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マイベストユートピア  作者: 米ノ香
ツンドラ編
22/37

第21話:幸運注意

標高を増すごとに、吹雪はもはや視界を奪う白い壁と化していた。マイナス30度の極寒の中、一行はボロボロになりながら山道を登る。

 

「ひ、ヒィィ……! 魔力が……俺の魔力が凍りついて、心臓の鼓動がストップ・モーションだ……!」

とザザンは歯をガチガチさせながら震える。

 

「……へ、へへっ。これくらい、サウナの後の水風呂みたいなもんだぜ……」

アキラは強がっているものの今にも倒れそうだ。

 

「もう……ダメ……。メガネが凍って何も見えない……。これ、右と左どっちが崖なの!? 誰か私のGPSになって……!」

ミヤビはいつもの冷静キャラをすっかり捨てている。

 

「むーりー!! 私、南国育ちじゃないけど無理! エル、お願い……! あなたの体温だけが私のライフラインなの……!」

アヤカはコアラのようにエルにしがみついた。


「お、重い……」


 「……おい、お前らしゃべるな。体温が逃げる。……あとミヤビ、俺の髪を掴むな。氷柱つららになってて折れるぞ」

アキヤマの無精髭とボサボサの髪は、雪と吐息で真っ白に凍りつき、まるで氷の彫刻のようになっている。


そんな一行の背後から、吹雪を割って聞き覚えのある声が響いた。

 

「なっさけねーなぁ! ネオトピアの探偵様が、たかがこれくらいの雪で全滅かよ!」

 

振り返ると、そこには防寒具を何重にも着込み、鼻の頭を真っ赤にしたルルーが立っていた。

 

「ル、ルルー!? なんで着いてきたの……危ないって言ったでしょ!」

 

「おいガキ、ここは遊び場じゃねえんだ。今すぐ村に……」


周りが口々に反対する中、アキヤマだけは無言でルルーをじっと見つめていた。その横で、アヤカをぶら下げたままのエルも、静かにルルーの瞳を覗き込む。

ルルーの瞳には、恐怖も、寒さへの愚痴もない。あるのは、ただ一つ。コウを奪い、村を地獄に変えたティエラへの、そして自分自身の弱さへの、燃えるような怒りと決意だけだ。

 

「……ルルー。もう一度だけ聞くぞ。あそこには熊も幽霊もいねえ。いるのは、お前を食おうとした本物のバケモノだ。……本当についてくる気か?」

 

「……アタイが一番、この山の道を知ってる。……それに、アタイが行かないと、コウが……あいつが、暗い穴の中でずっと寂しい思いをするんだ。……アタイは、もう逃げない」


アキヤマとエルは、一瞬だけ視線を交わしました。エルの瞳がわずかに和らぎ、アキヤマは深い溜息をつくと、凍りついた髪をガリガリと掻く。

 

「……いいよ。君が一番、目が死んでない」

 

「……チッ。しゃあねぇな。ミヤビ、こいつが崖から落ちないように見張ってろ。……ルルー、道案内を頼む。ただし、俺の後ろから一歩でも出たら、即座に気絶させてでも村に送り返すからな」

 

「……っ! ああ、わかったよ! 任せな!」

 

ルルーの顔に、力強い笑みが戻る。

探偵事務所のメンバーに、小さな、しかし誰よりも熱い勇気を持った案内人が加わった。


 村からだいぶ離れた頃、雪は一向に止む気配がなかった。


「……ねぇエルぅ、まだぁ?なんか眠くなってきた……」

アヤカが今にも眠ってしまいそうだ。


「アヤカ寝ちゃダメ!死ぬよ!」

ミヤビが眼鏡を凍らせながら必死にアヤカの体を揺さぶる。


「うぅ…さみっ……これあいつの拠点に辿り着く前に死なねぇよな?」

アキラは巨体を縮ませながら言う。アキヤマは隣で放心状態だ。冬眠寸前といったところだろう。


「……おかしいな。ここら辺からウルフの匂いがするんだけど……」


エルはマフラーから鼻を出し匂いを辿る。


「……ふっ。感じる……体が震えているぞ(※寒さで震えてるだけ)……これは……そこだな!」


ザザンが大きな岩を指差す。


「……ただの雪じゃ……」

ミヤビがそう言いかけるとエルは迷わず岩を切った。

すると岩の下に何やら穴がある。


「……ビンゴ。ザザン、よくやったね」


「え、あ、フッ……僕は最初からわかってたさ!(マジかよぉぉぉぉ?!)」


「なんだぁ?穴見つけたのか?早く入るぞ。寒くて髪の毛がもはや動かなくなった」


アキヤマはそういうと真っ先に穴に入った。


「えっ、ちょっ!」


ミヤビが言いかけると地面が崩れて全員もれなく下に落下した。果たして穴の先には何があるのか。


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