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Replicant_World 〜ようこそ! ゲームの世界へ!〜  作者: ねぎとろ


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37話 『舞踏会?』

 狩場へと行くことが決定した次の日。

 私たちは盛大に寝坊し、昼過ぎになってからようやく行動を開始した。

 少しだけ感じる視線を浴びながら、特に気にもせずに街を出て、砂漠を歩き続ける私たち。

 目的地は街からそれなりに離れている岩山であり、そこまで辿り着く間にも当然のようにモンスターからの襲撃を受けるが、出来るだけアイテムを使わないように、疲れないようにを心掛けて進んでいた。


 しかしそれが逆に裏目に出てしまい、進むのが遅くなり、辺りは段々と暗くなっていっている。


 そしてその時、私たちは件のオアシスと呼ばれている場所に立ち入ってしまったのだ。


「神秘的だ~!」

「うんうん、とっても綺麗だね!」


 まさか噂を聞いてすぐに見つけられるとは思っていなかったが、こうしていざ入ってみればそこには幻想的な光景が広がっていた。

 二層に居るはずなのに、砂漠に居るはずなのに、全くそれを感じさせない雰囲気と、水の周りには緑地と何処から現れたのか普通の動物までもが存在している。

 また夜という事もあって、水に星が反射し、蛍なのかは分からないけど、煌めく光がより神秘さを感じさせてくれた。


「見てみて! あそこにモンスターが居るのに全然寄ってこないよ!」

「えっ? うわっ、ホントだ! どうなってるんだろ……」


 焔ちゃんの指差す方向には確かにモンスターが存在し、明らかに私たちの事を視認出来ている筈だった。

 けど、なのにも関わらずモンスターはまるで私たちに気付いていないかのように近寄っても来ないし、攻撃もしてこない。

 それに加えて更に驚愕的なのが、他のプレイヤーもオアシスが見えていないのか不自然なまでに避けて歩いているのだ。


 まるでこの場所だけ切り取られたかのように。


「ま、なんにせよここは安全地帯ってことだよね。モンスターも来ないしさ。ただ、多分イベントがあるんだろうけど、どんなイベントなんだろ? 雫はどんなのだと思う?」

「んー、さすがに戦うとかじゃないと思うけど……」

「だよね! 私もそう思う!」


 私たちがどんなに予想しようとも、結局のところイベントが発生するまで分かる訳もなく、話したことで喉が渇いてしまった事で私たちはひとまずオアシスに存在する水が飲めるのかを確かめることにした。

 安全性が確認出来ていないから危険かもしれないが、動物が普通に飲んでいるのを見る限りだと毒とかはないと思って良いはずだ。


「おっ! やっぱり普通に飲めるね。ってか、なんというか少し甘いっていうか、美味しいよね?」

「うん、普通の水じゃなくて不思議な感じだけどね」


 飲んでみてすぐに異常とかが起きるわけもなく、単純に喉は潤い、イベントも発生しないままボーっと過ごしていた。

 その時、ふと焔ちゃんの方を見てみれば、眠そうにしている焔ちゃんの眼前に光り輝く何かが浮かんでいるのが視界に映る。

 驚き、視線を戻してみれば私の目の前にもそれは浮かんでおり、最初に蛍だと思っていた光はなんと小さな妖精だったのだ。


「ほ、焔ちゃん! 起きて! 妖精だよ! 妖精!」

「へっ? なになに!? 妖精!? どこ!?」

「えっと、目の前かな」

「ん? わっ! ホントだ! なにこれ可愛いんだけど!」


 焔ちゃんの驚き様にクスクスと笑った後、私たちを手招いて泉の周りへと呼び寄せた後、どこからか不思議な音楽が流れ始め、妖精たちは踊り始めた。


「えっと、これは私たちも踊った方が良いのかな?」

「多分これがイベントだろうし、踊った方が良さそうだね」


 困惑している私たちを横目に踊っている妖精たちを少し観察していると、ようやくイベントが発生。

 『妖精たちの舞踏会』という名の文が表示され、突発的にイベントは始まった。


「どうしよう雫、私踊れないよ!?」

「だ、大丈夫。適当にやってみればなんとかなるでしょ」


 イベントが発生した以上、踊らないという選択肢は私たちにはない。

 だからこそ、ひとまず音楽に合わせて妖精たちの踊りを見様見真似で真似てみることにした。

 しかし、真似た所で初めて踊った人が満足に出来るわけもなく、お互いに足を踏んだり、間違えたり、転んだりとどう考えても失敗したような状況になってしまった。


 けれど、どうも妖精たちの反応は怒ったりなどではなく、どっちかというと笑っているようなものであり、イベントがクリア出来たのかは分からないままとなっている。


「あはは……。ねぇ焔ちゃん、これってクリア出来たのかな?」

「ど、どうだろう。笑ってるし、喜んでるみたいだから大丈夫じゃないかな」


 不安に駆られた私が小声で焔ちゃんへと話しかけると、焔ちゃんも困ったような顔をしながら言葉を返す。

 一応ひとまずは多分クリア出来たという結論には至ったが、未だにアイテムなんかは貰えないし、クリア出来たという証拠は何一つなかった。


 しかし、こんな風に困っている私たちを見兼ねたのか、それとも充分楽しんだからなのか、妖精たちは私たちに近づくと額にキスをしてくれた。

 そうして、最後にニッコリ微笑むと同時に、辺りの景色は歪んでいき、気が付けばオアシスは無くなっていて、私たちは砂漠へと放り出されていたのだ。


「っ、眩しい。もう朝になってたんだ……」


 オアシスの中が暗かったこともあって、時間が過ぎていった感覚はなかったのだが、既に夜から朝に変っているのを考える限り、私たちは相当踊っていたことになる。

 しかし、こうして放り出されただけでイベントクリアになっているのかは未だに分からないし、アイテムの一つでも貰えているのであれば証明されるだけど……。


「あー! 見てこのアイテム! 妖精の傷薬だって! これがイベント報酬だよ絶対!」


 私が考えている間に焔ちゃんは何か増えていないか探していたのか、見た事もない容器に入った光り輝く不思議なアイテムをを掲げながら私へと近づいてきた。


「んー? うわ、ホントだ! ってか、あんな踊りでもやっぱりクリア扱いになるんだ……」


 焔ちゃんが持っていた傷薬を受け取り、少し見た後に、昨日の下手くそというか踊りにすらなっていない自分を思い出して項垂れてしまう。

 アレでクリア扱いになったのは助かるけど、なんだか道化になった気分だ。


「う、うーん、妖精さんたちも笑ってたし楽しめたから良いってことなんじゃない?」

「うー、結構恥ずかしかったし、まぁクリア出来たから良かったけどさ……」

「そうそう、それに楽しかったから良いじゃん! ほら、モンスターも近くに居ないし、踊りの練習でもする?」

「するわけないでしょ! こんな砂漠の真ん中で踊るなんておかしい人だよ! ……え、ってかなんでモンスターが一切居ないんだろ?」


 ひとしきり叫んだあと、ふと我に返って焔ちゃんの言う通り辺りをキョロキョロ見渡してみたが、やっぱりモンスターの影は一切見えない。

 今までオアシスがあった影響なのか、それとも出た直後に襲われない為の配慮なのか、どちらにせよこれは有難い事だ。


 だけど、我がままかもしれないが、どうせイベントクリア扱いになるならオアシスで休ませてくれるか、或いは自分のタイミングで出られるようにして欲しかったと思ってしまう。

 勿論、イベントの関係上や恐らく一つのパーティーしか入れないから、長居できないってのは理解できるのだけど、それにしても気付いたら砂漠の真ん中は流石に厳しすぎると思うし。


 まぁでも、踊ったのに関わらず疲れは取れていて、体は不思議と軽くなっていたり、なんなら傷薬も貰えたんだから高望みしすぎな気もするけど……。


「そういえばこの傷薬の効果って……えっ、やばっ……ほ、焔ちゃん、妖精の傷薬の効果凄すぎない!?」


 効果を見てみれば、そこには一瞬で痛みも消してどんなに重傷でも瞬時に治すと書かれていた。

 が、当然一回使えば無くなってしまうし、使いどころは見極めないと駄目だろう。

 それに、ユニークアイテムと違って盗まれたりしてしまう可能性はあるし、あまり人前で使うのはやめておいた方が良いかもしれない。


 また、正直言って死ぬ前であればなんでもすぐに治せてしまうのはアイテムとしては強すぎるし、プレイヤーなら誰しもが喉から手が出る程欲しいはずだ。


「でしょ!? 私も最初見てビックリしちゃったよ! プレイヤーってか、誰でも欲しいアイテムだもん! ここで入手出来るのは凄いよね! あ、という訳で、はい。雫がこれ持っててね! よろしく!」

「えっ? この傷薬、私が持ってて良いの?」

「当たり前だよ! 雫の方が周りをよく見てるからさ! ほら、私だとすぐに使っちゃいそうだし」

「そうかなぁ。焔ちゃんもしっかり周りが見えてると思うけど……」


 一人のプレイヤーとして焔ちゃんも本当は持っておきたいだろうに、私が持つべきと譲ってくれるのだからこれ以上拒否するのも野暮というものだろう。


「さ、モンスターが居ないうちに狩場へとさっさと向かうよ!」

「うん!」


 意気揚々と歩き始める焔ちゃんに続き、隣を私も歩き始め、私たちは本来の目的地である場所へと向かい始めるのだった。

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