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3.残滓
悠真は膝をつき、必死に陽介の体を支えた。その顔は青ざめ、額には玉のような汗が見える。
指先が痙攣するたびに命の火が弱まっていくのがわかった。
「陽介! 返事をしろ!」
声を張り上げるが、返ってくるのはかすかなうめき声だけだった。
ふと――悠真の視線が、陽介の口元に止まる。
唇の端に、濁ったゼリー状の塊がこびりついていた。
乾きかけたその塊は、酒場で見たあの忌まわしい“疑似食品”に他ならなかった。
「……やっぱり、これを……」
喉がひゅっと締まる。
悠真の脳裏に、かつての陽介の姿が重なった。
――高校時代。陽介は教室の窓際で、日焼けした顔に笑みを浮かべながら「将来は人の役に立ちたい」と語っていた。
部活動の帰り、腹を空かせて二人で屋台の焼きそばを分け合った夜。
「大人になっても、俺たちならきっと食いっぱぐれなんかないよな」
そう笑って、当然の未来を信じていた。
その陽介が今、食べ物に困り、疑似食品にすがっている。
エリート国家公務員でさえ、満足に生きられない現実。その落差が、悠真の胸を鋭く抉った。
「陽介……」
拳を握りしめる手が震える。
目の前にあるのは、親友の夢や誇りを食い潰し、最後に命までも奪おうとしている汚れた残滓。
それはまるで、社会の理不尽そのものが形をとって転がり、嘲笑う顔を浮かべているように見えた。




