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マイベストユートピア  作者: 米ノ香
ネオリュカ接近編
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第38話:無実の牙

「おい、詳しくは署で話を聞くぞ。」



「……私の人生、ここまでか……」



――数時間前――


「ふふん。たい焼き特売で買えちゃった。ポーリ街まで遠出してきた甲斐があったよ。……でも30個は買いすぎたかな。」


エルが大量のたい焼きを抱えてウキウキで帰路につき、ポーリ街からアザル街へと差し掛かる時。エルは足取りが危うい黒いフードを被った人物の肩にぶつかった。


「あ、すいま……」


エルが言い終わらないうちに相手はそそくさとどこかへ消えてしまう。


「……なんだったんだろ、あの人」


その時、エルの鼻に刺激臭が。


「……ッ。火薬の匂い……!」


エルが伏せた瞬間。


ドカーーン!


近くの建物が爆発する。それに応じて黒い服を着た体格のよいSPたちがエルを囲む。


「こんな若い子が?」


SPの一人が言う。


「いや、こうやって油断させる場合もある。……おい。悪いがお前の身柄は保安局に引き渡させてもらう。近くにいたのはお前ぐらいだからな。」


SPの一人がエルの細いながらしっかりした右腕を掴む。普通の人ならここで大人しく降参するだろう。しかし彼女は半ウルフ。血が騒いだのかエルはうっかりSPの腕を左手でしっかり掴みそのまま軽々と投げ飛ばしてしまう。


「あ、やばい……」


気づいた頃には遅く、SPは地面に打ち付けられていた。そして最悪なことに、それに続くように保安局のパトカーがゾロゾロとやってきた。刑事の男がSPの元に走ってくる。


「……爆発があったと通報がありました。」


「近くをある程度探りましたが、この少女以外は誰もいませんでした。」


その瞬間、エルは手錠をかけられる。


「きみ、とりあえず……署まで来てもらうぞ。」



 一方その頃、アキヤマ探偵事務所では。


「暇だ。暇で死にそうだ」


アキラがソファで伸びていた。いつもなら「アキラ、たい焼き買ってきて。」「アキラ。肩揉んで。」などの声に振り回されているが。


「なぁ、アキヤマさん。エルはどこ行ったんだ?」


アキラは散らかった所長デスクで新聞を開いているアキヤマに聞いた。


「しらねぇよ。どうせあいつのことだ。ケチャップかたい焼きの特売にでも行ったんだろ。すぐ帰ってくるさ。」


「俺をパシらせずに……?」


「……お前、パシリが板についてきてんじゃねぇか……」


アキヤマが呆れていると突然ドアが開く。


「大変!エルが……エルが逮捕されちゃったぁ!」


そこには慌てふためくアヤカが立っていた。続いて息を切らせ、髪が乱れたミヤビがやって来る。


「……アヤカ、ちょっ……ちょっと……落ち着きなさい……ハァハァ……」


「落ち着いてられないよぉ!エルが何したってのよぉ!」


そんなアヤカを制したのはアキヤマだ。


「落ち着けアヤカ。……おいミヤビ、被害に遭った建造物の総額はいくらだ。」


「なんでエルが暴れた前提で話進んでんのよ……」


(その時、テレビではちょうどケチャップ倉庫から大量のケチャップが盗まれた事件が報道されていた)


「……じゃあまさか……ケチャップの……」


「ストーーップ!エルは……エルはそんな奴じゃねぇ……あいつは……あいつは……」


床で這いつくばるアキラの頭をミヤビは(どこから出したのか)ハリセンで叩く。


「……アホなの?とりあえず落ち着きなさい。エルはどこも壊してないし盗みなんてしてない。」


ミヤビは疲れた顔をしてノートパソコンを開く。


「……おい。まさかとは思うが……」


アキヤマとアキラは一瞬青ざめる。そして何も知らないアヤカを見る。


ミヤビはアキヤマとアキラをキッと睨むとノートパソコンの画面を見せた。そこには爆破された建物の画像があった。


「……今日の15時頃、アザル街とポーリ街の境界付近で爆発が起きたの。」


「おいおい。その爆発とエルに一体なんの関係があるってんだよ!」


アキラは身を乗り出す。


「その容疑者としてエルが連れてかれたのよ。……保安局の連中、こんなの監視カメラ見たらすぐにエルが犯人じゃないってわかるのに……」


ミヤビは動画を見せる。それは監視カメラの映像だった。


「……ほんとだ。エルたい焼き持ってルンルンじゃねぇか。……あ、今エルにぶつかった奴、怪しいぞ!」


「……私も、こいつが犯人だと思う。ただ今回は場所が悪かったの。爆破された建物は、あの四大財閥の一つ、フォス財閥の管理下にある建物なのよ。」


ミヤビがそう言うとアキヤマが口を開く。


「そうか。つまりあいつら、事態を大きくしねぇようにエルを連行したのか。四大財閥の管理している建物だ。もし大きな組織が動いていると世間様に知られれば混乱を招きかねないからな。」


「俺、エルの無罪照明しに行く。」


上着を取って出て行こうとするアキラにアキヤマが言う。


「待て。この状況でお前が行っても門前払いされるだけだ。」


「だからって……従業員見捨てるんすか?!」


「いや。」


アキヤマはニヤリと笑う。


「保安局にはツテがある。」





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