4 異世界転生③
「あの、……お二人はどういうご関係でいらっしゃるのですか?」
困惑をなんとか頭の中でまとめ、口まで持っていって、押し出す。
その問いに答えてくれたのは、カトリーアの左にいた、青い瞳に黒縁眼鏡をかけた男子だ。ピシッと立った襟に、美しく形の整えられたネクタイ。知的で真面目な雰囲気を全身からこれでもかというほど醸し出している。
日本では一般的だった黒髪が、異世界ではこうも懐かしく思えるものなのか。
「あれ、ご存知なかったですか。殿下とカトリーア嬢は、婚約者同士でいらっしゃいます」
「そうだったのですか。なにしろ、幼い頃から領地にいたもので……」
婚約したのは知ってる。当時は領地までも噂が流れてきたし、小説でも婚約していた。それに、貴族として、王室からのお知らせは把握しておかなければならない。
そうじゃなくて、私が知りたいのは。
「めっちゃラブラブなんですよ。見ているこっちがしんどくなるほど!」
「ちょっと、ヘレン! 初対面の子に変なこと吹き込まないで!」
「はははっ! 事実じゃんか! おいおいなんだその顔、怖い怖い。あ、そうだ、俺はヘレンド・ヴァーネスと申します」
濁流のように早口で話す赤髪赤目の彼は、両隣の眼鏡男子と焦っているカトリーアに軽く睨まれ、肩をすくめた。王子はそんな三人を見て、楽しそうにはははと笑う。
赤目の彼の、第二ボタンまで開け放たれた襟元には、ネクタイが結ばれていない。いくらアレンジ可能とはいえ、入学式なのにそんな服装、許されるのだろうか。
「ヴァーネス辺境伯家の方でしたか。隣国との間にある、『女神の山』はとても美しいとお聞きしました。いつか見てみたいと思っているのです」
「それなら山の近くに妹が暮らしている屋敷があるから、夏休みにでも。きっと妹も喜んでくれると思いますよ」
「妹さんがいらっしゃるのですか?」
「ああ。……キャラじゃないから敬語やめていい? 妹とは双子で、病弱だから空気の良い山で過ごしているんだ。同い年だからきっと仲良くなれると思う」
「わあ! ぜひ行ってみたいです!」
「女神の山はクローバーもたくさん生えているそうですよ。っと、申し遅れました。僕は、ユーリ・ハントベアと申します。以後お見知り置きを」
真面目そうな眼鏡くんは、ハントベア公爵家の長男だった。現公爵が引退したら、宰相になる人だ。小説では登場頻度が低いから、すぐには分からなかった。
どうして初日から、こう重要人物にばかり出会ってしまうのだろうか……。
これからの学園生活、本当に、気が重い。
「お会いできて光栄です、ユーリさま。よろしくお願いします」
話しているうちに、入学式の会場であるホールに着いた。周りにはちらほら人が見える。こんなに早く登校する人なんかいるんだと驚いたが、私も他人のことは言えない。
ホールに入ると、五人で並んで椅子に座った。私は一番端、カトリーアの隣の席だ。
あれ、でもよく考えてみれば、王太子達とは出会ってしまったけれど、悪役令嬢はいじめてきそうにないし、それどころかなぜか王太子とラブラブなようだし、これなら私も思う存分魔法の研究ができるような気がする。なぜか原作のシナリオから少し変わっているのが、少し気になるけれど。
きっと、大丈夫だ。いじめられたり恋に落ちたりなんて、しないだろう。彼らは良い人達だ。いじめなんて、しそうにない。王子と悪役令嬢もラブラブらしいし。出会ったばかりだけど、そう思えた。
そんなことよりも、早く魔法の授業が始まってほしい。原作では光魔法を使うシーンばかりが描かれていたけれど、私の二つ目の属性である水魔法もたくさん使いたい。領地には使い手が少なかった風魔法もこれからは頻繁に見られるのだ。
そう思うと、とても興奮してきた。頭に血がのぼってくらくらしたが、昔のように倒れなかったのでセーフだ。
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