第31話:止まれないもの
キィィィン!
エルの剣が異形ウルフの腕を狙う。異形ウルフの腕は硬く、両者のせめぎ合いで火花が散る
(……硬い。……でもティエラほどじゃないな)
エルは持てるだけの力を振り絞り、腕を斬り落とす。
「グォォォォッ!」
異業ウルフはその衝撃でよろめく。その隙にアキラとザザン、アキヤマが畳み掛ける。
「このデカブツ野郎!それ以上壊すな!」
アキラは拳から血が出ることも厭わず異業ウルフの腹に攻撃を叩きこむ。
「ひぃぃぃぃっ!打つぞ?打つぞ?打つから攻撃してこないでぇぇぇ!」
ザザンが打った鉛玉が異業ウルフの体にヒビをいれる。
異業ウルフは暴れ回り、攻撃を負傷したジンとジルに矛先を変えた。
「おっと、怪我人を狙うとは卑怯だぞ?」
アキヤマは異業ウルフの背中めがけて蹴り技を決めた。
「……アキヤマさんも十分卑怯だと思うけど」
ミヤビが通信機上でツッコむ。
「……おい、ジル。あの餓鬼たちとあの男、一体どうなってやがる……」
「知りませんよ。ただ一つ言えるのは、あの集団が化け物だってことです。特にあの剣を持ってる餓鬼と拳でタイマン張ってる餓鬼……あの二人はどうも動きが人間離れしてやがる。……というか人間じゃないですよ、あれ。」
ジルはエルとアキラを片目で見る。
「グォォォォッ……」
異業ウルフは片膝をつく。
「よし、核を破壊するぞ。エル、いけるか?」
アキヤマはエルを見る。
「言われなくても大丈夫。」
エルは異業ウルフの前に立つ。
「……ごめんなさい。」
エルは剣を核めがけてふる。
刃が核に触れた瞬間、
硬質な抵抗。
振動が腕に走る。
嫌な感触。
――カキィィィン――
「……ッ!」
異業ウルフの鋼のような体が刃を弾いた。
剣が折れた。音が消えた気がした。エルは思わず後退する。
「グォぉぉぉぉぉ!ガルァァァァァァァァ!」
異業ウルフは近くにあった乗客が落としたのであろう武器を次々と食らう。
「はぁ?!あいつ、武器食ってるぞ!」
アキラは驚愕の顔で見つめる。エルは迷わず剣を異業ウルフに叩き込む。
――ガキィィィィン
重厚な音が響く。
「……ッ!」
エルの剣は真っ二つに折れた。エルは一瞬頭が真っ白になった。立ち尽くすエルに異業ウルフは腕を振り下ろす。
「エル!」
アキラがギリギリのところでエルを助けた。アキラはエルの上に覆い被さっていた。
「……あっ、その、すまねぇ!」
アキラはエルからすぐに離れた。顔は赤い。
「……いい。大丈夫。あと……」
一拍。
「ありがと。」
その言葉にアキラは少し照れていた。
エルは折れた剣を持つ。異業ウルフはアキヤマとザザンがひきつけている。その時。
「みんな!まずいわ!早くこの列車を止めないとウルフの群生地に突っ込む!」
ミヤビからだ。
「群生地?!」
一同が叫ぶ。
「えぇ、この列車の線路の距離を調べたの。旧都市で使われていた線路ね。ちょうど途切れている場所からウルフの生体反応が多数確認されたの」
「……まずいね。剣も折れちゃったし、このウルフ倒さないと先行けない……。」
エルは運転席に続く扉を見る。異業ウルフの巨大がその行手を阻む。
「……だったら簡単だ。エル、先に行け。」
アキヤマが言う。
「……みんなはどうするの?」
「俺らはこのデカブツを足止めする。……なぁに。40過ぎたおっさんでもそれぐらいできるさ。おい、アキラ、ザザン。いいな?」
「了解だ。」
「……ふっ。僕の力ならこれぐらい……ってギャァァ!」
「……よし。大丈夫だ。エル、剣は折れても使い物にならないわけじゃない。行ってこい。こいつは俺らが足止めする。」
アキヤマとザザンとアキラは異業ウルフに体当たりする。
「……みんな。……わかった。ミヤビ、指示お願い。」
エルは異業ウルフが押さえられている隙に運転席の扉の取手に手をかけた。




