第28話:暴走列車
ネオトピアシティが誇る豪華列車エリュシオン号内の通路。
「……それにしても広いですね。こんなの対策課の安月給じゃ絶対乗れないですよ。ということで給料上げてくださいドケチ副課長。」
「給料が安いのはお前がサボってるからだ。あとドケチ副課長ってなんだ喧嘩売ってんのか始末書書かすぞ?」
ジンとジルが通路で言い合いをしている中、運転席から怒号が聞こえた。
「……チッ。やっぱり始まったか……行くぞジル。説教はその後だ」
エリュシオン号運転席。
「おい。今すぐ手を上げて地面に伏せろ。」
黒装束に白い仮面を被った集団が運転席のドアを蹴破って入ってくる。
「ひっ!なんですか!あなたたちは!」
「いいから伏せろ。さもなくば鉛玉ぶち込むぞ」
リーダー格の男が運転手に銃を突きつける。運転手は潔く地面に伏せる。
「ケッ……。ハナからそうしてりゃいいんだよ。おい、こいつ縛れ。」
リーダーが言うと隣にいた部下が運転手を縛り上げる。
その頃、他の客室車両でも黒装束の集団が入りこみ、列車の中はパニックになっていた。その中、親とハグれた少女が泣き喚く。
「おい、泣き喚くな。それ以上泣くなら眠ってもらうぞ」
黒装束の男が少女に銃口を突きつける。その時、鋭い声が聞こえる。
「……おい。銃下ろせ。」
黒装束の男が振り返ろうとすると顔面に拳がめり込む。ジンだ。
「……ったくよ。こりゃ大仕事だな。おいジル。仮にもそいつらは一般人だ。トドメをさそうとするな。」
ジンがジルを見ると、ジルは黒装束の男の山に剣を突き立てていた。
「……チッ。わかりましたよ。」
ジルは嫌々剣を鞘に戻す。
「とりあえず今はこの混乱を止めるぞ」
ジンとジルは次の車両へ走り出した。
一方、エリュシオン号の最後尾車両のスイートルーム。エル、ミヤビ、アヤカはケーキを食べていた。
「モグモグ……美味しい……。アキラ、ルームサービスでケーキもう一個頼んで」
「また?!もう10個目だぞ?!」
「いいの。食べられる時に食べとかないと」
「あ、アキラ。私にもお願い」
「アキラ!私も!」
「はいはい、わかったよ……」
アキラは受話器を取る。アキヤマはベッドで爆睡だ。ザザンはホラー映画を思い出しているのか顔色が悪い。
「さ、殺人鬼……列車密室……ひぃぃぃっ!」
「ビビり。うるさい。」
ミヤビが目線を向けずに言う。
「なっ!僕はビビりではない!……魔界より舞い降りし漆黒の……」
「あれ、繋がらないな……」
ザザンが言い終わらないうちにアキラの声が入る。
「繋がらない?何かあったのかな」
アヤカがモンブランを食べながら言う。
「……そういえばさっき怒号が聞こえたような……」
エルがショートケーキの最後の一口を頬張りながら言う。
「……嫌な予感がするわね……」
ミヤビがタルトを食べながら険しい顔をする。
「あのぉ……」
ザザンが割って入る。
「何?どうかした?」
エルが聞く。
「だ、誰かトイレ行きたい人いない?」
ザザンがモジモジしながら言う。
「いやぁ、さっき行ってきたしなぁ……」
「私も。エルは?」
「特に。」
「俺も大丈夫だ。……ザザン。トイレ行きたいなら早く行けよ。すぐそこだろ?」
「え。ほんとにいないの?」
ザザンが希望を求めるような顔で当たりを見回す。
「……はぁ。アキラ、あんた行ってあげなさいよ。ザザンは怖くて一人でトイレに行けないのよきっと。」
ミヤビが呆れたように言う。
「は、は?!いや一人で行けるし!ただ……僕が特別にトイレにエスコートしてあげようと思っただけだ!」
「んなもんいらねぇよ。とっとと行け」
アキラがザザンの背中を押す。
「ほ、本当だな?!行くぞ?いいんだな?!後で行きたくなっても知らないからな?!」
「小学生の遠足じゃあるまいし……」
アキラは困り果てた顔をする。
ザザンは嫌々ながら取手に手を掛けた。
「ふ、ふん。し、仕方ないな……一人で行ってやる……」
ザザンは勢いよくドアを開けた。その先には白い仮面を被った黒装束の集団が。
「「あ、」」
ザザンは扉をゆっくり閉める。
「……。やっぱり後で行くわ」
その時、ザザンの見て見ぬ振りも虚しく扉が勢いよく開けられた。
「お前らぁ!武器を置いて今すぐ床に跪け!」
黒装束の男は銃を天井に向けて乱射した。
「ギャァァァァァァ!殺人鬼ダァァァァァ!」
ザザンは白目をむいて倒れた。
「あらら……うちの従業員が倒れちゃったよ。」
エルが後ろに隠してある剣に手をかけながら言う。
「ジュースに弾丸入っちゃった……」
アヤカが弾丸の入ったコップを見つめつつ、背中に背負っているブーメランに手をかける。
「ちょっと、豪華列車でテロなんてどういうつもり?」
ミヤビが睨む。
「俺、今回の旅行ほぼパシリで終わっちまったよ」
アキラはそう言いつつ、バンテージをはめなおす。
「ぐガァァ……」
アキヤマは相変わらず眠っている。
「な、なんだ?!この車両、全く緊張感がないじゃないか!ぶ、武器を置けと言っただろ!」
黒装束の男の一人が銃口を向けながら若干引いていた。
「当たり前じゃん。こんなの日常茶飯事なのに……」
エルが答える。
「ど、どうしますか先輩?!こいつらヤベェっすよ!」
「……チッ。仕方ない。儀式まで生かすようにとのことだが致し方ない。……殺すか。」
黒装束の男たちが引き金を弾き掛けた瞬間。
「ひっ、銃が真っ二つに?!」
黒装束の男たちは身じろぐ。エルが斬ったのだ。
「おい。よそ見すんなよ」
アキラが男の一人にアッパーをかける。
「なっ……?!」
他の黒装束たちが驚いていると、ブーメランが彼らの足をとる。
「ダメだよ。こんな狭いところで銃を撃っちゃ。」
アヤカだ。
「てんめぇ!」
黒装束の男が襲いかかろうとするとフォークが男の頬を掠める。
「おいコラ。誰だ。俺の安眠を邪魔したバカは」
アキヤマだ。睡眠を妨害されて不機嫌そうだ。
「みんな、やりすぎないで。この人たち、ただの人間よ。」
ミヤビが解析をする。
「おいおい。ただの人間だと?!豪華列車なのに……。警備どうなってんだ?」
アキラが襲いかかる黒装束たちを相手しながら言う。
「……どうやら安息な旅はできないみたいだね。……で、あなたたちの目的は?」
エルが黒装束の男の一人の首に剣を突きつける。
「ふっ、この列車はジャックさせてもらった……。お前たちは神に捧げる生贄となるのだ……!」
「生贄?神?……どうでもいいけど私たちのケーキを邪魔した罪は重いよ」
エルはそのまま男を峰打ちした。
「……うわっ、怖……」
アキラはこの瞬間、エルの食事中は邪魔しないように決めた。
「……目的地から逸れてる。……まずいわ。この列車、地図上にない場所に行こうとしてる」
ミヤビがノートパソコンを見ながら言う。
「全く……慰安旅行どころじゃないね」
エルが気絶しているザザンを起こしながら言う。
「とりあえず今の目的はこうだ。運転席に行ってこの列車止めるぞ。」
アキヤマはタバコに火をつけながら言った。一同は暴走した列車を止めるべく運転席へと目指した。列車はそのまま構わず地図から消えた線路へと滑り込んでいく。




