第15話:λ
エルはいち早くボスの部屋前に辿り着いた。護衛たちは全員床に倒れている。(もちろん手加減はしているので死んでいない)
エルは扉を開ける。そこには黒いスーツ姿を着こなした目元に皺のある男だ。
「ふっ、来たか。だがお前たちはここで死ぬ。」
男は拳銃を取り出す。
「随分悪役っぽいセリフを言うんだね。あんたの手下たちは大半片付けた。観念してλについて話して依頼者の旦那さんを返してくれたら気絶ですませるよ」
男は笑った。
「あぁ、あの男か……。あいつならλの餌食にしてやったよ。儲かる仕事紹介してやったのにあの野郎、恩を仇で返しやがった……保安局の連中に助けを求めやがったのさ」
その瞬間エルの剣が走る。ボスは銃弾を撃ったがエルには当たらずボスの首スレスレでエルは刃先を止める。
「その人は生きてるの?死んでるの?返答によってはただじゃすまさない。」
エルが獣のように睨む。ボスは笑って言った。
「あぁ、生きてるよ。だがもう人じゃないがな」
「……どういう意味?」
エルが聞くとその瞬間、ボスはエルではなく自分の首に銃口を突きつけた。
「こういうことだよ。お嬢ちゃん。」
「ッ……!」
ボスは引き金を弾く。だが銃声音はならなかった。代わりにボスの様子がおかしくなる。咄嗟にエルは後ろに後退する。ボスの背中は丸くなっていき、爪は伸び、口が裂け人のものではない牙が生えてみるみる人の形を失っていく。
エルの鼻をツンとさす匂いがした。ポチの時と同じ異形ウルフの匂いだ。
エルは斬りかかる。が鋭い爪で防がれてしまう。エルは負けじとアキヤマ直伝の蹴り技を決めた。ボスはよろめく。
「へっ、嬢ちゃん随分と力が強いじゃねぇか。お前人間じゃねえだろ?」
ボスは異形ながらも
「……エル。その男の言うことに耳を貸しちゃダメ。」
ミヤビが制止する。エルは我に帰った。
「うん。ありがとうミヤビ。」
エルは剣を構え直した。
「とりあえず斬る。あんたを野放しにするわけにはいかない。」
エルはボスの間合いに入る。しかしどこかおかしかった。エルは離れる。
(……まずい。周りの極めて不快な匂いのせいで核の位置が掴めない……)
ボスはエルめがけて鋭い爪を振り下ろす。エルは剣で受け止める。
「……仕方ない。時間はかかるけど手当たり次第斬るか。」
一方その頃、アキヤマはトイレにいた。
「ぐおおおっ!やべぇ、組織壊滅の前に俺のケツが壊滅しそうだ」
その時ミヤビから通信が入る。
「もしもしアキヤマさん……って何してるの?」
ミヤビは慌ててビデオを切る。
「見ての通りだ。今俺は最大の敵と戦っている。昨日食べたガッツリニンニクマシマシ弁当とな……うぼっ……ミヤビ……集中するから切るぞ……」
アキヤマの通信が途絶える。
「あぁ、もう!どいつもこいつも!エルがピンチって時に!」
その頃アヤカとザザンは迷子になっていた。
「あれぇ、ここどこぉ?」
「敵くる敵くる敵くる敵くる敵くる……神様仏様ぁ!どうか僕に加護をくださぁい!」
「大丈夫だよ、ザザン!こういう時は人に聞けばいい。すいませぇぇん!」
返事はない。なぜなら先ほどアキヤマとアヤカたちが大暴れしたせいだ。
「ひっ!ちょっと静かに!敵が来るッ!」
ザザンが構える。
「大丈夫だよ、ザザン!敵さんたちもういないみたい」
アヤカのその言葉に安心したのかザザンは落ち着く。
「……ククク。どうやら僕の魂は助かったようだ」
ザザンが決めポーズをしているとアヤカが止まる。
「何か、音する。行くよ!ザザン!」
アヤカに手を引かれ、訳もわからずザザンはついていく。
エルはその頃、手当たり次第ボスの体に斬りかかっていた。しかし中々核が見つからない。
「流石に疲れたな……これじゃあ埒が明かない……」
「……エル!右から来る!」
避ける。エルは息を切らしていた。
「フフ……そんな手当たり次第斬ってばかりじゃ疲れるだろ?そろそろ決めさせてもらうぞ?」
その瞬間
「いやぁぁぁぁぁ!もうどうにでもなれぇぇぇ!」
「エル!来たよ!」
部屋中に機関銃の弾が撃たれ、白いブーメランがボスの体をかすめる。そして銃弾が当たったのかボスは倒れた。隙ができた。アヤカーーそしてもう一人のおかげで。
エルは首を傾げた。ミヤビもモニター越しで見てハテナマークを浮かべる。
「紹介するね!この子はザザン!ものすごく強いんだよ!」
「ここはどこだ……?!あれは……まさか幻影の使徒の刺客か?!」
「……ねぇ。何アイツ?」
「さあね……通信が切れたと思ったらアヤカのやつ……なんか変なもの連れてきたわね……」
その時、倒れていたボスが目を覚ます。
「クソ……増援か。まぁいい。全員蹴散らしてやる……」
ボスの体に撃たれたであろう傷はすでに再生している。
「まぁいいや。とりあえず3人で攻撃してたらいつかは当たるでしょ。ミヤビ。指示お願い。あとそこの厨二病くん。君、使えそうだから協力して欲しい。」
「誰が厨二病だ!僕は選ばれし黄昏の竜騎兵ザザンだ!」
「わかった。厨二病のザザンね」
ミヤビからの指示をエルがザザンとアヤカに伝えボスの体を回復される前に着実に破壊していく。そしてザザンが手を滑らせ機関銃をあらぬ方向に飛ばしてしまう。
「あぁぁぁぁっ!僕の神殺しの鉛弾がぁぁぁぁ!」
「……ダサっ」
ミヤビが突っ込む。しかしその機関銃はなんと天井に吊るされているシャンデリアに当たる。その拍子にシャンデリアがボスの頭上に落下。ボスは動かなくなった。
「……ねぇミヤビ。これ死んだ?」
「いいえ。生体反応アリ。ギリ生きてるわ。まぁこの調子じゃ動けそうにないわね……」
「すごーい!ザザン!これを見越して機関銃を投げたのね!やっぱりザザンは強いね!」
アヤカが目をキラキラさせる。
「えっ、あ、フッ、この封印されし右目が僕を導いたのさ (ほんとは偶然だけど)」
エルとミヤビは偶然であることに気づいていたが敢えて言わなかった。




