65話 『勝利の為の道筋』
冬の大盾に身を隠し、【アイアン・ゴーレム】の様子を確認している私たち。
ただ、隙だらけなその姿に攻撃を仕掛けていいないのには当然だが理由があった。
なにせ、弱点であり、唯一攻撃の通る宝石の輝きが無くなっているのだ。
つまるところ現状【アイアン・ゴーレム】にダメージを与えることは出来ない。
黙って見ていることしか出来ない中、徐々に空気は張り詰めていく。
私がどうにかしようと思ったその時ーー。
「ーーとりあえず、あの宝石を狙えば良いって事ね。後は今回は偶然同時だったけど、本来は一つ壊すごとに一定時間ダメージが与えられなくなる感じっぽい……?」
焔ちゃんも同じ事を考えていたのか、身振り手振りを加えながら空気を変えようと声のトーンまで上げて明るく話し始めた。
「うん、それで概ね合ってると思うよ。でも、例えば焔ちゃんや紅葉の武器、銃以外でも宝石が破壊出来るかどうかが気になるかな。ま、多分出来るんだろうけど、一応……ね」
焔ちゃんがボスについて話してくれたお陰もあって、私は私で少しだけ考えていた事を話す事が出来た。
とはいえ、これに関しては私も短剣だから試す事は出来る。
しかし、万が一やられた場合を考えたら銃持ちが桜のみになってしまうのだ。
仮に銃以外壊せなかった事を考えると、私がやられる訳にはいかない。
ーーそうなると、実質焔ちゃんか紅葉にやってもらう他ないのだ。
「あ、それならウチが特攻してきましょうか!?」
「んー、ちょっと考えるね。時間もあるみたいだし」
私の心配を他所に、未だ何も出来ていない紅葉は退屈だったのか、威勢よく試してみると豪語している。
が、動いているあの巨体から一撃でもくらったら、良くて致命傷、悪くて即お陀仏間違いなしだ。
銃以外でも破壊出来るのならタイミングを合わせて一気に壊せるし、効率は上がるかもしれない。
が、わざわざリスクを冒して良いものだろうか悩ましい。
焔ちゃんとセットなら或いは……。
「分かった。紅葉と焔ちゃんが二人で行くのなら良いよ」
「ホントっすか! それじゃ暴れてくるっす!」
「あぁ……うん。焔ちゃん、紅葉を宜しくね」
「了解。出来るだけ守り切るよ」
いつ動き出してもいいように良い位置を取る為、大盾の後ろから飛び出した紅葉の後を追い、焔ちゃんも一緒に飛び出す。
そうして【アイアン・ゴーレム】の元へと二人が辿り着こうとした瞬間、立ち上がろうとした衝撃によってか、大きな音を立ててヒビの入ってた片足は崩れ落ちた。
「――――!!!!」
足が崩れ落ちると、声になっていないような金切り声を【アイアン・ゴーレム】が発し、衝撃が襲う。
音が空気を伝う中、私達はたまらず耳を塞いだ。
「紅葉! 耳から手を離すな! 鼓膜が破れるよ!?」
「ッ!?」
私たちより近づいているが故に、衝撃の伴った咆哮とも言える声を受けている二人は必死に体へと力を入れて耐えている。
数分にも感じられる音が止まり、未だに耳へと残っているような感覚。
目眩で視界が揺れる中、なんとか視線を向ければ、宝石は既に失われた輝きを取り戻していた。
「師匠! 今っすよね!」
「待って! なんかおかしい!」
宝石が光る事で攻撃が出来ると考えた紅葉が武器を構えると同時に、【アイアン・ゴーレム】の指から光線のようなものが放たれた。
それは違和感に気付き、咄嗟に紅葉を抱えた焔ちゃんの太ももに容易く穴を空けるほどの熱線であり、指の動きに合わせて放たれ続け、止まる気配はない。
「焔ちゃん! ちょっと痛むかもだけど……」
「っ! ごめん、失敗しちゃった」
「今は喋らないで!」
「ご、ごめんなさいっす……ウチが出しゃばったばっかりに……」
紅葉を抱えたまま戻ってきた焔ちゃんの体は、庇ったお陰もあってか穴だらけになっている。
幸い、熱線の効果によって焼かれているから血は少なく、心臓や脳といった急所も貫かれていない。
これなら回復は出来るだろうが、こうして冬の大盾に隠れていられるのも時間の問題だ。
「っ、衝撃がきついです。すいません、そろそろ私も……」
「どれくらいなら保ちそう!? せめて回復する時間だけでも!」
戦いが始まってからずっと守り続けてくれた冬には厳しい事を言っているのは分かっている。
でも、それでも今は冬に頼る事しか出来ないのだ。
ヒュドラを倒して慢心し、ボスの情報を対して見ずに来てしまった。
全てが後手に回ってしまっている以上、万が一にも冬が耐えきれなくなったら、確実に誰かが死ぬ。
或いはーー全滅してしまう。
「雫さん! 一つ撃ち抜きました!」
「本当に!? どう、動きは――」
「ダメです! 止まりません!」
桜の活躍によって、宝石は撃ち抜かれたようだが、それでも先程とは違って止まる気配はない。
しかし、それでも朗報とも言える事はあった。
それは、【アイアン・ゴーレム】の指が一本砕けた事だ。
一つ壊しても宝石は光り輝いているし、このまま宝石を壊し続けて光線を止めろという事だろう。
……でも、それが分かったところでここから再度撃ち続けることは出来ない。
つまり――。
「分かった。こうしよう。……桜はそのまま狙い続けて! 紅葉は焔ちゃんの回復と、冬の支えを! 私が前に出る!」
「えっ、この光線の中をですか!? 無茶ですよ!」
「そ、そうっすよ! それに行くならヘマをした私が!」
「ううん。これはリスクが高すぎる。だから、紅葉は私がなんとか光線を止めるか引き付ける事が出来たら、前に出て宝石を壊していって」
私の言葉を受け、紅葉は小さく頷き、桜は力強い顔で「私がすぐに破壊します」と言ってくれた。
「それじゃ行ってくる」
大盾から身を投げ出し、突き進む。
銃を片手に、勝利を掴み取る為に。




