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勇者の陰に英雄あり ~手柄をすべて譲った俺は、悪神の加護を手に理不尽な世界を叩き潰す~  作者: 日向ぼっこ
第二章:異なる正義の旅路と亀裂

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011.握り潰された言霊

 シトラス王国の王都ガイア。

その巨大な城門の前に、俺とノエルは立っていた。

背後では、新しき「勇者」の誕生を祝う喧騒けんそうが、地鳴りのように響いている。

だが、その熱狂は俺たちの足元に届く前に、冷たい石畳に吸い込まれて消えた。


「……行くか」


 隣に立つノエルを見る。

彼女は小さく頷き、俺の外套がいとうの裾をぎゅっと握りしめた。

その指先はまだ微かに震えていたが、瞳には「ついていく」という確かな意志が宿っていた。


 俺は門を抜ける直前、交代のために立っていた門番の肩を叩いた。

昨日カイルを護衛していた騎士の一人なのであいつなら、確実にカイルに接触できるだろう。


「おい、アンタ。 

 勇者様に伝言を頼みたい。 

 ……『俺は北東の港町、カリムに向かう』。 

 そう伝えてくれ」


 俺が金貨を一枚握らせると、門番は驚いた顔をしたが、すぐに真剣な表情で頷いた。


「承知した。 

 ……勇者様には必ずお伝えしよう。 

 無事を祈っているぞ、勇者の友よ」


 その言葉を信じて、俺は前を向いた。

カイル。

俺は先に行ってるぜ。

お前が「勇者」としての重荷を少しでも下ろせたら、その時はまた、安酒でも酌み交わそうや。


 ――だが、俺は知らなかった。

その伝言が、冷酷に握り潰されることを。

俺の後ろ姿が消えると同時に、城門を見下ろす高い回廊から現れた男によって。


「……勇者に余計な未練は不要だ。 

 あの男は、神託がもたらしたシトラスの『剣』でなければならん。 

 辺境の石ころなど、どこへ転がろうと知ったことではない」


 王城の重鎮が放ったその一言で、俺の言葉はカイルの元へ届くことなく、ゴミのように捨てられた。


 一ヶ月後。


 シトラス王国、北東沿岸部。

潮の香りと、水揚げされた魚の威勢のいい声が響く港町カリム。

俺とノエルは、この町の一角にある、薄汚れた安宿のロビーを拠点にしていた。


「ガルシアさん、今日の依頼…… 

 これはどうしますか?」


 ノエルが差し出してきたのは、町の人々が書いたつたない依頼書の束だ


『裏通りのドブネズミを駆除してほしい』

『いなくなった飼い猫のルナを捜して!』

『隣の家との境界線について、文句を言ってやってくれ』


 勇者が王都で着飾り、魔王復活の兆しに備えて軍の将軍たちと会談している間に、俺がやっているのはこのザマだ。


「……猫探し。 

 金になるなら何でもやる。 

 ……行くぞ、ノエル」


「はいっ!」


 俺は「便利屋」を自称し、町に溶け込もうとしていた。

ロキの加護で得た圧倒的な力は、猫を探すために塀を飛び越え、ドブネズミを威圧するために使われた。


『――くふふ。滑稽こっけいじゃな、ガルシア。 

 その拳は山を砕き、その魔力は都市を氷に閉ざすためのもの。 

 それを猫を捕まえるために使うとは、贅沢ぜいたくを通り越して狂気の沙汰よ』


「……黙れロキ。 

 俺は、ノエルが笑っていられればそれでいいんだ。 

 世界を救うのはあいつの仕事だろ」


 俺は脳内の声を蹴り飛ばし、路地裏へと足を踏み入れる。

平和だった。

少なくとも、ここでは。

カイルへの伝言が届いていないことも知らず、俺はあいつがいつかここを訪ねてくるのを、どこかで期待していた。


 しかし、その頃、王都ガイアのカイルは、底の見えない暗闇の中にいた。


「……ガルシア、どこへ行ったんだよ。 

 何も言わずに…… 

 僕を置いて、消えちゃうなんて」


 豪奢ごうしゃな個室。

差し出される最高級の食事。

だが、カイルの瞳からは光が消え、ただ「勇者」という役割を演じるための空虚な人形になりつつあった。

親友が自分を捨てたのだという絶望が、彼を「期待」という鎖の中に、より深く閉じ込めていく。


 ――俺たちが次に再会する時、それは祝福のうたげではなく、殺意の氷点下であることを、俺はまだ、何も知らなかった。

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