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Replicant_World 〜ようこそ! ゲームの世界へ!〜  作者: ねぎとろ


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53話 『耐久勝負!』

「わ、私の声とそっくりなんて……。なんか怖いです」

「大丈夫。っても私も動揺しちゃってたんだけどね。でも、こうして本人が目の前に居る以上は次以降聞こえても幻聴って分かるし問題無いよ。ただ……」

「私たちがまた離れた場合と、ここからどうやって出るか。ですよね?」

「うん、そういう事」


 最初に出会ったころの冬は守ってあげたくなるような小動物に思えたが、今の姿を見れば評価は変わる。

 もしも私一人だったらパニックになっていたかもしれないし、冬が居るだけで頼もしいものだ。


「……幻聴ですか。霧が原因なのか、それともモンスターか」

「ふふっ。冬も逞しくなったね。さっき森で怖がってたのが嘘みたい」

「うっ、た、確かにあの時は怖かったですけど、今は怖がってる場合じゃないですし……」

「そうだよね。それじゃ、とりあえず一緒にここを出ようか。離れたらまずいし、手でも繋ぐ?」

「は、はい! そうしましょう!」


 霧の中、幸いにも襲われることもなく、警戒はしているもののあれ以降幻聴も聞こえなかった。

 手を繋ぎ、時々よぎる不安をかき消す為に雑談をしながら進む私たちを阻む障害はない。


 その筈だった。なのに、一向に霧の中から出る事も出来ず、私たちは全くと言っていいほど変わらない景色を見ながら歩き続けているだけだった。

 冬の通ってきた道も、私が通ってきた道も、そのどちらもが出口には繋がらず、足も疲れて途方に暮れた時――。


「――ガァアアア!!!」

「冬! 防げる!?」

「はい! 任せて下さい!」


 まるで狙っていたかのように突如巨大な黒い影が私たちの前に現れ、獰猛な雄叫びを上げながらその巨大な手を振り下ろしてきたのだ。

 それはモンスターに違いなく、確証は持てないが冬の盾とぶつかり合った音も甲高い音の為、恐らくは獣系のモンスターだろう。


「雫さん! また霧の中に逃げていきます!」

「ダメ! 深追いしたら分断されちゃう!」

「分かりました!」


 私がこれを言う資格はないのかもしれないが、それでも今は離れないようにするのが最優先だ。

 モンスターに襲われるという事が分かった以上、より警戒心も強めないといけないし。一人になっては狙われて殺されてしまうだろう。

 霧からも出られず、霧の中に潜む巨大なモンスターにも襲われる。


 今の私たちには絶体絶命という言葉が合っているのかもしれない……。


 霧の中に立ち往生をしながらモンスターの襲撃を警戒する事、数分。

 私たちは幾度となく死角を狙われて襲われていた。


「はぁはぁ、随分と厄介な敵だね」

「そうですね……。早く霧が晴れれば良いんですが……」


 お互いにモンスターの猛攻を凌ぐことで息を切らし、霧から出られない以上は霧が晴れることを願っているが、一向にそれは叶いそうになかった。

 そもそも今襲ってきているモンスターはこの霧を発生させているのであれば、私たちが死ぬまでは晴れる事はないだろう。


 ……しかし、そうは言ってもこのまま防戦一方ではいずれ殺されてしまうのも事実だ。

 ここは無理矢理にでも動くべきか、それとも立ち止まり凌ぎ続けるか。

 冬と相談するべきかもしれない。


「冬、そのまま警戒しながら聞いて」

「はい、何でしょうか?」

「えっとね、このままここに居たらいつかは殺されちゃうかもしれないんだけど、私は動きながら戦うよりも留まる方が良いと思うんだ。だから、焔ちゃんたちが気付いて助けに来てくれるまでの体力は残ってる?」


 私たちが離れないことが絶対条件な以上、ここに留まって戦う以外に選択肢はなく、それに加えて霧という視界が悪い中だとカウンターを主体にする他ない。

 とは言え、その場合だと攻撃された瞬間に対処出来るよう、背中合わせのまま戦う事になり、防御に長けていない私が狙われた場合反応が遅れたら致命的なのは考えなくても分かる事だ。

 つまり、現状最も頼りになるのは大盾を使っている冬であり、だからこそ冬がまだ戦えるだけの体力を持っているのかを把握したかった。


「はい、一応今はそれほど消耗していないので大丈夫です。ただ……」

「ただ?」

「……相手がボスモンスターだとしたら万全だとしても長く持ちこたえられる自信はないです。ごめんなさい……」

「ううん。仕方ないよ。いつどこから襲ってくるか分からないし、集中力を沢山使っちゃうからね。でも大丈夫。冬の事は私が意地でも守るから。ここまで連れてきちゃったしね」


 私の心も極限状態になっているのを隠しつつ、冬を安心させるために私は笑顔を見せる。

 ぎこちない笑顔だったかもしれないが、それでも少しは冬を安心させることが出来たようで、不安そうな表情は消えていった。


「それじゃ、耐久勝負といこうか。冬、後ろは任せたよ」

「はい!」

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