表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/18

第16話:騒ぎと静寂

ドアが勢いよく開く

「よぉ。お前らこんなところにいたのか。」

アキヤマだ。


「もう終わったよ。おじさんどこに行ってたの?」

エルは剣を鞘に収めながら聞く。


「いやぁ、ちょっと強敵と戦っててな……とても頑固だったよ……ほんとに」


「トイレしてただけでしょ。何カッコつけてるんですか。」

ミヤビが突っ込む。


(トイレしてたんだこの人……ヒトが危険な時に……)


(アキヤマさんを翻弄する敵ってどんな敵だったんだろう……)

※アヤカはインカムを紛失しているのでアキヤマが本当に敵と戦ってきたと思ってる


(……誰?この人……)


「まぁいいだろ?おい、そこで潰れてるやつ。こいつの居場所、吐いてもらうぞ」

アキヤマはマイの旦那さんの写真をシャンデリアの下敷きになっているボスの顔に強引に押しつける。


「……ちっ。奥の部屋だよ。だがもう人間じゃないがな。ガハハハ……いでっ!」

笑うボスの頭をエルが鞘に収まった状態の剣でどついた。


「……ねぇやっぱこいつ斬っていい?なんかムカつくから」


今にも鞘から剣を引き抜きそうなエルをアキヤマが抑えた。


「やめとけ。そんなことしたらこっちが犯罪者になりかねん。とりあえず依頼者の旦那の身柄の確保が先決だ。」


「……あの、僕この場にいていい感じですか……?」

震える声でザザンが言う。


「おっと、なんか一人増えてんな。誰だ。一般人連れてきたやつ」


エルはアヤカを見る。


「この子、ザザンっていうの。すごく強いんだよ!さっきだって機関銃投げてシャンデリアをボスの頭上に落としたんだから!」


アキヤマはエルを見る。


「おい。ほんとかエル?」


「……ウン。ツヨカッタヨ」


その言葉にアキヤマはなんとなく察したがザザンの肩に手を置いて言った。


「よし。君、探偵助手として働く気はあるか?」


「え、まぁ確かにお金には困ってますけど……」


「じゃあ決定だ。今日から君はアルバイト君だ。時給は時価だがな。」


「ええっ?!なんすか時給が時価とか聞いたことないですよ?!」


「ザザン。この事務所に常識は通じないよ」

エルが諭す。


「もう辞めたくなってきた……」


「まだ働いてもないでしょ……」

ミヤビがインカム越しで突っ込むのをエルは聞く。

 

 エル、アヤカ、アキヤマ、そしてザザンは奥の部屋に向かう。そこには檻があった。檻の中に蠢く影がある。


「グルルルルルル……ガアッ!」

姿が歪な形をしたそれはエルたちに向かって威嚇していた。


「ひっ!」

ザザンが後退する。


「これ……もしかしてマイさんの……」

アヤカが言いかけて止める。


「……こりゃ、エグいもんだな。理性がイカれちまってるじゃないか……」

アキヤマが写真と照らし合わせながらその存在を見る。


「ミヤビ。分析できる?」


「……解析中。マイさんの旦那さんの生体反応と一致。人間とウルフの生体反応3:7」


「これでわかった。さっきのボスといい、どうやらλは人をウルフにしてしまう薬みたいだね。」


 その頃、ボスはシャンデリアの下敷きになりながらポケットを漁る。取り出したのは小さなボタン。


「へへ……。保安局に全部押収されるくらいなら……全部爆破してやる……!」

そう言って震える手でボタンを押した。


 一方でエルは檻のなかで暴れているそれを見つめていた。檻の中には無数の引っ掻き傷と血。それを見てエルの心は張り裂けそうだった。

 その時、エルの鼻をツンと刺す匂い。それはウルフのものではない。――火薬の匂いだ。


「みんな……このビルから早く出よう。嫌な予感がする。」

その予感は当たった。ミヤビから通信。


「……聞こえる?全員早くこのビルから出て。あと3分でこのビル爆発する……!」


「いやぁぁぁぁ!しにたくないーーー!」

ザザンが叫ぶ。


「……落ち着いて。まずこのビルの下まで3分以内に階段で降りるのは不可能だね。」


「えっ!それってまずいんじゃ……」

アヤカは不安な表情。


「いや、出口は一つだけじゃねぇ」

アキヤマが窓を見ながら言う。


「まさか、窓から飛び降りる気じゃないですよね……?」

ザザンが恐る恐る聞く。アキヤマはニヤッと笑って答える。


「そのま、さ、か、だ。よし飛び降りるぞ!」

アキヤマは勢いよく窓を開ける。


「はぁぁぁぁ?!死ぬって!絶対!今度こそ!」

ザザンが叫ぶ。


「大丈夫だよザザン。ちょっと骨が5、6本折れるだけだから。」


「その5、6本が嫌なんだよ!てかこの高さ……骨折れるだけじゃ済まないだろ?!」


「……爆発まであと2分。急いで!」

ミヤビが苛立ちながら言う。


「つべこべ言ってる暇はないよ。ほら、あの木に向かって飛び降りるんだ。そしたら多少はダメージも軽減されるはずだよ」


エルがビルの下に生えてある木を指差す。


「このままビルにいても死ぬだけだし、ザザン。飛び降りよう!」

アヤカはザザンの手を引く。


「わかったよぉ……窓から、ね」

ザザンは下を見る。高い。ザザンは立ったまま失神してしまった。そんなザザンをアキヤマは押した。

 ザザンは木にうまく引っかかり地面に無傷で着地した。というか落ちた。


「あいつ、すげぇ運いいな……」

アキヤマが感心してると次はアヤカが飛ぶ。アヤカもうまく木に引っかかった。


「よし、エル。次はお前だ。まぁ、お前は木を使わなくても着地できるか。」

エルはよく探偵事務所の3階から飛び降りてはアキヤマを困惑させていた。

エルが窓から飛び降りようとしたとき、ふと檻の中で唸っている変わり果てた異業ウルフを見る。

本当は彼を回収したいのは山々だったが檻は半ウルフのエルの力を使ってもびくともしなかった。それにこの状態の彼をマイは以前の彼と同じように愛することができるのだろうか。


「おい、急げ。もうあと1分だ。」

アキヤマは声をかける。エルは飛び降り見事に地面に着地した。続いてアキヤマが飛び降りる。アヤカとザザンは先に離れたところに避難していた。エルとアキヤマも続く。


 ドカーーン

ビルはアキヤマとエルが物陰に伏せたと同時に爆発した。木っ端微塵だった。


「……危なかったな。アキヤマがタバコに火をつける。」


ザザンとアヤカは

「生きてるよね?!」


「足!足ちゃんとある?!」

と安否を確認していた。


ミヤビはモニター越しにホッとしていた。

エルは呟く。

「……助けられなかった。」

 

アキヤマはそんなエルの頭に手を置く。


「いや、少なくともここにいる4人はみんな5体満足で生きてる。何も守れなかったわけじゃない。それに、あいつを助け出せてたとしてもあんな姿になっちまったんじゃあもう戻せねぇ」


アキヤマの声は落ち着いているが、どこか震えていた。

エルはふと思う。もし自分があんな風に狂ってしまったら?エルは胸が痛くなった。


「……帰るぞ。保安局が来たら面倒だ。」

アキヤマは言った。その言葉で全員立ち上がり探偵事務所のあるアザル街へと歩いて行く。



 スラム街の暗い路地。爆破から生き延びたボスがまだ回復しきれていない足を引きずっていた。


「……チッ。組織は壊滅しちまったがまぁいい。しばらくはスラム街の飲んだくれでも食って生きるか。あの連中……ぜってぇ喰い殺してやる。」


ボスが舌なめずりをしていると

 

「……そこまでよ。」

冷たい声。


「誰だ?!」


振り返るとそこには女が立っていた。黒いフードからプラチナブランドの髪を覗かせた女。――エーナだ。


「……λの情報の流出。無駄な犠牲。非効率極まりないですね……。もちろん、あなたの存在も……」


「野郎……!」


ボスが手を出した瞬間視界が反転した。いや、首が切れていたのだ。


「動かないでください。血が飛び散ります。今、締めますから……」


エーナが指先を少し動かすと、ボスの体はバラバラになり無機質な肉塊と化した。


「……不快ですね。」

エーナは動かなくなった肉塊を避けて闇の中に消えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ