100 そしてもう一度紡ぐ友情③
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翌日。
私はカトリーアさま達と、図書館で勉強会をしていた。
「アリアさま、やっぱり数学苦手なのね。この間の授業でも、先生に当てられて答えられていなかったし」
「あ、あの時は少しぼーっとしていまして! 自分ではちゃんと理解できているつもりです!」
『あの時』とは、数学の授業中に、頭の中を整理していた時のことだ。
あのノートのページは、破って今も保管している。今後、新しい事を思い出したら書き加えていくつもりだ。
「勉強ではその『つもり』が命取りだぞ」
「うぅ……はい……」
ユーリさまからの厳しいお言葉。
……仰る通りです。ごめんなさい。
前世でも数学の授業はあったから、私は高校内容までなら理解している。
フルーツェア魔法学園の授業は、日本の高校よりかははるかに簡単なはずなのだが、私はなぜか問題が解けないのだ。
「みなさん、私のためにありがとうございます」
「いいのいいの。私達だっていい復習になるし、それに困ってる人を放っては置けないもの。こちらこそ、お誘いがちょっと強引で申し訳なかったわ」
「いえいえ、勉強を教えていただけるのは本当にありがたいです! 休んでいた間の内容で、教科書を見るだけではわからないところがいくつかあったので助かります」
「何でも訊いてくれ、教えるから」
私の隣で、ユーリさまがずれた眼鏡をくぃっと押し上げた。
とっても頭が良さそうに見える。というか実際、良いんだろうな。王太子の側近で、時期宰相なのだから。
「ユーリの教え方はすっごくわかりやすいんだよ! 頼りにしてるぞ!」
「ヘレンド、君はまず椅子に座るところから始めろ。本をダンベルがわりにスクワットするな」
「へいへい。あ、ただし国語以外な。俺、長文読んでると眠くなるから」
「そんなので将来どうするんだ。騎士団だって、剣術だけできれば良いわけではないんだぞ」
「なんとかするよ、そのうちな」
ヘレンドさまは、担いでいた十冊をゆうに超える本をどん! と机に置き、渋々椅子に座ると生物の問題集を開いた。
「やっぱ生物だよなあ。筋肉に詳しくなれるし」
「こら、逃げてないで数学をやれ」
「うげぇ」
「まったくもう」
顔をしかめて数学の問題集を開いたヘレンドさまを見て、ユーリさまは呆れ顔。
カトリーアさまと殿下は、「またやってる」と呆れつつもにこにこと見守っている。
ユーリさまはため息をひとつつくと、私の方に向き直った。
「すまないアリア嬢、待たせたな。数学を始めようか」
「いえ、大丈夫です。よろしくお願いします」
「眠くなったら言ってくれ」
「大丈夫ですよ。いま、頭の中すっごく爽やかなので。眠気なんて微塵もありません」
「そうか」
私が元気いっぱい頷くと、ユーリさまはふっと目を細めた。
「では、ご教授よろしくお願いします!」
数十分後。
「わ、わからない……」
私は絶望の表情を浮かべていた。
「アリア嬢、もう一度情報を整理しよう。ここの座標とここの座標を結ぶ直線の式がこれになるから、……ってアリア嬢? どうかしたか?」
「頭がパンクしそうです……」
「アリアさま、深呼吸して十秒目を瞑ってみて」
カトリーアさまの助言に従い、深く息を吸う。
肺の中の空気を全部吐き出して、目を閉じて十数えると。
「おお、ちょっとだけスッキリした気がします! それに、目の疲れがマシになりました!」
「ふふ。よかったわ」
「ありがとうございます、カトリーアさま。これで勉強の続きに集中できます!」
「頑張るのは偉いけれど、あまり根を詰めすぎてはだめよ。一日で全部やらなくちゃいけないというわけでもないのだから」
私が瞳を輝かせてお礼を言うと、カトリーアさまはふふっと微笑んで、私の頭を撫でた。
どこまでも優しいその手つきは、とても心地よくて、どこか懐かしさを感じる。
大好きだな、と思った。
初めてできた『友達』が良い人ばかりで、幸せだ。
「そうそう、アリア嬢が倒れたら僕達も心配だしね」
「アリア嬢は十分頑張っているぞ」
「ありがとうございます」
私が笑うと、カトリーアさまも、周りの殿下やヘレンドさま、ユーリさまも笑ってくれた。
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