表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マイベストユートピア  作者: 米ノ香
ツンドラ編
23/37

第22話:寂しさの食べる命

 一行が落ちたのはまるで入る者を拒む生きた迷路だった。メンバーはそれぞれバラバラの場所に落ちる。

ミヤビとザザンは鋭いツララがたくさん生成してある場所に落ちた。ザザンの幸運のおかげでツララに串刺しにされずにすみ柔らかい雪の上に落ちたおかげで無傷に済んだ。


「ヒィィ! ミヤビ、右から氷のツララがッ!」

 

「見えないって言ってるでしょ! ザザン、あなたのマントを掴んでるから勝手に走らないで! 布が破けるー!」

暗闇の中、ザザンの叫び声とミヤビの怒号がエコーした。


アキラとアヤカは水辺のそばに落ちた。アキラは無事着地し上から降ってくるアキラを受け止めた。

「アキラありがとう!あ、ブーメラン水に落ちちゃった!」

 

「お、おう……って、危ない!死ぬぞ!俺が取ってやるから!」

アキラは水辺に落ちたブーメランを取ろうとするアヤカを必死に静止する。

 

アキヤマは一人。 

「……ったく、どいつもこいつも。……静かすぎて耳がキーンとするぜ」

アキヤマは一人でタバコを吹かそうとするが、ライターが凍りついてつかない。虚無の表情で氷の壁を殴った。


一方、エルとルルーが辿り着いたのは、天井がぽっかりと開き、青白い月光が降り注ぐ広大な空間だった。

そこには、あまりにも巨大で不気味な、**「歪な雪だるま」**が鎮座していた。雪でできているはずなのに、その内側からはドクドクと鼓動のような音が響き、血管のような赤い筋が浮き出ている。

その雪だるまの足元に、彼女はいた。


「……ふふ、おいし……。やっぱり、この村の子は冷えてて締まってるわね」


ティエラは氷の椅子に座り、まるで高級なデザートでも味わうように、小さな、見覚えのある防寒着の一部が残る「おやつ」を口に運んでいた。


「……っ!!」

ルルーはその光景を見た瞬間、目の前が真っ赤に染まる。

ティエラの隣にある雪だるまの「材料」が、行方不明になった子供たちのなれの果てである可能性。そして、今まさに食べられているのが誰なのか。

ルルーはパチンコを握り締め、飛び出そうとする。

 

「……待って。死ぬ気?」

エルが背後からルルーの体を力任せに押さえ込む。エルの腕の中でもがくルルーの体温は、怒りで沸騰しそうだった。

 

「離せよ! あいつ、あいつ……今、食べてるんだぞ! コウの仲間を……アタイの友達を!」

 

「……わかってる。でも、今出たらあんたもあの雪だるまの具材になる」

 

エルはルルーの口を塞ぎ、氷の陰に身を潜める。エルの指先には、ルルーの溢れた涙が熱く伝わっていた。


その時、巨大な雪だるまが「ギギギ……」と不気味な音を立てて震え出しました。

 『お姉……ちゃん……足りない……よ……。もっと……もっと……温かい……命が……欲しい……』

 

雪だるまの表面に、巨大な「口」が裂けるように現れる。

ティエラは愛おしそうにその雪だるまを撫でた。

 

「大丈夫よ、テラ。……今、とってもいい匂いのする『メインディッシュ』が、すぐそこまで来ているから」

 

ティエラの視線が、正確にエルとルルーが隠れている氷の柱へと向けられた。



 「……あらら……バレてたか……仕方ない。」

エルが渾身の力で剣をティエラに向け突進する。エルの剣は確実にティエラの首を捉えたはずだった。しかし、手応えはない。斬られた瞬間、ティエラの肉体はサラサラとした粉雪へと霧散し、そのままエルの背後で再び少女の形に収束する。

 

「無駄よ、エル。この場所は私そのもの。大地も、雪も、空気も……すべてが私の体なんだから」


エルは息を切らしながら、ルルーを背中に庇い、何度も剣を振るう。胴を薙ぎ、心臓を突き、眉間を割る。しかし、どの致命傷を与えてもティエラは嘲笑うように雪に溶け、無傷で現れる。

ウルフには必ず存在するはずの「核」が、彼女の体内には感じられない。剣が滑る。指の感覚がない。

 

「エル、右ッ!!」

 

「……チッ!」

 

地面から突き出した巨大な氷の棘がエルの脇腹をかすめる。ルルーを庇うために回避が遅れ、エルの服が赤く染まっていく。


ティエラは指先一つ動かさず、周囲の環境すべてを武器に変えて襲いかかる。

舞い散る雪の一片一片が、カミソリのような鋭利な刃となってエルたちの皮膚を切り刻んだ。


「……チッ。キリがないな……」

エルが踏み込んだ足元は瞬時に凍りつき、機動力が奪われる。


「ねえ、エル。そんなにボロボロになって、その『エサ』を守って何になるの? その子は明日には死ぬ、ただの短い命よ? 私たちと一緒に、永遠の雪の中で眠りましょうよ」



エルは震える膝を叩き、再び剣を構え直す。視界は出血と猛吹雪で白く霞んでいるが、背中に感じるルルーの小さな震えが、エルの心を繋ぎ止めていた。

 

「……うるさい。あんたが食べてるのは、命じゃない。……ただの、寂しさだ」


その瞬間、ティエラの指先が少し震える。

 

「エル……あんた、もうボロボロだよ……! アタイのことなんていいから、あんただけでも逃げろよ!」

 

「……大丈夫。……私は、あなたを撫でたんだ。……撫でたものは、最後まで守るって決めてる」


その時、背後の巨大雪だるま(テラ)が、今までで一番大きな**「ドクン!」**という音を立てる。

それと連動して、ティエラの胸元がわずかに青白く光った。

「……っ、あそこか……」

エルは気づいた。ティエラの本体に核がないのではない。彼女の核は、弟である「テラ」の巨体の中に隠されているのだと。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ