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「わらわの家具や」

同じ人工子宮から五番下の妹が、生まれた時に私は叫んだ。


昔、人間というものは人の女性の腹の中を蹴って生まれてくるものだったのよ。

けれども、人間が地球から逃げ隠れた月の裏側では、人工子宮の内壁を蹴って生まれてきているわ。

生殖機能は生まれた時から、宇宙の放射線によってダメになりやすいから、生まれた時にはすぐに取られちゃうの。

だから、血縁や家族というものはないの。

同じ人工子宮だったり、同じ遺伝子の組み合わせや似た組み合わせで、 作ったグループを作り、それを『一族』としたわ。

わらわの一族は、月の裏側でも高い権力者たちよ。

理由は簡単。

わらわの一族は、体の中に機械がほとんどないから。

月の裏側では、どれだけ機械に頼らず人工で天然の体に生きていけるかで、地位が決まるわ。

指一本ぐらい機械が当たり前の一族だわ。

そして、その一族の中でわらわは完璧な人間として生まれたのよ。

五体満足五臓六腑も満足な体で、わらわは生まれたわ。

月の人たちは、狂喜乱舞したわね。

それはもう、この国の宝のようにわらわは扱われたわね。

作られた時に使った遺伝子情報に、科学者が多かったからか、わらわはわがままの知りたがりになったのよ。

月の人たちは、わらわにあまくてね。

望んだものや知識を教えてくれたわね。

たくさんの本やデータの閲覧を許可してくれたわ。

その過程でわらわは『家族』を知ったのよ。

一族とは違ったグループのようだ。いろんな家族があって、書き方もされていたわ。

一族のように集まって、生活するようね。

けどそれだけじゃなくて、家族というものは時に人のの心を苦しめて、時に癒す、守り、強くすることもあるような書かれ方をしていたの。

(家族を知りたい)

わらわはそう思ったわ。

家族というものは特別な縁でできるの。

『好き』という能動的な感情による縁や同じ親が産むや家族が連れてくる受動的な事情でつながる縁など、さまざまで説明が長くなるわね。

月の人たちはわらわのことを『好き』だけど、家族ではなく、まるで偶像崇拝で信仰に近い『好き』な感じよ。

だから、私が望む家族じゃない。

だったら、同じ親を同じ人工子宮に言い換えたら、わらわの妹や弟はもう四人いることになったのよ。

兄や姉はいない。

わらわが生まれてきた人工子宮で一番目の子だ。

妹や弟たちに会いたい。

そう思ったわ。


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