりにもあいつらしく、俺の心がチクリとするのを感じた。


「……よお、カイル。早いお出ましだな」


 俺は努めて平然を装い、肩に荷物を担ぎ直した。


「なんで、ここにいるって言ってくれなかったんだ。

 何故……

 なぜ、何も言わずにいなくなってしまったんだ? 

 ……君は、僕を捨てるつもりだったのか?」


「は? 伝言を……」


 そこまで言いかけて、俺はすべてを察した。

王都のやつらめ、俺の伝言を握り潰しやがったな。

『勇者カイル』を孤独にして、意のままに操るために。

だが、今さら誤解を解くことに意味はなかった。

解いたところで、あいつに下された「討伐」の命令が消えるわけじゃない。


「……捨てたんじゃねえ。

 俺とお前は、もう住む世界が違うんだよ」


 俺はあいつの横を通り過ぎようとした。

その瞬間、背後でカイルが聖剣を僅かに引き抜き、鋭い金属音が響いた。


「行かせないよ!

 ……行かせたら、僕は本当に『勇者』という人形になるしかなくなるんだ!

 頼む! 一緒に王都へ来てくれ!!

 僕が陛下に話す。

 君は悪いことなんてしてないって――」


「無駄だ、カイル。

 ……お前が信じてくれても、世界は『勇者ではない俺』を信じない。

 それに俺がこの街でやったことは事実だ、どんな意図があろうとな……」


 俺は振り返らなかった。

一歩を踏み出すたびに、背後に残していく親友との絆が、ぷつぷつと千切れていくような幻覚を見た。


「……あばよ、勇者様。

 ……次に会う時は――

 ……できれば剣を抜かずにいれたらいいよな」


 背中で、何かが崩れ落ちるような音がした。

カイルがどんな顔をして、どんな思いで俺の背中を見つめているのか、考えないようにして足を早める。


 手の中に残ったのは、かつてマインの酒場でふざけて交換した、傷だらけのコイン一枚。

朝霧あさつゆに覆われるカリムの港を背に、俺は二度と戻らぬ故郷と親友を、心の奥底へ封じ込めた。


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