表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の陰に英雄あり ~手柄をすべて譲った俺は、悪神の加護を手に理不尽な世界を叩き潰す~  作者: 日向ぼっこ
第一章:運命の邂逅と偽りの栄光

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/29

001.その痣は、静かに日常を侵食する

連載開始記念として、本日のみ2話公開!!

さらに、3月中は毎日更新です!

「――なぜだ! 

 なぜお前は、そうやってすべてを壊そうとするんだ、ガルシア!」


 石造りの聖堂が崩れ落ち、瓦礫がれきの山が視界を埋め尽くしている。

かつての親友―― 光り輝く礼装を血と泥で汚したカイルが、折れそうなほどに震える剣を俺に向けていた。

その左手の甲にある太陽のあざが、宿命を象徴するように激しく脈動している。


「壊す? 

 笑わせるな、カイル。 

 俺はただ、理不尽を叩き潰しているだけだ。 

 お前を縛るその醜い『期待』ごと、な!」


 俺の右手に宿った極寒の熱が、大気を凍らせ、氷のつぶてとなって荒れ狂う。

俺の背後には、居場所を奪われ俺にすがるしかない者たちの声なき叫びが渦巻いていた。


「そんなのは正義じゃない! 

 お前はもう…… 

 人々が恐れる魔王なんだぞ!」


「正義なんて言葉、吐き気がするぜ。 

 ……来いよ、勇者様。 

 お前の大好きな民衆のために、ここで俺を殺してみせろ!」


 カイルが絶叫し、まばゆい黄金の光をまとって跳躍する。

俺は冷徹な殺意を氷の刃に変え真正面からそれを迎え撃つべく、地を蹴り――。



「……シア。 

 ……おい、起きろよガルシア!」


 肺の奥まで突き刺さるような、冷たくて鋭い空気。

それが、一気に俺の意識を引き戻した。


 目を開けるとそこには崩壊した聖堂も、絶望に歪む勇者の顔もなかった。

あるのは、使い古した木製の天井と心配そうに俺の顔を覗き込むカイルの見慣れた茶色の瞳だけだ。


「……なんだ、カイルかよ」


「なんだ、じゃないよ。 

 すごくうなされてたけど、大丈夫? 

 太陽はもうあんなに高いよ」


 カイルは苦笑しながら、俺から引き剥がした毛布を丁寧に畳み始めた。

俺――ガルシア・オルランドは、重い頭を振ってベッドからい出す。

窓の外からは、巨大な岩山を削る槌音つちおとと、朝早くから酔い潰れた親父たちの怒鳴り声が聞こえてくる。


 鉱山町こうざんまちマイン。

鉄と汗の匂いが染みついた、世界で一番騒がしくて温かい掃きめ。

それが俺の本物の日常だ。


「……変な夢を見た。 

 お前と殺し合いをする、最悪の夢だ」


「はは、僕がガルシアと? 

 そんなの、逆立ちしたって無理だよ。 

 さあ、早く顔を洗っておいで。

 仕事に遅れちゃう」


 カイルの穏やかな声を聞いていると、さっきまでの鮮烈な殺意が嘘のように霧散していく。

俺たちはいつものように準備を済ませて外へ出た。

マインの町は、今日も活気にあふれていた。


「よお、ガルシア、カイル! 今日も精が出るな!」

「ああ、おっちゃんも朝から飲みすぎんなよ!」


 笑いながら歩いていると、不意に背後で激しい怒号が響いた。


「おい待てコラ、逃がさねえぞ、ガキが!」


 見れば、酒場のツケをちょろまかしたらしい、ガラの悪い流れ者が俺たちに向かって突っ込んできていた。

抜身ぬきみのナイフが朝日にギラリと光る。

俺は欠伸あくびを一つ噛み殺し避けることもなく、通りすがりにその男の足元へ軽く足を出した。


 ――ズドォォン!


 まるで巨大な岩石が崩落したような音が響く。

男は自分が何につまずいたのかも理解できぬまま、地面に顔面からめり込んでいた。


「……ガルシア、またやったね。少しは加減しなよ」

「あ? 足を出しただけだ。勝手に転ぶのが悪い」


 眉をひそめるカイルを適当にいなす。

俺自身、この力の正体はよく分かっちゃいない。

ただ、マインの屈強な男たちに囲まれて育つうちに、いつの間にか誰にも負けないほど力がついていただけだ。


 これが俺たちの日常だ。

ずっと続くと思っていた、何の変哲もない平和な毎日。

だが、その日の夕暮れ時、運命は音を立てて壊れ始めた。


 仕事を終え、いつものように河原で泥を落としていた時だった。

隣で顔を洗っていたカイルが唐突に叫び声を上げた。


「――っ!!?」

「おい、どうしたカイル!」


 カイルは左手を右手で必死に押さえ、その場にうずくまった。

慌てて駆け寄り、彼の腕を掴もうとした瞬間――。


 バチリッ!


 弾けるような衝撃が俺の指先を襲った。

まるで、意思を持った雷に打たれたような感覚。


「熱っ……!? 

 なんだ、今の???」


 カイルの左手の指の間から、まばゆいばかりの光が漏れ出した。

夕闇を塗り潰すほどに鮮烈な黄金の輝き。


「……嘘、だろ」


 カイルが恐る恐る手を離す。

そこには、朝までは絶対になかったはずのものが刻まれていた。


 皮膚を焼き切ったような鮮烈な赤。

燃え盛る太陽をかたどったような、奇妙で禍々《まがまが》しい『あざ』。


 痣は、脈動するように不気味な熱を持って発光し続けている。

俺の背筋を、見たこともないような冷たい戦慄せんりつが駆け抜けた。


「……なんだよ、これ。 

 おい、いつからあったんだ!?」


 俺の問いに、カイルは青ざめた顔で首を振る。

この時、俺は本能的に悟っていた。


 この『痣』が、俺たちの穏やかな日常を二度と戻らない奈落へと引きずり込んでいく合図なのだと。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「今後どうなるの!?」


と思ったら、

下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いします!!


面白い!なら☆5つ、つまらない!!なら☆1つ、

正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です。


ブックマークも頂けると本当にうれしいですし、はげみになります!


よろしくお願いします!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ