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41 姉妹デート②





 アクセサリーの店も、例に漏れずキラキラしていた。

 王都のものは全てキラキラしているが、その中でも、お菓子屋さんと並んで特に輝きが強い気がするのは、売っている物も輝いているからか。

 ……それにしても、このお店、やけに高そうなのだが。

 そんな私の困惑を知らないカトリーアは、意気揚々とドアを押し開けた。


「いらっしゃいませ」

「こんにちはー」

「これはこれはバートネット様! お久しぶりね。学園生活はいかが?」

「まあ、それなりよ。そんなことより今日は、この子を見てほしいのだけれど」


 店長らしき人とも、気後れせずペラペラと話している。

 その店長も、リボンの髪飾りに同じく大きなリボンのイヤリング、リボンのペンダントをした、男性だ。貴族向けのお店らしく執事と似たタキシードを着込んでいるが、髪は長いし全身にふりふりリボンがついていて、この世界においては十分に変な人である。


 私はなんとなく落ち着かなくて、店内をキョロキョロと見回した。

 従業員は店長の他に三人で、全員が色違いのリボンを身につけている。

 店中、キラキラしたアクセサリーで埋め尽くされている。飾り付きピンからイヤリング、ネックレス、リングまで、その種類もデザインも様々だ。色とりどりの輝く石たち、繊細なカット、細かい装飾……。

 そこではたと気づいた。


 ――ここのジュエリーたち、実はものすっっっごくお高い物なんじゃなかろうか。


 もっとも、今までお茶会や夜会などに参加していなかった引きこもりとはいえ、私は筆頭伯爵家の令嬢だ。価値の高いジュエリーもそれなりの数を見てきているし、希少な石も本で読んだので知っている。魔法で用いることのある宝石は、大抵が高いものばかりだ。

 だがしかし、そんな私でもリアルではなかなかお目にかかれないような宝石が、ここにはずらりと並んでいる。

 天下の公爵令嬢サマであるカトリーア行きつけのお店ということを考えると別におかしくはないのだが、どう見ても伯爵家ごときではなかなか手が出せないような代物も中にはあるわけで。


 私は、興奮したように早口で私の紹介をしているカトリーアの袖を、つんつんと引っ張った。


「つまりね、魔法の腕がもうものすごくて……! っと失礼、どうしたの、アリア?」


 カトリーアが不思議そうに見つめてくる。会話を聞いている限り、彼女のオタク気質のような本性が出かかっていたので、タイミング的にも今話しかけたのは丁度よかった。本人は気づいていなさそうだが。

 軽く呆れのため息をついて、彼女の耳元で囁く。


「どうしたの、じゃないって……! ここ、すっごく高そうなんだけど。そちらと違って、うちは伯爵家だよ?こんなジュエリーたち、実家への請求でも払えるかどうか……」

「心配しなくても私が払うから大丈夫よ。というかそもそも、ここの宝石そんなに高くないから。破産するほどじゃないから。毎年ここで数個買っているけど全然なんともないから」


 それは貴女が公爵令嬢だからなのでは……?


 当然のように頭に浮かんだ疑問から目を背けつつ、澄ました顔のカトリーアに言い返す。


「でもそれでも、カトリーアだけに払わせるのは申し訳ないって。せめて半分は持たせて」

「大丈夫って言ってるでしょ。そもそもこのデートに誘ったのは私だし。行くお店決めたのも私だし」

「いいから払わせて」

「連れてきたのは私だし私が払うわよ」

「いいから」

「でも私がしたいことだもの」

「つべこべ言わず、払わせろ?」


 私がにっこり笑って言うと。


「わかったわ、でも半分だからね」


 カトリーアは苦い顔で、やっと頷いた。


「どうしてそっちが渋々なのかわからないんだけど」

「それにしてもアリア、なんか性格変わった? 前は押し切るようなこと、しなかったのに」

「貴女の妹は、強引という言葉を覚えたのですよ。頑固な姉を説得するには便利な手段でしょ」

「……そうね。負けてしまったわ」


 カトリーアは肩をすくめると、店長の方へと向き直った。


「お嬢様方、お話は済んで?」

「ええ、お待たせしたわね」

「それじゃ、こちらへいらっしゃい。今日もサイコーに似合う物を選んであげるわ」

「頼んだわよ」


 店長は、バチっと完璧なウィンクをしてみせた。


「まずねぇ、バートネット様! 貴女やっぱり美人よねぇ、羨ましいわ。そのぴちぴちぷりぷりのお肌、ツヤツヤの茶髪、アメシストの瞳! 今日の石は何にしようかしらん、あぁ迷っちゃう!」


 店長は楽しそうに言い、悶えるように身をくねらせている。周りをひらひらと舞うハートマークが見えてきそうだ。

 カトリーアは慣れた笑みを浮かべているし、店員達も何も言わず澄ました顔でアクセサリーを運んでいる。私一人だけが、気まずい笑みを浮かべていた。

 この店長にはどう対応したらいいのだろう。こういう趣味の男性がいることはなんとなく知っているし気持ち悪いとかは思わないけれど、なにせ経験不足なのだ、テンションに困る。ついていけない。


「ねえねえバートネット様、何色の宝石をお求め? 貴女の瞳のアメジスト? 王道のダイヤ? それとも殿下のエメラルドもあるわよ、ラブラブの奥様?」

「そ、そんなエメラルドなんて今日はいいから!」


 殿下ともこの店を訪れたことがあるのだろう、揶揄われてカトリーアは慌てている。


「それより今日は、この子と同じピンクを頂戴!」

「あらあら、心変わり? 浮気かしら?」

「違うからっ、わかってるでしょ。揶揄わないで」

「これは失礼、ちょっと興が乗ってしまって。オーケー、ピンクね。それなら丁度、入荷したばかりのヘアアクセがあるのよ。既製品だからお持ち帰りできるわよ。おーいルナちゃん、一昨日届いたローズクォーツ持ってきてー」


 店員の一人が、こくりと頷いて店の奥へと消えていく。


「なるほど、ピンクは後ろのラティーア様の瞳だったのね。仲良しじゃないの」

「ええ、彼女は私の大切な妹のような人よ。一番仲良しなの」


 カトリーアの『一番』に、心が跳ねる。


お読みいただきありがとうございます!

次話は11月26日(水)に投稿します。更新通知が来るので、ぜひブックマーク登録をしてお待ちください!


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