不実のたまご
「第5回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」への応募作品です。
女子校育ちでたぶん“箱入り”な私は大学に入って初めてカレができた。
そして大学での四年間、私は全ての“初めて”をそのカレと分かち合った。
「卒業したらキミに受験したいと思っている」
こんな事を囁いて微笑むカレは私にとって優し過ぎるくらいの人で……
私はいつも居心地の良い幸福の中に居た。
ああ早く共に人生を紡ぎたい!!
はやる気持ちを抑えきれずに結納まで済ませたけれど
「卒業したらすぐ家庭に入る時代でもなかろう」という両家の理解の元、私は叔父の会社へ総合職として入社した。
社会人としての生活は新鮮で充実していたけれど、周りのコ達とひとつ違っていたのは……
私の心はどの男性に対しても毛ほどもときめかなかった事!!
だって!私はカレひとりの物!!
こう言いきれる自分が好きだった。
それなのに……
カレとは成し得ない“初めて”が私に訪れようとは……
事の発端は私の所属する第二課の得意先主催の見本市の応援の為、課員総出で熱海に遠征した時だった。
シーズン真っただ中で、その夜は男女とも旅館の大部屋の雑魚寝となった。
社長である叔父の薫陶のせいか、ウチの課も酒で結束するのが常で、その夜も飲み会で意気軒昂となり課長を筆頭に大いに羽目を外し、センパイ達は“泊りがけの飲み会”でしかできない一発芸を披露し、私はその勢いに茫然となった。
最初の頃こそ自制してお酌に徹していた私も無礼講の波にのまれて酩酊状態となり既に敷かれている布団の端っこを枕にゴロン!と寝転がったら、褐色に焼けた肌に食い込む青のビキニが目に飛び込んで来た。
それは先の一発芸で男同士のカラミを演じた相川さんのもので……いつものスーツ姿からは想像できない様な細マッチョのシックスパックが上に乗っかっている!!
酔った私は……ふいにそのボコボコに触れたくなった。
手の伸ばして……山、谷に沿って指を滑らせると、グイッ!と体を引き寄せられ抵抗する間もなく荒々しく唇を奪われた。
あれから一年と数か月が経ち……私は結婚退職する。
相川さんとは…少なくとも私が出社する限りは秘密の間柄で居るつもりだ。
よしんば相川さんと別れたとしても……
あの、熱海の夜に
相川さんが私の中に産み付けた“不実の卵”は抗う事を許さない艶めかしい芳香を放ち、育ち続けるだろう。
その故に
宿主が滅ぶ事になったとしても。
1000文字に収めようとかなりカットしました(^^;)
意味分かるかなあ……
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