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勇者の陰に英雄あり ~手柄をすべて譲った俺は、悪神の加護を手に理不尽な世界を叩き潰す~  作者: 日向ぼっこ
第二章:異なる正義の旅路と亀裂

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015.勇者と便利屋のニアミス

 潮風が、カイルの頬を刺す。

北東の港町カリムは、王都の華やかさとは無縁の、逞しくも荒削りな活気に満ちていた。

カイルは勇者の礼装を隠すように深いフードを目深に被り、一人、町の桟橋近くを歩いていた。


「……あ、あの。

 昨日のお礼にこれ、持っていってください」


 ふと足を止めると、すぐ近くの露店で、小さな少女が青い果実の籠を誰かに差し出しているのが見えた。

視線の先にいたのは、大きな木箱を軽々と肩に担いだ見覚えのある……

あまりにも馴染み深い……

赤髪の背中だった。


「ん? ああ、いらねえよ。

 俺は仕事をしただけだ。

 ……それは自分の弟にでも食わせてやれ」


 ぶっきらぼうな、だがどこか温かみのある声。

ガルシアだ。

間違いない。

カイルの鼓動が激しく打ち鳴らされる。

駆け寄ろうと一歩踏み出し、そして

――止まった。


 ガルシアの隣には、栗色の柔らかな耳を揺らした少女、ノエルが立っていた。

彼女はガルシアの荒っぽい言葉を苦笑いでなだめながら、代わりに少女から一つだけ実を受け取り、丁寧にお礼を言っている。

その光景は、あまりに「完成」されていた。


 王都で孤独に耐え、偽りの笑顔で拍手を受けてきた自分。

一方、何も言わず消えたはずの親友は、ここで誰かを救い、誰かと共に笑い、信頼を築いている。


(……なんで、教えてくれなかったんだ。 なんで、僕を置いていったんだよ

 ……ガルシア)


 込み上げてきたのは、純粋な喜びではなかった。

それは、どす黒く粘り気のある『嫉妬』だった。

自分を縛る「勇者」という名の鎖が、今この瞬間、より一層重く、冷たく感じられた。


「……勇者様、こちらです!  役場の者がお待ちしております!」


 背後から、随行してきた王国兵の声が響く。

その声に、ガルシアとノエルが同時に振り返った。

カイルは反射的に顔を伏せ、人混みの陰へと身を隠す。


「……?

 今、勇者とか言わなかったか、ノエル」

「ええ、聞こえました。

 ……ここに来ているんでしょうか。 カイルさんが」


 ガルシアの顔から、先ほどまでの穏やかさが消え、険しい「戦士」の表情に変わる。

ノエルの瞳に宿る不安。

カイルは壁の陰で、自分の震える右手を強く握りしめた。


 その日の夜。

カイルは役人が用意した豪華な晩餐には手をつけず、町の人々の会話に耳を立てていた。


「あの赤髪の旦那かい?

 ああ、最高の『便利屋』だよ!

 役人に壊されそうになった俺たちの家を守ってくれたんだ」


「氷を使って、一瞬で悪徳商人の船を叩き割ったのさ。

 スカッとしたよね!

 ありゃあ、本物の『英雄』だよ」


 町の誰もが、ガルシアを称賛していた。

だが、その行為は王都では「国家反逆」であり「不法な破壊活動」と定義されている。

カイルに与えられた命令は、その『英雄』を賊として捕縛すること。


「……できないよ。 そんなこと……」


 月明かりの下、カイルは聖剣を引き抜いた。

黄金の輝きが、今の彼にはひどく毒々しく見えた。

もし自分が命令に背けば、勇者の権威は失墜し、シトラス王国は混乱に陥るだろう。

だが、もし命令に従えば

――自分は、世界で唯一の理解者を、この手で裁くことになる。


 カイルの瞳から、一筋の涙が溢れ、剣の身に落ちた。

皮肉なことに、カイルの聖剣はこの時、かつてないほどに鋭い光を放ち始めた。


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