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マイベストユートピア  作者: 米ノ香
学園の七不思議編
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第1話:依頼

「宅配便でーす」


小鳥の囀るさっぱりとした朝に宅配が届いた。


「ご苦労さん」

そう言って郵便を受け取るのはアキヤマ探偵事務所所長のコージ・アキヤマだ。気だるげな目にボサボサの髪。服装はお気に入りの黄銅色のチョッキに緑色のネクタイをつけている。ダラシない見た目ではあるもののダンディーな顔立ちがそこそこ女性ウケが良くこの探偵事務所の部屋を借りられたのはこのおかげだった。


アキヤマは手紙と中ぐらいの大きさの段ボールを持って事務所内に入った。事務所内ではアキヤマの助手バイトとして働くエル・ピーダが溜まりに溜まった洗い物を片付けている。エル・ピーダ。癖っ毛の髪を一つにまとめ上げ、赤と水色のオッドアイ。彼女は「半分」人間ではない。人間からは敬遠される存在ウルフの血を半分受け継いでいる。ウルフとは人を喰う化け物だ。彼らは人の皮を被り人間に紛れて生きている。エルは自分の出生がわからない。記憶がないから。彼女は出生の謎を知るため、そして何より生きるため探偵助手として働く-今は洗い物をしている少女にすぎないが。


「おじさん…洗い物溜めすぎ。これじゃ依頼人にまた評価下げられる。」


「いやー、すまんすまん。後でたい焼き買うからよ。そんなことより仕事の依頼が入ったぞ。お前さん宛ての特別な依頼だとよ」


「たい焼き……あ、やだ。指名の依頼なんて大体碌でもないんだから。却下。私はいないと伝えてください」


エルはこの前自分指名の依頼で散々な目に遭ったのだ。

この探偵事務所の部屋の大家通称パー姉からエル指名に彼…いや彼女の営むバーのアシスタントとして働く依頼を受けたのだが、なんとバニーガールの衣装を着させられたのだ。


「……じゃあアカシ屋のたい焼き20個」


アキヤマの言葉を聞いてエルは振り向いた。

「さーて仕事仕事」


エルは洗い物の手を止めて適当に手を拭きながら依頼書を受け取る。たい焼きのために。依頼書の宛名にはこう書いてある。

アザル街二丁目十九番地の十一アキヤマ探偵事務所エル・ピーダ様

エルは手紙を開く。


「拝啓エル・ピーダ様。あなた様に折り入っての依頼がございます。内容は後日直接お話しいたしますのでもし依頼をお受けしていただけるなら同封した制服を着てお越しください。お返事お待ちしております。シートム学園 学園長ジズル・マクラウ」


「もしって…制服送りつけてくる時点でほぼ強制的じゃないか……」


それでもエルはたい焼きのためにと返事の手紙を書いた。


 あれから3日後、エルは学園の制服を着て出かける準備をしていた。

ドンドン…

 扉が叩かれる。アキヤマだった。


「よっ。ずいぶん似合ってるな」


アキヤマは部屋の椅子に腰掛けた。


「何?おじさん」


エルは癖毛を直しながら少し不機嫌そうに答えた。寝起きだからだ。


「依頼料の振り込みは9割お前さんで1割俺でいいぞ」


「?!」

エルは聞き逃さなかった。アキヤマはこれまで依頼料の分前についてはそこまで気前が良くなかったからだ。


「急にどうしたの、?頭でも打った?それともパー姉ととうとう、、?」


エルの妄想をアキヤマが遮る。

「変な妄想はやめてくれ。頭はいたっていつも通り。それにパー子は今バー友会の集まりとかで留守さ。それより…」


アキヤマは気だるげな顔つきを変えた。


「今回の依頼、どうも危険な匂いがする。武器は常に携帯しておけ」


こういうときのアキヤマの勘は必ず当たる。


「ウルフが絡んでるってことね。わかった。気をつける」


 エルは鞘に収められた剣を持つ。エルが記憶を失った後に目が覚めたときから一緒にあった剣。そして剣の腕前はかなり良かった。記憶を失う前は剣豪だったのだろうかと彼女は思っていた。

 学園は寮生。一時的な調査だが深夜の調査も考えられるため、大きなキャリーケースに小型の鞄と大荷物。エルは小型の鞄に携帯、財布、小物入れポーチを入れる。制服のコートにはメモ帳、シャーペン、そしてお気に入りの懐中時計。懐中時計とスマホの時間を照らし合わせて時間が合っていることを確認して入れる。


「じゃあおじさん。もう行くから戸締りするよ」


「あぁ。俺もこれから仕事だからもう行く。気をつけてな。あと、」


アキヤマは眉を顰める

「絶対に知られないようにな。お前がウルフの血を持つことを」


「わかってる。今までずっとそうしてきたから。」


 エルはアキヤマを見送り自分の部屋の鍵を閉める。

「さて久しぶりの仕事だ。」

 この時、エルは思いもしなかった。この依頼でエルの人生が大きく変わることに。


 

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