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第2話:ウルフ

シートム学園はアザル街からさほど遠くない富裕層の住むプルトス街にあるので生徒も富裕層の人間が多い。そのためか校内はキッチリ清掃されていてとてつもなく広かった。


「ここが高校ってとこか。初めて来るけど中々広いな」


 エルは中学までは通いつめたが高校には入らず助手として働いた。アキヤマは高校に通わせようとしてくれたがエルにとっては自身の出生の謎を解明すること以外にはほとんど興味がなかったため高校には行かなかったのだ。


 (念のため高校生活の基本生活は勉強したけど…)


エルは結構勉強熱心だった。


「とりあえず学園長室に行かないと。学園長室は…」


エルは学校の地図を見た。


「何これ……第一学園長室、第二学園長室、第三学園長室……この学校学園長三人いるの?」


 第二学園長室、第三学園長室は一階に物置を挟んだところにある。第一だけなぜか2階。


「大丈夫?どこかに行きたいの?」


突然後ろから声がした。そこには髪をハーフアップに結んだ小柄な女の子が立っていた。


「学園長室に行きたいんだけど、どこの学園長室に行けばいいかわからなくて…」


「あ〜、ここいっぱい学園長室あるんだよね。学園長に会いたいなら第一学園長室にいるからそこに行けばいいよ〜」


彼女は笑いかけた。

「私アヤカ・クリスティーヌ!あなた転入生?」


アヤカは純粋無垢な瞳をしておりまるで犬のような子だった。


 (他の生徒には私が潜入で来たことがバレないようにしないと)


 エルは演じる。至って普通の女子高生を。


「私はエル。今日から入ってきたんだ」


「エルっていうのね!この学校とっても広いからよかったら私が案内してあげよっか?」


「本当に?ありがとう。アヤカ。じゃあまずは学園長室…第一の方に案内してくれる?」


「いいよぉ。えっとねぇ第一学園長室はねぇ」


 学園長室までの道中、アヤカはシートム学園のことについて教えてくれた。たわいもない話ばかり。


「あとはね、この学校実は出るの…」


「出るって2人目の学園長?」


「違うよ〜。この学園は一人しかいないし、、幽霊だよ幽霊!」


「幽霊?」


 現実主義なエルにとって幽霊とは正に無縁だった。


「幽霊というよりかはウルフじゃないの?あいつら変なわざを使う奴もいるのに」


「ウルフ」という単語を聞いた瞬間アヤカは少し驚いたがすぐに先程までの調子に戻り、


「それ、ミヤビちゃんにも言われたよぉ。こんな学園にウルフなんていないいない。あ、今度紹介するね。すごく賢い子なんだよぉ」


エルはアヤカが驚いた様子に気づいていたが深掘りするわけにもいかなかったのでそのまま流した。


「その子、本当に賢いんだね」


 そうこうしてる間に第一学園長室に着いた。


「じゃあね。私3年B組だからよかったら後で来てね〜」


アヤカを見送りエルは学園長室の戸を叩く。

コンコン…「失礼します」

エルは扉を開ける。

そこには学園長と思われる男がいた。立派な髭を生やしモノクルをかけている。


「アキヤマ探偵事務所より配属されました。エル・ピーダと申します」


「これはこれはっ、今案内役を向かわせようとしたのですが…」


「親切な子に案内してもらいました」


「なるほど…その子には感謝をせねば。申し遅れました。私はこの学校の学園長ジズル・マクラウと申します」


 挨拶もそこそこにして彼はエルを席に座らせお茶を出した。早速依頼の話をすることになった。

「依頼と言うのはですね…実はこの学園のとある事件についてでして…」


「事件というのは?」


「この学園の生徒が何人も行方不明になっているのです」


「行方不明…それなら保安局が動くはずですが」


保安局とはこのネオトピアシティの治安維持、住民保護、事件対応を担う機関だ。

「ええ。保安局の調査も入りました…しかし生徒がいつ、どこで行方不明になっているのかもわからず調査は打ち切りになりましてな…ここだけの話私はウルフの仕業ではないかと疑っているのです」


なるほど。わざわざ私を指名した理由がわかった。アキヤマ探偵事務所は規模は小さいものの多くのウルフ関連の事件を解決している。アキヤマは表立つことが苦手なので世間一般では知られていないが探偵仲介者の情報から依頼してくる人も少なくはない。アキヤマはダラシないが仕事はキッチリやる。そばで助手をしているエルが一番わかっていた。本当の探偵はアキヤマ、しかし大人が彷徨いていたら目立ちすぎる。あんなダラシない人間が学校をウロウロしていたら他の生徒に不審者扱いされかねない。


 「つまり行方不明の事件について目立たないように調査をしてほしいと…」


「ふむ。話が早くて助かる。どうかお願いしたい。もちろん必要であれば協力いたします。あと…」


 学園長は真っ直ぐに私を見る。

「危険だと判断されたら気にせずにお逃げください。ウルフが関わっているのなら、それは大変危険です」


「…わかりました。ですができるだけのことはします」


簡単な手続きを済ませエルは学園長室を出る。


 学園長は危機管理能力が高い。エルはそう思った。大半の人間はウルフを御伽話の存在だと思ってる。無理やりに。そうでもしなければ怖いから。ウルフは人となんら変わりのない存在。人の皮を被った怪物。彼らは昼間は人に紛れて生活をする。そして夜になると人を喰らう。まるで人狼ゲームの人狼のように。彼らは死なない。首を切られようが腕をちぎられようがすぐに再生する不老不死の怪物。彼らの唯一の弱点は核。核はウルフの生態エネルギー。言うなれば心臓のようなもの。個体によって核の場所は違う。核を破壊されれば崩壊を始め最終的に生きていた証拠は何も残らなくなる。なんとも虚しい生き物なのだ。そしてその虚しさがエルの心を打つ。核か心臓かもわからない確かに胸打つ鼓動。


 

 

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