64 今日から二年生です!④
「そうだ」
さっき、思いついたばかりではないか。
落ち込むにはまだ早い。
まだ、諦めちゃだめだ。
「やっぱり魔素かもしれない。次は魔素を経由してみよう」
――『探知』
無詠唱で魔法を発動させると、閉じた瞼の裏に、点々と光るものが見えた。赤、緑、白、青。それらはゆっくりと流れている。あるものはゆったりと曲線を描き、またあるものは何かにぶつかって跳ね返る。
見えているのは、空気中の魔素の流れ。今跳ね返った緑色の風の魔素は、木製の机にぶつかったものだろう。
目を閉じたまま下を向くと、自分の足の形がわかる。血液と一緒に体の隅々を巡っている魔力は、足にも流れている。青と白の混ざった光が、足の形で、空気よりも速く流れているのがわかる。
顔を上げた。目を閉じたまま、祈るように唱える。
「『魔力移動』」
自分の右手のひらから、白い光が飛び出した。
それは空中を漂う白い点を繋ぐように線を伸ばしていく。
そして――
「やっっっっっっっっっっっったあああぁ!」
白い光は、左手のひらに吸い込まれていった。
反射的に目を開ける。
「成功だ! できた! やったあああ!」
ひとり、部屋中をぴょんぴょん跳ね回る。
できた。できた。できた。
頭の中を、その三文字が埋め尽くしていた。
今までの研究が、人生が、報われた気がした。
「そうだっ、水も! 二属性一気にやってみないと!」
そしてもう一度、
――『探知』
「『魔力移動』!」
移動させる魔力属性が増えても、意識することはさっきと同じ。
青と白の光の線を、時には平行に、時には交差させながら伸ばしていく。
まるで、夜空に光の絵を描いているみたいだ。
あるいは、星座を考えたひとも、こんな景色をイメージしていたのだろうか。
星、円、十字、菱形、平行四辺形。正方形に、長方形に、直角二等辺三角形。
夜空に、知っている限りの図形を描いていく。
そして、二本の線を、同時に左手に当てた。
光は、抵抗することなく左手に吸い込まれていく。
成功だ。
今になって、やっと、実感が湧いてきた。
私は成功させたんだ。
達成したんだ。
『魔力移動』をもっと制御できるようになれば、戦闘での実用化だって、十分見込める。
やっとだ。
ここまで、長かった。
目を開ける。
光を失った右手が、そこにある。流れる魔力も減っている。
けれど反対に、左手を流れる魔力が増えている。
まだ、検証するべき項目はいくつもある。
たった今、成功させたばかりなのだ。まだまだ調べなければいけない事だらけだ。
自分が持っていない属性でも使えるのか。
他人の体内の魔力を動かせるのか。
難易度はどれくらいなのか。魔力消費はどこまで抑えられるのか。
移動の効率はどれだけなのか。空気中で失われる魔力がどれだけあるのか。
一瞬考えただけでも、次から次へと湧いてくる。
けれど今は。
とりあえず今は、全力で喜んでもいいだろう。
検証は明日以降に回そう。
「やっっっっっったあああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
また飛び跳ねる。
部屋の中を、ぴょんぴょんと跳ね回っていると。
ガンッ!
バサバサバサッ
「いっっったあああ?!」
机の角に膝を打ち、ついでに、床に積んでいた本を盛大にぶちまけて転んだ。
「お嬢様! だから部屋を片付けてくださいとあれほど言ったじゃないですか、もう!」
ハンナがドアの隙間から顔を覗かせた。
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