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父と母

ほぼ毎日ケンタッキーフライドチキンにかぶりつく子供を持つ父親の定番装備は、高級な車と若い美人のお姉さんだ。私の親父の定番は、ブレーキの壊れた自転車と部屋の隅に鎮座するガラクタパソコン。


親父の宝物は、天北市秋葉街で8000円で手に入れた中古パソコンだ。私が字を覚え始めた頃、親父が忙しい時に質問をすると、親父はいつも根気強くその古いパソコンを指差して言ったもんだ。


「自分でネットで調べてみろ!」


だから私も自分でネット検索するようになった。


学校に通うようになって、他の奴らが家でネットを使う時、親に囚人でも見るかのように監視されているのを知った。あいつらの親は口を揃えて、ネットには悪い奴らがたくさんいて、良い子が見るべきじゃないものがあるって言うんだ。まさか、自分たちが悪人だって気づいてないのか?自分たちが作った子供に見せちゃいけないもんで、他人の子供を傷つけながら、自分たちが作ったおとぎ話で自分の子供を騙してるんだ。


大人ってやつは本当に…でも、親父はそんなことしない。


パソコンの授業になると、あいつらは家のパソコンの豪華さや、ネットゲームのクリアレベルを競い合った。自慢話が終わって、私の前で披露する番になると、よくからかってきた。「真名んちにはパソコンないだろ!だって真名んちは貧乏だから。真名のろくでなしの親父は何にも買ってくれないんだ!」そして、どっと笑い出す。


そんな時、私はある国の王女様の言葉が正鵠を射ていると思った。「子供だって無垢じゃない、人間は生まれながらに原罪を持っているのよ!無罪の人は天国に行くべきだって言うじゃない!」


「人間の悪癖は子供が大人になるにつれて身につくものなのか、それとも大人が子供を悪くするのか」って問題は、「卵が先か鶏が先か」って問題と同じくらい答えが出ない。


たぶん両方とも責任があるんだろう!


「子供は無垢だ」なんてのは、少なくとも一面的な見方で、子供が悪さを覚えるのを助長する疑いすらあると思う。


親父はプラスチック製の玩具の銃を何丁か持っている。親父は子供の頃、戦争ゲームのマニアだったらしい。祖父母がいない時は、こっそり私に銃の撃ち方を教えてくれた。いつも「後で役に立つ」って言ってた。


後で役に立つ?何に?親父もずっとBB弾銃で遊んでばかりいたが、後で役に立ったためしはなさそうだ。


まあ、親父の指導のおかげで、標的が私の銃口の下で倒れるのを見ると、達成感みたいなものは感じた。


最初は、親父は私の遊びを見ていて、幼くて力の弱い私に弾を込めてくれた。うっかり銃で怪我をしないように気も配ってくれた。基本操作を教え終わると、後はもう知らんぷりだ。私はただ銃のボルトを引くのが大変なだけで、残りの弾込め、照準、発射はちゃんとできた。7、8歳になる頃には、百発百中とは言わないまでも、速射と概略射撃なら、玩具の拳銃で25メートル先の半身標的を想定して、百発八十中はできた。


親父の指導で、玩具の銃の手入れや修理も覚えた。


当時は、銃は遊ぶためのものだと思ってた。後で銃の主な用途は人を撃つためだと知ったのは、ずっと後のことだ。


銃は最初は狩りのために使われ、後に人間が獣性をむき出しにした時に人を撃つために使われるようになったと言う奴もいるかもしれない。私はそういう奴らは、言葉通りの意味で頭が足りないか、さもなければ何か企みがあるんだと思う。動物を撃つ?動物は人間によって絶滅させられ、残ってるのは高等な二足歩行動物だけだ。


それに、動物に比べたら、人間の方がよっぽど凶暴な存在だ。そう考えると、何か企みのある奴らがそんなことを言う意味と苦衷がわかった気がする。


「母」という偉大な言葉は、私にとっては偉大じゃない。私にとっては、娘を捨てて他の男と駆け落ちした若いお姉さんに過ぎない。そして、世間がよく言う「偉大で無私で美しい母親」は、私にとっては「おばあちゃん」にこそ相応しい言葉だと思う。親父の話だと、実は親父は結婚したくなかったらしい。だが、3つの誘惑に駆られて、この「まじでまじでまじでまじで重要な決断」をしたそうだ。


1. 祖父母のうるさい小言にどうしても耐えられなかった。

2. 自分が死んだ後、誰も遺体を片付けてくれる人がいないのを心配していた。

3. 実写版『綾波育成計画』を試してみたかった。


時々、母が親父を捨てた決断は、物質的な意味では正しかったと思う。二次元の世界に生きているだけの男と一緒にいたら、豊かな物質生活は送れない。


でも、なんで女は男に頼って生きなきゃいけないのかわからない。人体の構造から見ても、男女の個体差は社会で言われているほど顕著じゃないはずだ。男ができることは、女もほとんどできるはずだ。それなのに、なんであんなに綺麗な若いお姉さんたちは、毎日何の仕事もせずに、太ったおじさんたちに頼って生きているんだろうか?


たぶん、理由はこうだ。彼女たちは太ったおじさんたちとキスをするだけで、大きな家に住んで、綺麗な玩具車を運転できるから。


こんな楽なことができるのに、なんで彼女たちは損をしていると言うんだろうか?


どうやら大人は嘘をつくのが好きだってことは本当らしい。


私も親父に、あの若いお姉さんたちみたいになってもいいかって聞いたことがある。親父は、それはやめた方がいいって言った。


理由を尋ねた。


親父は言った。「普通の親は子供に『大人になればわかる』『そんなみっともないことを言うな』って言うもんだけど、私は君が小学1年生の今、教えておくべきだと思う。」


それは「タダより高いものはない、若いお姉さんたちも苦労してるんだ、だからやめておきなさい」ってことだ。


まだよくわからなかったので、おばあちゃんにこの質問をした。


おばあちゃんは聞いて烈火のごとく怒り、いつも優しいおばあちゃんが私に怒鳴った。そして、ものすごく厳しいことを言った。最後には怒って親父のところに行った。


これで親父は大変なことになった。おばあちゃんはしゃもじを持って親父を追いかけ回した。


しばらくして、私はあの母と呼ばれていた女が、大きな家と綺麗な玩具車が欲しくて、他の太ったおじさんと駆け落ちしたことを知った。


近所のおばさんやおばあちゃんたちはよくため息をついていたもんだ。


「真名ちゃんはかわいそうに、お母さんに捨てられて。」

「まあ、あのろくでなしと一緒に暮らしても長続きしないわよ。逃げたのは正解よ。」

「真名ちゃん、この前お母さんが太ったおじさんと一緒に綺麗な車に乗って家に帰っていくのを見たわよ。彼らはとっても大きくて綺麗な家に住んでいるのよ!」


私はそんなことはどうでもよかったんだけど、当時の私は人々の悪意を感じ取っていた。


後で親父に、あのおばさんたちは何を言ってるのかって尋ねた。


親父は気にせず、「何でもない、気にするな」って教えてくれた。


おばあちゃんはそれを聞いて怒って、ご飯も食べずに私を庭に連れ出して、人々に会わせた。そして、親父に私を家まで送らせた。


その後、私はあのおばさんたちのような言葉を二度と聞かなくなった。おばあちゃんは近所の噂好きなおばさんたちを家々訪ねて、ひどく叱りつけたらしい。


あのおばさんたちはみんなおばあちゃんが怖い。


学校に行ってから、母親がいないことは他の奴らに笑われることだって知った。私は気にしなかったけど、理由はわからなかった。


でも、それ以来、私は「大きな家」「綺麗な車」「太ったおじさん」「母」という4つの言葉に良い印象を持っていない。

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