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神様の不手際によって、最強転生が始まった  作者: トラノコ
1 アレンの幼少期編(0~10歳)
6/25

5 最強と最強の子供は最強??

 「スミレ、相談したいことがある」


 ろうそくの明かりだけが照らす寝室。

 机の上で両手を組んで、一層低い声でガレンは言う。

 スミレは本のページをめくりながら答える。


 「アレンでしょ」


 「ああ、アレンのことだ」


 「私が生んだ子が異常だって言いたいの?」


 「いや、そういうわけじゃ・・・!」


 「大丈夫、私がそう思っているから。」


 「な、なに・・・?」


 「あの子は異常よ。お腹にいる頃から育ててきてるもの、私が一番わかってる」


 「・・・」


 スミレはなおも本から目を離さず、目線も変えない。

 淡々と言葉を続けていく。


 「三歳で中級程度の風魔法を習得した。これは紛れもなくソフィアのおかげよ。まさかソフィアがアレンに対してあんなに心を開くとは思わなかったけど」


 「まさか君が・・・ソフィアにアレンに風魔法を―――」


 「言ってないわ。書庫に通い始めたのはアレンの意思。アレンに風魔法を教えたのはソフィアの意思。私の意思なんてどこにもないわ。あの子には魔法の才能がある。いや、ありすぎる」


 「今日、ガイザーとの訓練の様子を見てきた。ヤツは気付いていなかったが、君の言った通り、アレンは間違いなく剣を振るいながら風魔法を使っていた。しかも、ごく自然に」


 「私たちの子供が、伝説の魔女様に魔法を教えてもらったらそれくらいできるようになるわ。でも・・・」


 スミレは本を閉じ、しおりを挟んだ後、机に少し音を立てておいた。

 向かいに座る男は少し体をびくつかせた。


 「必然でもあると思うの。だって、私たちの子供として生まれた瞬間から剣を振る私たちを見てきた。まあ私は引退しちゃったけどね。子供は親の真似をして育つの。ある程度歩き回れるようになったら剣を持ちたくなって当然だし、実際にガイザーさんに先生をしてもらってる。でもあの子から見るあなたは大きすぎたんだと思うの」


 「大きすぎた? 俺が?」


 「うん。僕もお父さんみたいにならなきゃいけない。そのためには今からでも練習しなきゃって子供ながらに思ってるんじゃない? でも二歳三歳の子供が剣を扱えるわけがない。百歩譲って様になっていたとしても戦闘なんて無理。私だって五歳から対人戦闘を始めたの」


 「俺は六歳、からだ」


 「忘れちゃいけないのが、大人の三歳差と子供の三歳差は次元が違うくらい差があるの。筋肉が未発達な三歳児が剣を使って戦うためには、もう魔法で無理やり身体能力を上昇させるしかないの。だから、あの子の今の剣術は八割・・・いや九割が魔法で成り立ってる。これが何を意味するか分かる?」


 「何を意味・・・するか・・・」


 「私たちは魔法による攻撃を受け取るためには魔道具を使っているでしょ?」


 「ああ、魔力を練りこませた鎧とか」


 「そう、でもアレンは魔法を使いながら剣術も熟せる。要するに・・・」


 「魔道具がいらない・・・!?」


 「騎士にとって魔道具は剣より大事だなんて言われるのは癪に障るけど、実際そうなの。でもアレンがもっと魔法と剣術を使いこなせるようになったら・・・」


 「まさか・・・魔法騎士だと!?」


 「ちょっと声が大きい!」


 スミレはガレンの頭を思いっきり引っ叩いた。

 ガレンの声よりも大きい音が家中に響く。

 二人は身をひそめるように腰を曲げ、天井を見張る。


 静まり返ったシウバ家に安堵した二人は、ウィスパーボイスで話し始める。


 「おいおい、嘘だろ? 魔法騎士なんて歴史の授業でしか聞いたことないぞ。実在したかどうかも危ういみたいな話だった気がする・・・んなわけないだろう!」


 「でも現実にその可能性があるんだからしょうがないでしょ! 魔法騎士・・・明確な定義があるわけじゃないけど、もし近しい存在にアレンがなったとしたら・・・」


 「ああ、間違いなく俺ら二人でかかっても、十秒もつかどうかだな。魔法を発動しながら剣を振る異常さは多分、世界を変えるぞ」


 「三歳で中級魔法・・・手を抜いたとはいえ、ガイザーさんの剣を受け止めて無傷・・・ガレン、私たちの子供は世界最強になれるかもしれないわ!」


 「待て待て、スミレ。君は間違いなく世界最強の女騎士だ。そして俺も軍隊長として騎士。ただ、アレンが他にやりたいことができたと言ってきたら、俺らに拒否する権利はない。結婚したときに決めた教育方針を忘れてないな?」


 「・・・当たり前よ。子供のやりたいことをやらせる」


 「アレンは間違いなく強い。おそらく招かれざる客も寄って来る」


 「あなたの言いたいことは分かるわ」


 「ならいいが」


 「あなたこそアレンにもっと厳しい訓練をさせるつもりじゃないでしょうね?」


 「まだ三歳だ。もっと体が出来上がってきたら、魔法なしで相手するつもりだ」


 二人は微笑みあって、椅子から立ち上がり、ベッドへ向かった。

 互いの唇が重なり合い、素肌と素肌が重なり合う音が部屋に響く。

 それはおよそ一時間近く続いたのであった。





 夜中にお手洗いに行ったところ、両親の部屋からなにやらコソコソ話す声が聞こえてきた。

 すべてを聞き取ることはできなかったが、俺が魔法騎士とやらの可能性?があるみたいな内容であることは間違いない。


 「魔法騎士・・・?」


 初めて聞く言葉だが、明日、ソフィアに聞いてみよう。


 と、考えているとなにやら、おっぱじめやがったので俺は忍び足で自室へ帰ったとさ。

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