61 今日から二年生です!①
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ミモザの黄色い花が、春の風に揺れている。
季節はあっという間に過ぎ、入学して二度目の春がやってきた。
私達は今日から、二年生だ。
といっても、やることは去年とあまり変わらない。
授業を受けて、勉強をして、魔法の練習をして、実技試験、筆記試験。友達と遊んだり、私は研究だって続ける。
ただし去年とと違うのは、魔法科実技の授業がよりハードになることだ。その例の一つが、実戦演習。
実戦演習では、捕獲して弱体化させた魔物を学園内の演習場に連れてきて、生徒達が一丸となって戦うのだ。実戦でも魔法が使えるようになることを目的として開催されるイベントで、去年までの死傷者はゼロ。魔法科の先生達が総出で監督・援助してくださるのだそうだ。
しかし、原作の『まじらぶ』では、この実戦演習で魔物との最終決戦が行われる。死者は出なかったが、負傷者は何人も出てしまった。
私は、魔物に勝たなければいけない。最終決戦で負ければ、世界は今よりもっとひどくなる。魔物が多く発生するようになり、人が住める場所が限られていく。魔物自体もどんどん強さを増していくだろう。そうなると、また戦って退治するのは困難になる。最終決戦に勝利することは、人生をシナリオ通りに進めていない私でも、やらなければいけないことなのだ。
だから私は、魔法の研究をしている。開発をしている。より強くなるために。大切な人達をこの手で守るために。
魔物に最も有効な光魔法を使えるのは、この学園では私だけなのだから。
「アリア! おはよう!」
ホールに向かう道を歩いていると、カトリーアが後ろから走ってきた。
「私はA組だったわよ。アリアは?」
「うそっ、私も!」
クラス替えについては、昨日手紙で通知が来た。寮の各部屋宛てに届けられるのだ。
「本当?! やったっ」
「また同じクラスだね!」
そこでやっと、殿下達が姿を現した。
カトリーアが私を見つけて、殿下達を置き去りにして急に走り出したようだ。令嬢たるもの、はしたないから走ってはいけません……なんて、私が言えたことではないな。
「アリア嬢もA組? 俺達もだよ」
「そうなんですか! ではまた、みんな同じクラスですね!」
「嬉しいなあ。な、ユーリ」
殿下がニコニコと言う。
ユーリさまに向ける視線が心なしかあたたかーい気がするけれど。なにかあるのだろうか。
不思議に思ってユーリさまを見ると、ちょうど目が合ってしまった。バチッと音がして、心臓が跳ねた気がした。
「あ、ああ。そうだな」
ユーリさまは一瞬固まり、視線を逸らして曖昧に答える。しかし、ちらちらと私を見ては、目が合ってまた視線を逸らす。繰り返しだ。
殿下がふふっと笑った。その隣でヘレンドさまも、「あー察し」と言わんばかりの顔をしている。
なんとなく気まずくなった私は、話題を変えることにした。
「そういえば、今年は体育祭じゃなくて文化祭だよね。何をしようかな」
「やっぱり、定番の劇じゃない?」
「でも模擬店もやってみたい。かき氷とか、焼きそばとか、ワッフルとか」
「うーん、確かに模擬店も捨てがたいわ……。悩むわね」
私達は、前世、高校生の時にも文化祭を経験している。本や漫画でもたくさん読んだし、それらの中では、登場人物に感情移入して、一緒に文化祭を楽しんだりもした。
しかしだからといって出し物がなんでもいいわけではなく、経験があるからこそ、こだわりたくなってしまう。
「まあまあ、文化祭まではまだ半年もあるんだから、ゆっくり考えればいいんじゃない?」
二人して思考の渦にはまりかけていたところで、殿下の声がストップをかける。
「そうだな! それに、うちのクラスにはアリア嬢がいるんだからさ、何か魔法を使った展示とか出し物も面白いんじゃないか?」
「確かに……。アリアを中心に私達で魔法を披露していけば、きっとすごい出し物になるわ。A組は、学年でも優秀な生徒を集めたクラスのはずだもの」
「そうだな。ヘレンドの案も、なかなか良いじゃないか」
「わ、私がリーダーをするんですか?! 荷が重いですっ」
なぜかまとまりかけている話に焦る。私にリーダーシップなんてものはかけらも無い。
「ひええぇぇぇ」と慌てていると、ユーリさまが真っ直ぐこちらを見つめているのに気がついた。バチッと視線のぶつかる音がする。
「大丈夫だ。俺達がついてる」
確かに、将来国を引っ張っていく王太子殿下と、その未来のお妃様と側近方がついてくださるのは心強いんだけれど!
そうじゃないんだ! 貴方達がいても、やっぱり私が中心なのには変わりないでしょう。それが無理なんだって……。
「そうよ! 任せて、アリア!」
「おう! アリア嬢ならできるぞ! 全力でサポートするから心配するな!」
どうしてみなさん、私をそんなにも信頼してくれるのでしょうか……。
私はこっそりとため息をついた。
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