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第12話:平和の値段

「なぁおい。一人増えてねぇか?」

 

帰ってきたアキヤマが問う。ラーメンを食べたあと三人は探偵事務所に戻った。理由は明確。

 

「私、ミヤビ・サクラ。今日からこの探偵事務所の事務担当。」

ミヤビは目線をアキヤマに移さず画面上にプログラムを打ち込みながらいう。

 

「許可してねぇし。てか、電気のメーターえぐいぐらい上がってんだけど?!」

 

「仕方ない。電子機器類にとって電気は食事。」

 

「なんなんだぁ?この嬢ちゃんは?」

 

「アキヤマさん、あなた税金の申告適当すぎ。しかも2ヶ月前電気止められてるじゃない。」

 

「げっ、どこでそれを」


エルがポツリと言った。

「……あの時は大変だった。本気で家出しようかと思った。」

 

「アキヤマさん!ポチ見つけたよー!倒しちゃったけど!」

 

騒がしい。ミヤビが財政管理について問い正し、エルが家出を決意した瞬間を話し出し、アヤカが試験を遂行したことを報告する。

 

「わかった!一人ずつだ。一人ずつ意見を聞く。まずはエル。お前が家出すると街が半壊する。やめてくれ。」

アキヤマがそういうとエルは目線を移動させる。


「そしてミヤビと言ったな?採用だ。事務係が欲しかったからな。あとは……」

 

アキヤマはアヤカに目を向ける。

「アヤカ。お前は無事に厄介事を片付けた。採用だ。」

 

アヤカは目を輝かせる。

「やったあ!エル!採用だって!一緒に働けるよぉ!3人で!」

 

喜ぶアヤカをよそにエルはアキヤマに小さく話しかける。

「採用する気なかったでしょ?なのにどうして」

アキヤマは答えた。

 

「まぁ…あれだ。賑やかな方がいいだろ」

 

エルはアキヤマが何か隠しているように感じたがあえて深掘りはしなかった。真剣な表情の時のアキヤマは深刻な隠し事をしている。でも時がくれば話してくれる。今はその時じゃないだけ。エルもアヤカに隠し事をしているように。

 

「よっしゃ。明日にでも何か奢ってやろう。歓迎パーティーだ」

アキヤマは言った。エルは驚く。アキヤマが奢ることなんて基本ないからだ。

 

「おじさんが奢るなんて珍しいね」

 

「まぁな。結構勝てたんでよ。なんでも言え。回らない型の寿司だろうが回転しようが無問題だ」

 

アキヤマは笑い、ミヤビは早速書類整理を始めながら「適当すぎ……」とぶつぶつ文句を垂れ、アヤカは近所の食べ物屋を調べている。エルはそんな光景を見て少し微笑んだ。

 

(平和だな。でもこの平和は……)

エルがそう思いかけたとき事務所のドアが開く。入ってきたのはやつれた女性とそれを心配そうに付き添う派手なドレスとメイクに身を包んだこの探偵事務所の大家、パルコ・デアトだ。アキヤマ探偵事務所の隣にあるバーの店長だ。筋肉質な体がドレスで隠せてはいないが。

 

「コーちゃんたち、久しぶり♡」

 

アキヤマは絶句した。

「パー子……家賃の滞納なら今すぐ払うからどうか頼むどうか早く帰ってくれ」

 

ダラシないマイペースなアキヤマもパルコの前ではペースを乱す。

「んもう、コーちゃん(アキヤマ)がぜんっぜん家賃を返してくれないから私が仕事を持ってきてあげたわよ」

 

「ねぇ、エル。あのおじさんだあれ?」

 

アヤカが小さな声で聞く。

 

「元軍人の情に熱い女魂を宿したオネエ様」

 

「情報量が多い……」

ミヤビは苦笑い。

 

「あらやだコーちゃん、エルちゃん以外にも従業員雇ったのね!」

 

パルコは硬直するエルとアヤカとミヤビに視線を向けてウインク。

 

「パー姉、久しぶり。バー友会の集まりどうだった?」

 

「あらよかったわよ〜。街まで行ってきたからこれエルちゃんたちにお土産ね。そこのお二人さんもよかったらどうぞ♡」

 

パルコはそういうとドーナツが12個入った箱を渡す。

 

「これ、街で人気のドーナツじゃないですか、!ありがとうございます」

 

「うわぁ、!どれも可愛い。ありがとう!パー姉さん!」

 

エルとミヤビとアヤカはドーナツを頬張る。

 

「うふ。若いうちはねたくさん食べないと」

パー子はウインク。

 

「なぁおい。お前たち。団欒はいいがお客さんほっぽりだしてるぞ」

 

アキヤマは依頼人にお茶を出しながら言う。

「それで、依頼内容は?」

 

女性は震える声で言う。

「夫が……帰ってこないんです。夫が突然急に凶暴になって毎日私に……」

 

「DV……ですか?」

ミヤビが聞くと女性はこくりと頷く。そして上着の袖をまくる。そこには青い痣がたくさん刻まれていた。

 

「もともとあんな人じゃなかった…もっと家庭を大事にしてくれる優しい人だったんです……会社からリストラにあってから主人は毎日仕事を探していました……ある日いい仕事を見つけたとかで、そこから変になっていったんです。気性が荒くなって毎日暴力を……その仕事の内容も頑なに教えてくれませんでした。……ただ帰ってくるたび服から鉄の匂いがして……」


その瞬間エルは鼻を鳴らした。


「そうか……わかった。人探しだな。おい、三人とも。仕事だ。ミヤビは情報集め、エルとアヤカは手当たり次第当たれ。アケミ、お前はその女性と一緒にいてやれ」


「ドーナツで体力復活したから頑張る」


「探偵らしい仕事来たー!」

 

「調査は任せて。あ、ドーナツもう一個ほしい。」


「ふふ。私のバーでメンタルケアよ。お嬢さん」


こうして騒がしい調査が始まる。



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