63 今日から二年生です!③
私が作ろうとしている魔法『魔力移動』は、完成すれば間違いなく最上級魔法に認定されるだろう。
身体から魔力を取り出して、別の物へ移動させる。その考え方は、すでに完成している『物に魔力を込める魔法』となんら変わらない。
けれどこの最終段階では、その魔法を人体に対して行使しようとしているのだ。
完成すれば、世界を揺るがす魔法になるだろう。なにしろ、人から人への魔力の受け渡しが可能になるのだから。
魔力が尽きかけている人に魔力を与えて回復させるのはもちろん、戦闘や戦争で前衛部隊に継続的に魔力を送り続けて魔力切れを防いだり、複数人の魔力を合わせて、一人ではとても扱えないような大きな魔法を発動させることもできる。今までは『魔力がなくなればそこで終了』だった魔法の常識を、たやすくひっくり返してしまう。
危険だ。とってもとっても危険な魔法だ。
けれど私は、どうしてもこれを開発したかった。
きっと、最終決戦で必要になるから。
私は、シナリオ通りの人生を歩んでいない。
だから、原作で回収していた魔法や技術、さらにはヒロインが毎日女神様に祈ることで手に入れた魔法なんかも、私は使えない。いくつかは自分で同じものを作ったけれど、特に女神様の魔法なんて、作れるわけがない。
扱える魔法が違うのだから、当然、魔物との戦い方も変わってくる。あんなに小説を読み込んでいた私でも、原作通りの戦い方はできない。
ゆえに別の戦い方を探す必要があった。
それが、私が魔法研究をする意味のひとつでもあったのだ。
『魔力移動』が完成すれば、戦いの最中に、みんなから魔力をもらうことができる。もちろん、個人の魔力量に合わせて加減はするけれど、それでも個人個人がそれぞれの限界まで使うより、ずっと効率が良いはず。
だって、私は光の魔力保持者なのだから。
闇の魔力を持つ魔物にもっとも効果的なのは、光の魔法なのだから。
他の属性の人から魔力をもらって扱えるかは、まだわからない。けれどなんとなく、できるんじゃないかと思っている。
だって、水と光属性の私でも、火属性のハンナの魔力がこもった釘を扱えたのだから。
なんとかできるはず。というか、なんとかする。
「もっと、まっすぐ? ゆっくり、空気中の魔素を経由して……」
失敗の原因を考察する。
「いや、酸素とか窒素の方がいいかな。物質だし」
こういう時、前世の学校で習った知識が役に立つ。空気に含まれる元素や、石に含まれる鉱物。使用魔力量を計算するための数学。
「『魔力移動』」
再び唱える。
右手を包む光を、丁寧に空中に運ぶ。さらに伸ばして、左手の方へ――
――――チカッ
順調に細く伸びていた光は、瞬いたと思ったらすぐに消えてしまった。
また、失敗だ。
もう、残りの魔力が少ない。あと二回くらいならできるが、三回目はぎりぎりだ。うまく制御できなければ、魔力切れになってしまうかもしれない。
――今日もまた、駄目なのだろうか。
思考がどんどんネガティブになっていく。自信をなくしていく。
自分自身での実験など、早く成功させなきゃいけないのに。早く次の検証に進まなければならないのに。
なのに、成功しない。手がかりがまるで、掴めない。ことごとく失敗する。これまで開発してきた魔法とは、段違いの難しさだ。
どうしたらいいのだろう。
このままでは、魔獣に勝てない。最終決戦で負けてしまう。カトリーアに、ユーリさまに、怪我をさせてしまう。危険な場所で危険な戦いをさせてしまう。
――――そんなの、私は嫌だ。
そうだ。私はやらなきゃいけない。
この研究を完成させないといけない。
魔力はあと二回分。まだできる。
まだ、何か――――
お読みいただきありがとうございます!
次話は1月14日(水)18:00に投稿します。更新通知が来るので、ぜひブックマーク登録をしてお待ちください!
「面白いな」「続きが気になるな」と思ったら、ブックマーク、評価(☆)、リアクション、感想、イチオシレビューをよろしくお願いします!作者が飛び跳ねて喜びます。
↓↓↓新作始めました!
『星になれ、戦姫』
〈短編版〉https://ncode.syosetu.com/n4491li/
〈連載版〉https://ncode.syosetu.com/n2980lk/
最強王女と護衛騎士の主従恋愛のお話です。よろしければぜひ。




