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悪役令嬢が溺愛エンドを迎えた世界に、魔法オタクが転生したら  作者: じうかえで
第一章 ヒロインらしくしなくてもいいよね?
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30 二人の秘密②


「ふぅ……。えっと、歳よね。私も死んだ時は十七歳だったわ……って、これ、さっきも言わなかったっけ」

「趣味は?」

「ピアノと読書」

「ピアノ弾けるんですか! かっこいいなぁ……。姉がピアノ得意で、憧れだたんですよ。続いて、好きな本は」

「もちろん、『まじらぶ』! アリアさまにはお姉様がいらっしゃったのね。私は一個下の妹がいて、その妹と一緒に読んでたわ。妹も『まじらぶ』好きだったの」

「じゃあ、得意教科は」

「数学よ。アリアさまは苦手だったわね。……そういえば、アリアさま」


 ポンと手を打って、カトリーアさまは言った。


「何ですか?」

「聞いてみたかったのにさっき聞くの忘れてたわ。アリアさまの、前世でのお名前は何というの?」

「名前ですか?」

「そう。どんな名前だったのかなーと思って。ヒミツのお話をする時に、前世の名前で呼んだら楽しそうじゃない。万が一お部屋の外に聞こえても、すぐには私達だってわからないでしょう?」


 カトリーアさまは、唇に人差し指を当てて、いたずらっ子のようにふふっと笑った。ヒミツのお話というのは、『まじらぶ』や前世の話のことだろう。


津門呉羽(つとくれは)って名前でした。大津市の津に門、呉服に羽で…………カトリーアさま?」


 カトリーアさまの様子がおかしい。

 名前を呼んでも返事がない。


 彼女は驚いたように目を見開いて、口元を両手で押さえて固まっている。その瞳に、みるみるうちに涙が盛り上がり、「くれは」と、唇が微かに震えた気がした。

 その涙をひとしずく零して、彼女は私に両腕を伸ばし、ゆっくり、でもしっかり、私を抱きしめた。

 そして涙声で、途切れ途切れになりながらも言葉を紡ぐ。



「私の、名前は、津門、綾羽」

「――!」



 それを聞いた途端、私の目にも、熱い涙が込み上げてきた。


 ――こんな、奇跡のようなことがあったなんて。女神様には、たくさん感謝しないといけない。


「――お姉ちゃんっ」

「呉羽……っ。ごめん、ごめんね、先に死んじゃって、ごめん……!」

「っ私こそ、約束、守れなかった。ちゃんと、周りと向き合うって、約束したのに……! 私、自分の殻に閉じこもってばっかりで……」

「何言ってるの。楽しかったんでしょ、文化祭。クラスみんなと仲良くなれたんでしょう。それで十分よ」

「でも私、生きられなかった! お姉ちゃんが死んでから、一年しか」

「それでもいいの。十分、十分よ」


 二人、お互いを抱きしめ合って、泣きじゃくる。もう、貴族とか刺繍とか関係なかった。ひたすら、小さな子供のように声を上げて泣き続けた。


「綾羽、私、わたし……寂しかった……!」

「ごめん、呉羽、ごめんね……。一人にして、ごめん……」





 ひたすら泣きじゃくって、お互いのブラウスをぐしょぐしょにしてようやく、二人とも落ち着いた。


「どうして、私ってわかったの?」

「最初はね、数学無理っていうのが呉羽と同じだなって思ったの。それから、そういえば呉羽も魔法とかまじらぶも好きだったなって思って。そう考えたら、ちょっとした仕草とかも似てるなって思い始めたのよね。でもまさか、こんなことがあるなんて、思いもしなかったけど」

「私も、綾羽に似てるなって思ってた。……あっ、敬語」

「いいわよそんなこと。友達なんだし、正式な場以外は誰も気に留めないでしょ」

「カトリーアさまがそう言うなら……」

「ほら、その『さま』もいらないわ」

「これは、ほら、もし正式な場で呼び間違えたらダメだからっ」

「そういうことなら許してあげ、ないわよ。夜会でもお城でもどこでも、王太子妃権限でタメ口おっけい! にしてあげる」

「それ職権濫用じゃない?」


 バチッとウインクして決めポーズをとったカトリーアと、二人くすくすと笑う。

 目を赤く腫らした二人の顔は、花が咲いたように綻んでいたのだった。



***




お読みいただきありがとうございます!

次話は明日18:00に投稿します。


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さらに、感想・イチオシレビューも書いていただけると、作者が飛び跳ねて喜びます。


何卒よろしくお願い致します!!


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