表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マイベストユートピア  作者: 米ノ香
ネオリュカ接近編
36/37

第35話:落下にご用心

 アキヤマ探偵事務所があるアザル街から少し歩いた場所にあるスラム街。アキヤマとエルはとある工房の前に立っていた。


「……ねぇ、本当にここなの?」


エルが不安そうに聞く。


「あぁ、ここで間違いない。シデラス工房……あの時から全く変わってねえなぁ……」


アキヤマがドアを開ける。その瞬間、ミサイルが飛んでくる。エルとアキヤマは咄嗟に左右に飛び、ミサイルを避けた。


「……何、敵襲?」


エルが威嚇をするとアキヤマがそれを制する。


「……いや、これはゲングの親父の野郎の仕業だな……おい、ゲングの親父。歓迎の挨拶にしちゃ、随分と野蛮じゃねぇか?」


すると扉の奥から人影。


「ヒャッハハ!コージじゃないか!……いやぁ、すまんすまん。てっきり借金の催促かと思うてなぁ!」


出てきたのは白髪混じりのボサボサ髪にゴーグルをつけた白衣の男性だ。


「……ったく、借金の催促だったとしてもミサイルをいきなり撃つんじゃねぇよ。保安局にしょっぴかれるぞ?」


アキヤマはタバコをふかしながら面倒くさそうに言う。


(……帰りたい)


エルは心底後悔した。この男に剣の修理を頼めば真っ二つに折れた剣がさらに木っ端微塵になることを予想したからだ。


「それにしてもコージ。その隣にいる嬢ちゃん、もしかしてお前さんのとこで拾ったっちゅう従業員か?」


ゲングはエルを見つめる。エルは咄嗟に目を逸らした。


「あぁ、こいつの剣が折れちまってな。直してくれるか?ゲングの親父んとこなら直せるだろ?」


アキヤマに目でアピールされエルは渋々折れた剣をゲングに差し出す。その瞬間、ゲングの表情が一変する。


「こりゃ、一体どこで手に入れた?ネオトピアシティの近場じゃ手に入らねぇ素材だな……少なくともこれを売ると数百万……いや、数億ネオはくだらんぞ!」


エルは慌てて折れた剣を引っ込める。売られてはたまらない。


「ヒャッハハ!安心しな嬢ちゃん。その素材ならワシも持っとる!奪って売り飛ばしたりゃせん!」


その言葉にエルは少し安堵する。


「……ただし、タダではせんぞ?ワシを動かすにゃ、それなりの報酬がいる!金だけじゃ動か……」


ゲングが言い終わらないうちにアキヤマが手に持っていた袋から一瓶の酒とスルメを取り出す。


「ほらよ、酒とつまみだ。後で報酬も払う。これでどうだ?」


ゲングはニヤリと笑う。


「ヒャッハハ!わかっとるじゃないかコージ。……よし!ほんなりゃその剣、このゲング・ギャンが今すぐ直してくれよう!」


ゲングが工房の奥に入って行く。


「……ねぇ、おじさん。あのお酒とおつまみ何?」


エルが聞く。するとアキヤマが呆れたように呟く。


「……昔からあぁなんだよ。酒とつまみがねぇと絶対に動かない、飲んだくれジジイだよ……」


(……おじさんも大概飲んだくれてるよ……)


エルはその言葉を胸にしまう。


「……さて、ここで待つのもあれだし、中に入るぞ。」


エルはアキヤマに続いて工房に入る。



 工房の中は多くの武器やら機械で溢れていた。中には勝手に動き出す武器があり、危うくエルの鼻がなくなるところだった。


「……ねぇ、ここ、拷問部屋か何かなの?」


エルはアキヤマに聞く。


「……また悪趣味なものを作りおったなあの親父……」


アキヤマは武器を避けながら言う。


「……ふぅむ。こりゃ面白い設計をしとるな。軽いのに鋭い斬撃が撃てる……これを作った奴には名誉賞を送りたいね!」


ゲングはエルの剣をいじりながら言う。エルは椅子に腰掛け考える。


(……そういえばこの剣って誰から貰ったんだっけ……)


エルの頭の中、優しくもどこか鋭い声が響く。


「……エル、踏み込みが甘いです。やり直し。」


(……あれ、誰だ。この声、あの時の声とは違う……)


「……エル、あなたは強い。だから選ばなきゃいけない。」


(……うっ、頭痛い……)


エルの中で存在しないはずの記憶が蠢く。


(……私は、一体どこから……)


そこでエルは目を覚ました。ゲングが喜びの声をあげている。


「これこそが、ワシの技術!最高傑作じゃ!」


エルは立ち上がり綺麗に元通りとなった剣を見つめる。


「……すごい、元通りだ。よかった。」


エルのその嬉しそうな顔を見てアキヤマはフッと笑う。その顔は娘を見つめる父親そのものだった。


「これだけではないぞ!少し戦闘に役立つ機能も追加しておいた!そこの赤いボタ……」


――ドォーーン―――

その時だ。ゲングが言い終わらないうちに扉が爆破される。


「何?」


エルが見つめるとそこには黒装束の集団。


「……チッ。あのときの黒い野郎どもじゃねぇか。一体何の用だってんだ?」


アキヤマが腰の銃に手をかける。


「……我々はそこのオッドアイに用がある。命惜しくばその女を渡せ。」


黒装束の一人が口を開いた。


「やだね。こいつは俺の大切な従業員だ。お前らのような野蛮人にこの大食いの面倒は見れねぇよ」


アキヤマはその瞬間、目にも止まらぬ速さで銃を撃ち込む。


「おーい!お前らワシの近くに来い!」


ゲングが叫ぶ。アキヤマとエルはゲングの近くに寄る。


「なんだゲングの親父。何か策があるってのか?」


アキヤマが近づく黒装束たちを撃ちながら聞く。ゲングはポケットからボタンを取り出す


「こんなこともあろうかと、秘密の脱出口を用意しておいて正解じゃったな。……歯を食いしばれよ!」


ゲングが手に持っているボタンを押すと、床が開く。そのままエルたちは下に落下した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ