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悪役令嬢が溺愛エンドを迎えた世界に、魔法オタクが転生したら  作者: じうかえで
第一章 ヒロインらしくしなくてもいいよね?
29/67

29 二人の秘密①



***



 翌日。

 明日には殿下達が来るということで、今日はクッションやコースターに刺繍をしようという話になった。

 右手で糸を通した針を摘み、すいすいと手を動かすカトリーアさまの動きには、慣れが見て取れる。彼女曰く、「昔、王妃教育で散々やったから」だそうだが、それだけでなく、彼女自身の努力もあるのだろう。それに対して、私はというと、針を刺しては抜いて、刺しては抜いてを繰り返している。


「どうしたらそんなにうまくできるんですかっ」

「うーん、練習? 私は王妃教育で散々やらされたから」


 顔を顰めて言うカトリーアさま。やはり、王妃教育にはあまり良い思い出がないのだろう。


「そんなことより、アリアさま! 今日は二人きりでしかできない話をしたいの」


 なぜかハイテンションのカトリーアさま。

 ハンナは現在、リンさんに公爵家のメイドの仕事を教えてもらっていて、部屋にはいない。彼女曰く、公爵家使用人のスゴ技術を学びたい、とのことだ。


「何ですか、二人きりでしかできない話って」

「それはズバリ! 前世の話よ!」

「まじらぶの話ではなく、ですか?」

「もちろん! 私が聞きたいのは、前世の人生の話よ。だって語れる人がアリアさましかいないんだもの。懐かしさに浸りたいわあ。電子レンジ、この世界にも欲しいわよねぇ」

「毒見された後のご飯って冷めちゃってますもんね。で、前世の話ですか。いいですよ。誰もいませんし」

「じゃあ早速! 質問形式でいい?」

「どうぞ」


 そう言うと、カトリーアさまは瞳を爛々と輝かせて顔をずいっと近づけてきた。

 刺繍の指導も忘れない。


「ちなみにアリアさま、そこは左じゃなくて右よ。こう刺すの」

「なるほど。ありがとうございます」

「じゃあまず質問その一! アリアさまは、亡くなった時何歳でしたか!」

「十七歳です。いきなりその質問からいくんですね」

「ってことは、高校二年生? 私も一緒だわ! 生まれた年は?」

「平成二十年です」

「あら、じゃあ私の方が少しお姉さんね。じゃあ、住んでたとこは?」

「東京です」

「これも一緒ね! 私達、どこかで会ってるかもしれないわね」

「だったら面白いですね。まあ、東京に住んでる人なんかいっぱいいますけどね……」


 私達がどちらも東京に住んでいたからといって、出会っているとは限らない。日本一の人口を誇る大都市の住人の一人だった、ただそれだけのことなのだ。

  それに、もし出会っていたとしても、覚えているだろうか。

 たった十七年しか生きていなくても、数えきれないほどの人と出会って別れているのだ。その全員を覚えておくなど不可能。

 でも、もしどこかで会っていたとしたら、それはとても素敵なことだと思った。

 

「次は、思い出させちゃうかもしれないけど……死因は?」

「大丈夫ですよ。病死です。体が弱かったので。でも高校生活は満喫できました」

「高校での思い出は?」

「高二の文化祭ですね。それまでクラスメイトとはほとんど話さなかったんですけど、文化祭をきっかけに仲良くなれました」

「へえー。何したの?」

「劇です。私は脇役だったんですけど、道具係も兼任してて」

「じゃあかなり大変だったんじゃない?」

「けど、友達が助けてくれたので、何とかなりました」


 前世、生まれて初めて『友達』と呼んだ、彼と彼女の顔を思い浮かべる。

 私が忙しい時や倒れた時はいつも助けてくれた。いつも迷惑をかけっぱなしだった。

 彼らは今も元気に暮らしているだろうか。何歳になっているのだろうか。恋や結婚はしているのだろうか。私のことを、覚えていてくれているだろうか。

 思い出すと、寂しさが胸をちくんと刺した。その痛みに、少し俯く。


「アリアさま」


 顔を上げると、カトリーアさまのにやりと笑った顔があった。


「その友達って、男の子でしょ」

「なっ」


 その確信を持った表情を見て、隠すのは無理だと悟った私は、渋々頷く。


「そうですけど」


 彼女が紫色の瞳を爛々と輝かせて詰め寄ってくるものだから、「女の子もいますよ」という言葉はすっかり引っ込んでしまった。


「彼氏? 彼氏?」

「そんなんじゃありません。全くもって、違います!」

「えーほんとかなあ」


 カトリーアさまは、ニヤニヤした顔をやめない。

 私は、鼻の先がくっつきそうなほど顔を近づけてきていたカトリーアさまの肩を掴むと、ぐいっと引き離した。

 「ちぇ〜」と不満げに唇を尖らせる彼女の頬に、両手の人差し指をぐりぐりとめり込ませる。


「ほ、ほら、私のことなんてどうでもいいじゃないですかっ。それより、カトリーアさまは何歳だったんですか」

「あ、ありあひゃま、いひゃいいひゃい!」


 結局、頬ぐりぐりは、彼女の涙目の抗議に免じてやめてあげた。



お読みいただきありがとうございます!

次話は明日18:00に投稿します。


「面白いな」「続きが気になるな」と思ったら、ブックマーク・評価(☆)・リアクションをつけていただけると、作者がめちゃくちゃ喜びます。

さらに、感想・イチオシレビューも書いていただけると、作者が飛び跳ねて喜びます。


何卒よろしくお願い致します!!


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