表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/55

第26話 エリクとおひるごはん

「そういえば、ヒストリカは食べないのか?」


 半分ほどサンドウィッチを食べ進めたタイミングで、エリクが尋ねた。


「私のことはお気になさらず。エリク様が残した分を食べますので」


 ヒストリカが淡々と返すと、エリクは見るからに表情に動揺を浮かべた。


「ああっ、気づかなくてごめんよ。お腹空いただろう?」

「空いていない……と言えば嘘になりますね。私も人間ではあるので、生理現象として空腹感を覚えざるを得ない状態です」

「何だか小難しい言い回しをしているけど、要はお腹が空いてるって事だよね?」

「人間なので」

「なるほど。ちなみにヒストリカは、サンドウィッチの具材で言うと何が好きなの?」

「私ですか? 私は………………」


 そういえば、サンドウィッチの具の好みなんて考えた事がなかった。


 思考をかなり深いところまで沈める。

 貴族学校を首席で卒業し、ありとあらゆる分野の知識を網羅するヒストリカの頭脳が導き出した具材は──。

 


「…………無難に、卵サンドでしょうか」


 そういえばマヨソースをよく味見していた事を思い出し、自分の好みの味だと導き出した。


「はい、どうぞ」


 ひょい、とエリクがヒストリカに卵サンドを手渡す。

 ヒストリカは目を丸めた。


「え、でも、これはエリク様の……」

「一緒に食べた方が、美味しいだろう?」

「そういうものですか」

「そういうものだよ」


 にこりと笑ってエリクが言う。


 ヒストリカにはエリクの言葉がわからなかった。


 実家でも、貴族学校でも、いつも一人で食べていたから。

 食事とは、黙々と一人でするものだと思っていた。


「……いただきます」


 微かに緊張した面持ちで、はむ……と、卵サンドに口をつけるヒストリカ。


「どう? って、俺が聞くのも変な話か」

「美味しい、ですね」


 ゴロゴロ卵がマヨソースと絡み合って何とも食欲をそそる。

 二口目、三口目と、ヒストリカは卵サンドを頬張った。


「やっぱり、お腹空いてたんだ」


 否定は出来ない。

 朝からエリクを第一優先に考えて行動していたためか、普通にお腹が空いていた。


「残ってるやつで、どれ食べたい?」

「………………ハムチーズを、頂いてもよろしいでしょうか?」

「そんな畏まらなくても」


 苦笑しつつ、エリクはハムチーズサンドをヒストリカに手渡す。

 まるで小鳥に餌付けしているみたいな光景だった。


 ハムチーズサンドを行儀よく両手で持って、はむはむと頬張りながらヒストリカは思う。


(誰かとご飯を食べたのなんて、いつぶりでしょう……)

 

 記憶の限り、すぐには思い出せないくらい久しぶりの事だった。


(確かに……悪くないかもしれないですね)


 誰かと『美味しい』を共有する。


 こんな昼食も悪くないと、ヒストリカは思うのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです。 ヒストリカの人物像が好き。鋭と鈍のバランスがいい感じと思います。 ヒーロー氏の人間性に早いうちから安心感を持てるのも良きです。 [気になる点] ハムチーズは前回のサンドウ…
[一言] ランキング維持のために更新早めるのは戦略として分かるのですが、一話の内容の薄さが気になります。(特に今日の更新分)ランキング上位になったのは更新が早いからではなく内容が面白いからだと思います…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ