44 姉妹デート⑤
週明けの月曜日、街で買った髪飾りを身につけて登校すると。
「あらアリア、お揃いね」
カトリーアが私の席まで歩いてきて言った。
「うんっ。一昨日はありがとうね、カトリーア」
満面の笑みを返す。本当に、一昨日は楽しかった。嫌な予感もしたけれど、それを余裕で上回るくらい満ち足りた一日だった。
「よかった、良い顔になったわね」
「?」
「貴女、先週はひどい顔をしていたのよ。難しい顔して唸って、『行き詰まってます』って全身からオーラが出ていたわ」
「え、うそ」
「本当。何に困っていたのかは知らないし、貴女のことだから魔法のこととかその辺りだろうとは思うけど。貴女から話そうとしてこない限りはこちらから聞くこともしないけれど、流石に心配するわ。息抜きも必要よ」
真剣な表情で、カトリーアは話す。
「はい……。ご心配をおかけしました」
「ラギさま達にも心配かけてたんだからね。貴女はもう、私達の大切な仲間なんだってことを、よく自覚なさい」
「まさか、悪役令嬢に『仲間』だなんて言われる日が来るとは思わなかったな」
「私は私、貴女は貴女。そうでしょう?」
「……うん、そうだね。悪役令嬢でも、ヒロインでもない。ありがとう、カトリーア」
「どういたしまして。あと、何か新しい魔法でも開発したらその時は、私にも見せてよね」
「わかった。どんなのがいいか、考えとくね」
二人、額を近づけて静かに笑む。相手からの愛情たっぷりの笑顔は、それだけで心を満たしてくれる。
そこへ、ユーリさまが歩いてきた。私を見て、ふっと微笑む。
「アリア嬢。良い顔になったな」
やはり皆、気づいていたのか。
ユーリさまにも、心配をかけてしまっていた。
「ご心配おかけしてすみません。もう大丈夫です」
「それはよかった。……本当に、ひどい顔だったから」
「うう……」
落ち込み俯いていると、ユーリさまが何かに気づいたように「ん、」と声を漏らした。
「その髪飾りは、一昨日に?」
「え? あ、はい、カトリーアとの思い出に」
一瞬、何のことだかわからなかったが、すぐに理解して後頭部に手を伸ばす。
興奮したハンナによって編み込みのハーフアップにされた髪に留められた、大きな石のついたバレッタに指先が当たった。
「そうか。よく似合っている。……可愛いな」
柔らかく微笑んだその瞳に、どきりと心臓が跳ねた。
「えっ、あ、ありがとうございます……」
「ああ……」
顔が熱い。恥ずかしさで彼の方を向く事ができず、私は俯いた。なんとか言えたお礼も尻すぼみだ。
そんな私達を眺めるカトリーアが、によによと笑っているのが空気でわかる。
「ユーリさま。その髪飾り、私とお揃いなんですのよ。お互いのひ・と・み・の・い・ろ・で」
「んなっ……いや、そういうものではない、決して!」
目だけでちらりと彼を見ると、何故か顔が少し赤い。
「ちょっとカティ、浮気? ダメでしょ、僕がいるのに」
殿下まで会話に入ってきて、周りが一層騒がしくなる。
「ふふ、良いでしょう? 私のはアリアのローズクォーツ、アリアは私のアメシストよ。良いでしょ?良いでしょ?」
「くっ。カティのいじわる、僕が妬いてるの分かって言ってるでしょ」
「ええ勿論」
「あーもう、羨ましいなあ。今度、僕とも行こうね。きっと店長がエメラルド用意してくれてるから」
満面の笑みで殿下が言う。
一昨日の店長との会話を思い出したのか、カトリーアはみるみるうちに真っ赤になった。
「カティ、可愛い」
こうして、始業前の短い時間に、ほんのり赤く染まったタコが三匹誕生したのだった。
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