45話 『募る不安』
某ウイルスにやられてしまいまして更新が遅れてしまいました……。申し訳ありません……。
それから無事に合流し、防具を明日取りに行く話と、冬のを買うという話になった時、案の定紅葉は冬へと羨望の目を向けながら、駄々をこねる子供みたいになってしまった。
「冬ばっかズルい! ウチだって新しいの欲しかったもん!」
「こらこら、紅葉。いい加減にしなさい。冬のは直せないんだから仕方ないじゃない」
「紅葉姉、こればっかりは仕方ないから諦めて」
言葉とは裏腹に、まるで自慢するような顔を紅葉へと向ける冬。
そんな冬を見て紅葉も怒り始めてしまったし、ここは私が紅葉の分も何か買ってあげるべきなのだろうか?
それとも、我慢させるべきかな?
っと、騒いでる三人を見ながら冷静に考えてると、痺れを切らした焔ちゃんが不毛な諍いを止める為にご飯を片手に持って、食べながら割って入り始めた。
「まぁまぁ、雫が冬ちゃんに贔屓するなら、今回は私が紅葉に贔屓してあげるよ。それで良いでしょ?」
「えっ、良いんすか!?」
「ホント、紅葉が我が儘で迷惑を掛けてすいません……」
「ぶー、紅葉姉は我慢するべきなのに……」
焔ちゃんのお陰で場が綺麗に収まり、安堵しながら私も食事を再開するが、焔ちゃんの言っていた贔屓というのを目にした瞬間、驚いて噴出してしまった。
「えっ!? えぇ!? 焔ちゃん! それ上げちゃうの!?」
「えっ? うん。そりゃ確かに悪くない装備だけど、もっと良いのを集めるから良いかなって」
「そっか。ま、焔ちゃんが決めたなら私から言う事はないよ」
私との話が終わり、犬のように待っていた紅葉へと、自分の装備していたアクセサリを渡す焔ちゃん。
二層に来てから見つけたアクセサリであり、手に入れた当初は喜んでいたが、きっと今はそれ以上に紅葉の事を気に入り、仲間が出来た喜びの方が大きいからこそあげるのだろう。
私が冬に防具を買ってあげるように。
「ふぅ。お腹いっぱい。それじゃ明日に備えて宿屋に戻ろうか」
店で存分に楽しんだ私たち。空は暗く、街灯の灯りが照らす中で各々明日からを楽しみに宿屋へと足を運ぶのだった。
宿屋へと戻った私たちは、部屋も分かれている事から明日の朝宿屋前で集合というのを決めて各々部屋へと入っていった。
「いやー、あの子たちが仲間になってくれて良かったね! 雫も一層の時から気になっていたんだし、今めっちゃ嬉しいでしょ?」
「そりゃ勿論だよ! 皆いい子だし、こうして仲良くなれた事に飛び跳ねて喜んじゃうくらい嬉しいよ!」
「そうだよね! でも、ダンジョンを終わってからどうするんだろ……? 引き続きパーティーを組むのか、それとも分かれるのか。桜達次第だし何も言えないけどさ」
「……出来ればずっとが良いけどね」
確かに焔ちゃんの言う通り、今回のパーティーはダンジョン攻略に対してのものであり、一時の間組んでいるだけだ。
仲良くはなれたし、仲間じゃなくなっても、友達である事には変わりはないが、それでもパーティーを解散する事になってしまったら泣いてしまう自信はある。
だからこそ、私はずっとを望むのだ。この世界から出るまでの間ずっとを。
「ま、ダンジョンでカッコいい所を見せれば一緒に居たいって思ってくれるかもしれないし、今は考えても仕方ないよ! もう遅いし寝よっか!」
「うん、そうだよね! それじゃ頑張って良い所見せれるようにしないとね! それじゃ、おやすみ! 焔ちゃん!」
お互いにベッドへと入り、窓から入り込む月の光以外真っ暗な中で、私は眠れずにいた。
興奮して眠れないだとか、そういうのではなく、不安から眠れないのだ。
桜達にカッコ良い所を見せると決めた以上、張り切り過ぎてまた自分じゃない何かが私の体を奪い取ってきそうで、考えれば考える程怖くなってしまう。
夜中で静かな分、焔ちゃんも寝ているし、余計な事だけが頭を駆けまわり、どんどん嫌な方向へと考えが落ちていく。
「……今までのを考えると条件とかがやっぱりあるのかなぁ」
自分の事なのに客観的に考え過ぎたあまり、いつの間にか声に出てしまい、結果的に焔ちゃんを起こしてしまったようだが、それにも気付かずにまだ考え込む。
今までのを思い出しながら、あり得そうな一つの条件を。
「仲間がピンチの時だよね……いつも出てきてたのって」
ゴブリンの時は殆ど覚えていないとはいえ、確かにあの時も焔ちゃんの事を考えていた気がするし、兎の時も同様に焔ちゃんがピンチだった。
けど、だとしたらハーピィの時は¥に出て来なかったのはどうしてなのだろうか?
私自身がピンチじゃなかったから? それともその時はまだ桜達とは仲間じゃなかったから?
分からない。どうしたら出てくるのか、どうしたら出て来なくなるのか。
「……なんか怖いな」
何も分からないとなると、いつか私という存在そのものが消えるんじゃないかと思って怖くなってしまう。
考え過ぎだというのは分かってても一度考えてしまえば不安が、恐怖が心を覆うのだ。
「さっきから泣きそうな顔してどうしたの? 何か怖い夢でも見た?」
「あ、焔ちゃん。ごめん、うるさかったよね。起こしちゃってごめんね」
いつから起きていたのか、私の独り言は聞こえていたのだろうか。
……きっと聞こえていたと思う。
だって、全てを包み込むように私を抱きしめてくれてるのだから。
「雫はいつも考えすぎだよ。人生なんてなるようになるもんだからさ、もっと気楽にいこ? ねっ? それに何かあっても私が居るんだから任せておきなさい」
「うん、ありがとね。焔ちゃん」
抱きしめられながら掛けられた言葉はありふれたものかもしれない。
けど、それでも確かに私の心に響き、抱きしめられた事も相まって嫌な考えは消え去っていった。
子供の様に抱き着く私は傍から見たらおかしいかもしれないけど、それでも今は何も考えず、ただただ焔ちゃんの優しい匂いと、太陽のような温もりだけが私を癒してくれるのだった。
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