第23話:壁の向こうにいる
ミヤビとザザンは氷の洞窟内を散策していた。
「……おかしい。地形を読み取れない……」
ミヤビはノートパソコンのキーボードを必死に叩くが地形の構造を読み取れず焦っていた。
「クッ……!これが幻影の使徒の力か……!」
ザザンが厨二病ポーズを決めていると突然何かがザザンの頬を掠めた。
「ヒッ……!」
「氷の矢……?誰かいる……!」
その時向こうから全身が氷の棘で覆われた騎士のような人形がやって来た。
「ヒィィィィッ!氷の傀儡だぁぁぁぁぁぁ!」
「ザザン!ビビってないで攻撃!」
氷の人形はザザンとミヤビに向けて矢を放とうとしてくる。
ザザンは寒さと恐怖で震えながら氷の人形に機関銃を向ける。
「ククク……よくぞ僕の暗黒結界(迷路)を潜り抜けてきたな、氷の傀儡よ! さあ、僕の右腕の……ひぎゃあああッ! 滑る! 床がツルツルで踏ん張れねえ!」
「ちょっとザザン、騒がないで! メガネが完全に凍結して、敵が10人くらいに見えるわよ! ……仕方ない。まだ試作段階だけど……」
ミヤビは荷物からハッキング・ドローンを取り出し、端末を操作する。が、ハッキング・ドローンは敵ではなくザザンのマントに激突して火花を散らし床に転がった。
「熱い熱い! 敵の属性攻撃か!? ……ってミヤビ、お前だろ! 敵はもっと左だ!」
一方、アキラたち。アキラは腰半分が水に浸かりながらアヤカのブーメランが浮く場所に歩いていく。
(寒ィ……。これ人間だったら死ぬやつだろ絶対!)
下半身の感覚が無くなる中アキラはアヤカのブーメランを取り急いで陸に上がる。
「ありがとぉぉぉぉアキラ!」
アヤカはブーメランを抱きしめた。
「大丈夫だ。それよりそのブーメラン、大事なもんなんだろ?」
アキラはズボンを絞りながら聞く。
「え、なんでわかったの」
「見りゃわかるさ。………そこまでして拾うもんなんだろ?」
アキラがそう言うとアヤカは少し俯いた。
「……うん。これはお母さんとお父さんの形見なの。」
アヤカは言う。
「……そっか。」
アキラはそれだけしか言えなかった。
「でもね、私、今すっごく楽しい。騒がしくて温かくてまるで家族みたい」
アヤカはいつもと同じように笑って見せる。
「そーだな。俺も楽しい。まだ来て間もないけどまさかこんなに濃い日々過ごせるなんて思わなかった」
アキラとアヤカは一緒に笑う。この空間だけは凍てつくような空気がまるで嘘のようだ。
「……さて、どうやら雑談はここまでみたいだぜ」
アキラが向いた方向から武士の格好をした氷人形が現れる。
「うわっ!何あれ!武将さんみたい!」
氷人形はアキラとアヤカに向かって氷の刀を構える。
「ちょうどいい。寒くて死にそうなんだ。いい運動になるな」
その頃一人孤立したアキヤマは、迷路を突破するために物理(拳)で壁を壊し続けていた。
「……どいつもこいつも、手間をかけさせやがって」
背後から迫る巨大な氷のムカデ型人形
「チッ、後ろから来たらビビるだろうが!お前みたいな冷たい野郎はお断りだ」
アキヤマは全力疾走。氷の節足が地面を削る音がアキヤマの背中を震わせる。
行き止まりの壁にぶつかる直前、渾身の蹴り技で氷壁を粉砕。「こっちが近道だ」と適当な理論で突進し続ける。
それぞれの場所でハプニングを巻き起こしながらも、彼らの心は一つだった。
ザザンは転びながら
「エル……! 待ってろ、今……最高にかっこいい登場シーンを考えてるからなッ!」
アヤカはブーメランで氷人形を破壊しながら
「待っててねエル!今悪い氷さんたちやっつけてるから!」
アキラは氷人形の刀を粉砕しながら
「あいつ、一人で背負い込みすぎなんだよ……!」
ミヤビはメガネを拭きながら
「……解析完了! 全員、壁の向こうにエルのバイタルを確認! 突入するわよ!」
「間に合って!」
「ククッ……!どんな登場でいこうか……!」
「エル……!まだお前のこと、ほとんど知らねぇけど一人だけいい顔はさせねぇぜ!」




