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62 今日から二年生です!②





「えー、明日には一年生も入学してきます。その時、先輩らしい姿を見せられるよう、より一層自覚を持って過ごしましょう。二年生の皆さんにとっては初めての後輩ですね。自分が先輩にしてもらって嬉しかったことを、一年生にもしてあげられるようにしましょう。三年生は、学園生活最後の年です。一年を楽しみつつも、それぞれの進路に向かって、より一層精進してください。みなさんの学園生活が良いものになることを願っています」


 やっと、学園長のお話が終わった。

 どこの世界でも、校長先生のありがたいお話というものは、退屈なものであるようだ。前世でも今世でも、だいたい同じような言葉を繰り返し聞いている。


 ともかく、始業式はこれで終わり。今日は始業式が終われば自由時間だ。つまり、寮に帰って魔法研究ができる。


 ということで、私は解散の号令がかかるなり、走って学校の門を飛び出した。

 カトリーア達には、「早く帰ってやりたいことがあるから、先に帰るね」と登校の時に伝えてある。


「ハンナ! 私、今から研究するから!」


 ドアを開けるなり、私は叫んだ。

 部屋の奥からハンナが姿を現し、


「はいはい。お嬢様のことですから、そうおっしゃると思ってましたよ。床が見えている部分は掃除してあるので、どうぞごゆっくり」


と呆れた顔で言ってくる。


「ありがとう、ハンナ!」


 私は制服のジャケットを脱いですれ違いざまにハンナに渡す。

 そしてそのまま研究部屋に飛び込み、ドアを閉めた。


 ふう、と息をつく。ここからは、静かに集中する時間だ。


 去年の二月に第二段階だった研究は、今はもう第三段階、完成間近まできている。

 『物に魔力を込める魔法』は、もう簡単に扱えるようになった。相変わらず木には使えないままだが、剣や包丁などの金属、それと石や岩には込められることがわかっている。


 私個人の見解では、魔素は電子のようなものなんじゃないか、と考えている。金属は電気を通すけれど、木は電気を通さない。電気を通す物と通さない物があるのと同じように、魔素や人間の体内を通った魔素である魔力も、通す物と通さない物があるのではないか、と思ったのだ。では石や岩はというと、それらには鉱物が含まれているから魔力を通すのではないだろうか。実際、アクセサリーの宝石にも魔力を込めることができたし。


 研究の第三段階では、もう『物に魔力を込める魔法』についての研究を飛び出し、もっと規格外な事を研究している。

 成功するかもわからない。けれどもし成功すれば、この魔法の呼び方が変わる。成功しなければ、『物に魔力を込める魔法』のままだ。なんて言いづらいんだろう。発動する時にいちいちこんな長い詠唱をするのは面倒だ。私は無詠唱で使えるからいいけれど、他の人はそうはいかない。


 第三段階は、これまでやってきた研究の応用。

 でも、それだけではない。『放出』や『発射』、さらには『治癒』といった、既存の他の魔法の技術や考え方の応用でもある。 

 できるかどうかなんて、私にもわからない。理論的にも証明できない。けれど、できないという証明もまた、できないのだ。やってみないとわからない。


「よし……」


 私はブラウスの袖をまくり、気合を入れた。

 両手のひらを、十センチの隙間を開けて向かい合わせにする。

 その隙間に意識の全てを集中させて、もう口に馴染んだ言葉を叫んだ。


「『魔力移動』!」


 同時に、右手が淡く光を帯びる。

 その光は、真っ直ぐに上に向かって伸び、そして――


 天井にぶつかって、弾けて消えた。


 ――また失敗だ。


 体内の魔力が、ごっそり減ったのを感じる。そこらの魔法の比ではない。魔力量の多い私はまだまだ平気だが、おそらく平民の平均魔力量くらい減ったのではなかろうか。

 失敗するのも、もう何度目だろう。いくら私の魔力量が多いといったって、やはり人には限界がある。魔力も、使えば減る。いつかは枯渇する。完全に尽きれば、回復まで何日もかかる。下手したら何週間も、だ。むやみに失敗ばかりしてはいられない。


お読みいただきありがとうございます!

次話は1月12日(月)18:00に投稿します。更新通知が来るので、ぜひブックマーク登録をしてお待ちください!


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