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恋は忘れがたきもの

作者: 御伽人

  『恋は忘れがたきもの』


 ずっと心が痛んでいる。酒のボトルを呑みながら、公園に行く。学校は辞めずに置いた。テストで何とか進級できたからだ。家でしか酒は呑まないが、最近は学校までに酒を呑み、ガムを噛んで、難なく普通の生徒になる事も多くなってきた。

 家以外の場所で飲んでいた方が呑んだくれみたいで、少し自分にも酔う。

 一緒にいるはずの人がいない。もう、違う人と婚約していた。それでも、私は付き合っていた。相手は会社の同僚の人みたいだった。高校一年の頃の話だ。付き合ったのは二人。中学時代に一人と、この元彼だけだ。

 ただ何となく私から身を引いた。想いを保とうとして別れた。傷口を最小限にする為に。

 それ以来一人で生きるようになった。風俗嬢でもAV女優になっても構わないと思った。そのくらい、私は心の想い出は枯れてしまい、淋しさから酒を呑むようになった。

 あの頃は綺麗だった。二人で一緒に車でデートに行った。ずっと傍にいる事は難しい。でも、もしかしたら、私を選んでくれると思っていた。儚い幻想へと変わって行った。

 ――彼氏が何を考えていたのか。今は元彼だけど、そこが知りたい。

「何で私と付き合っているの?」

「たこ焼食うか?」

「いつもはぐらかす」

「事情があるからだよ」

どんな事情かは知らないけど、とにかく楽しかったのでそれで良しとした。高校生になって友人も出来て、こうして毎週日曜日はデート日となった。結婚するなら、この人がいい。そうまでも考えて、付き合っていた。

 いつか、結婚する。女なら憧れてもいいはずのイベントだ。当然私も期待した。でも、付き合って半年間で状況は変わった。

 哀しそうな彼氏の顔。結婚の日取りが決まったんだなと思った。私はこう言った。

「恋愛は今日で一区切りをつける。私の分まで幸せになってね」

キスすらしなかった。彼氏も無言でデートをした。もう終わりだと思ったのは、正解だった。傷が出来た。この瞬間一人で生きて行こうと思った。先の事は分からないけど。何故かそう思った――

 私は高校二年になった。夏の雨は私を焦がす。ちょうど別れた時期に近い。いつも、っ私は、愚痴ばかり心で思っている。いつまでも消えない。でも、そろそろバイトしようかなと思った。昔デートした飲み屋に、年齢不詳と書いて、(20です)と書き込んだ。落とされるかなと思い、帰ろうかなと思ったら、

「いいよ。夜中まで働くけど、大学は大丈夫かい?」

「もう単位をほとんど取りましたから」

そう言って、学校に行った後に、シャワーを浴びて、飲み屋でバイトする事になった。何だか昔に戻ったみたいで、久しぶりに明るく思えていたから、いいとしよう。

 そして、酒を断った。素面でいけるまで回復した。あくまでも公園以外では呑まないようになっただけだが。

 学校も真面目に行きだした。荒れた心が先行きを照らした。そして、高校三年になり、ナンパされた男と一緒に暮らし始めた。高校を卒業したら、結婚したいと言ってきた。過去だけを振り返ってもいけない。私はそれを約束にした。

 バイト先でナンパをされると思っていなかった。きっと、ずっと独りでは生けて行けない。また明るい私が戻ってきた。公園にも行かなくなった。二人で酒を呑むだけでよくなった。酒より恋を取った。

 高校を卒業したら、結婚する。飲み屋でバイトしながら、そう思った。もう夏休みは過ぎていた。後半年が独身生活かと思った。特別やる事がないんだけど。幸せなんて思えなくても、独りよりは幸せになれる確率が高くなる。だから、結婚しようと思ったんだ。そう思えた事が、もう強くなれたんだなと思えた。別れから学び新しい生活を始めようとするために。


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