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鎌と繭 〜送る者と未来の希望と。  作者: チギレタ=モゲル
エリア2「見捨てられた街」
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あれもしょくぶつ!これもしょくぶつ?



オフロード車での旅はいいものだ。

潤沢な資源を大量に運搬できるし、

何よりどんな悪路も身体が跳ねるだけで

疲労感無しに走破できるってのが良い。


「おしりびりびりする…これきらい」


…生身のエトにとってはダメらしい。


外の景色としては、

廃墟の街に少しずつ緑が出てきていた。

これは多分、

俺が把握している植物園が近い証拠だと考える。

結構思いの外長い道のりだ。


車中泊を何度もするうちに

エスがしみじみ感じるのは、


車でこの距離の植物園に、

生身のエトが到達できるわけないだろう…!

と言う過去の自分をぶっ飛ばしたい衝動だ。


まぁ実際受肉前の魂の状態の死神は

割と鳥のような速度で空を飛べるので

あんまり距離が離れていないように感じたのだが。



「エスー」

「どしたー?」


他に走る車も気配もないので、

道なりにハンドルを切るだけの簡単な操縦。


たまにこうやって話しかけてくるエトの声が

ドライブ中のbgmとなっている。


「しょくぶつえんって、なにがあるの?」

「そーだな…まずエト、植物って何か知ってるか?」

「?」


「だよなぁ…」エスは外の景色を指差す「ほらあれ、茶色くて緑の帽子被ってるみたいなのがあんだろ?」

「ある!」

「あれが【木】だ。植物の一種だな」

「き!」

「んで、俺らの車が踏みまくってるこの下に生えてる緑のは【草】だ。これも植物の一種だな」


「え、痛くないの?」

「痛いかもしれないが我慢してもらおう。俺らの道を塞いでる訳だから、これでおあいこってやつだな」

「むー。」


エトは身を乗り出して車が通った後の地面を

気にしている。


「頭ぶつけるかもしれないからちゃんと座っとけー」

「おしりがびりびりする」

「…仕方ねぇな。もうちょいしたら休憩にするか」



乗り始めには気が付かなかったのだが、

実は、この車には空気チェッカーが搭載されていた。

こんなご時世、外を走るのも命がけだった訳だからな…


人類が滅んでくれて助かった点の一つとしては、

有害な排気ガスをほとんど誰も出さなくなって

植物達の自浄作用が追いついた事だろう。


そのおかげで、ガスマスク嫌いなエトが

何も気にせず外に出て歩き回れる。


ここら辺は非常に空気が良い。

エスも伸び伸びと身体を伸ばして、

目的地の方向を見る。


うん、まだ何も見えねえや。


「エス〜!黄色!赤色!」

「んー?」


はしゃぎ回っているエトの元へ歩いていくと、

そこは元は管理された花畑だったのだろうか。

奇跡的に種を繋ぐ事に成功したのか、

パンジーやマリーゴールドのような鑑賞花が

一面に咲き乱れていた。


「すごい、きれいな色だね!」

「食うなよ。これも植物の一種だな」

「あ、ええと…これは知ってる!はな!」


「お前…花知ってるのに植物知らなかったのか…」

「パパの友達に、これを沢山持ってる人がいたの」

「へぇ、良い趣味してる研究者も居たんだな…」


エトはキラキラと瞳を輝かせて、

地面に咲いている花に触れたり、

顔を近づけて見つめたりしている。



エスはそれを見ながら…



何とはなしにおもむろに、タバコを取り出した。

ライターで火をつけて一服。


うむ。いい青空だ。


屋外で空気も良いし、

どんな味だったのか思い出すために

どっかで吸ってやろうと思っていた。


「ふうう……」


おぁぁ、沁みるぜ。

タバコはかれこれ200年ぶりくらいだな。


「うえぇ、何してるのそれ。変なにおい。それきらい」

「へへ、これも植物の一種だな!」

「ぜったい違うよ!地面に生えてないもん!」

「これは植物の葉を加工して作られた薬だ、薬」


「…くすり?……エス、どこかわるいの」

「いいや?…ほら、元気な時に飲む薬もあんだよ…」

「……………」


エトの表情がだんだんとジト目になっていく。


「しまって!今すぐしまって!!それやだ!!」

「うわぁあわかった分かった!消す!今すぐ消すよ!」


「分かった!それお酒だ!エスは好きだけどエトは変になっちゃうやつだ!!だからもうダメ!やらないで!」

「要点を射てるのがまた何と言うか……おいやめろ!待てってお前!違うから捨てるなよ!?頼むから捨てるなよ!?」


いかん、酒の一件からエトの我儘に

結構拍車がかかってしまっている。

子供の扱いと言うのは本当に難題だ。


当然エスにも甘やかしている自覚はあるので

締める所は締めていきたいのだが、

いかんせん最後に子供の面倒を見たのは

大体2、3000年前ぐらいだ。

長命な死神と言えど流石にそんな昔のことは

朧げにしか覚えていない。


それにエトは、爆音と強い叱責に対して

なんらかのトラウマを持っているようで…

故にそんなに強くも出られないのがまた、

困った所なのだ。


結局今吸っていたタバコの箱は何とか死守して、

鎌の変形機構の中の隙間に隠す事にした。

これの開け方はエトが知るわけがないからな。


…あとの数箱は、酒の時みたいに捨てられるかもなぁ…

あぁ、もったいねえ。


そのまま二人して肩で息をしながら

車に戻り、昼食を取る。

ちょうど良いから固定真空保存サラダを

開けてやる事にした。


「何これ!植物!…植物だよね!?エス!?」

「おう、食べられる植物、野菜だ!」

「食べて良いの!?」

「おう、しかも体にめっちゃ良い。そうそう、お前が見つけてきた調味料の一つ、【ドレッシング】の出番だな…!好きなのをかけて食べようぜ!これは美味いぞー!」


「わぁ…わぁ……!!」


エトが目を輝かせて喜ぶ姿は

何度見ても癒される。

喜ぶ事は何でもしてやりたいが、

ワガママ癖を治すためにどうすれば良いか

エスの中では目下審議中だ。


正直、

こんな状態で保存されてる青野菜なんて

食べられるものなのか心配だったが…


どう言う保存手段を使っているのか知らないが

驚きのシャキシャキ食感の野菜達。

それに缶トマトを乗せたりして

なかなかヘルシーな昼食になったのだった。


「そういえば、エトがいた所にも植物あったよ!」

「花の事だろ?」

「それじゃなくて、緑の…こう…もけもけして、あちこちにくっついてたやつ!」

「あぁー。…苔かぁ…」


苔。

ん?

苔って植物だったっけ?

胞子出すしキノコの一種なような気もするが…

待て、その論法だとキノコも植物判定に…?

コケよ。お前、どっちなんだよ教えてくれよ。

コケ?コケコッコ?


「エス、すごい色んな顔してる」


「…エト。苔はな…たぶん、植物だ」

「やっぱり!」


とりあえずエトの手前、

真偽はさておき、結論を出す事にしたのだった。


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