32話 『二層に行く前に』
「はぁ、疲れたー! 雫~、マッサージして~」
「えぇ!? もう、仕方ないなぁ」
ボスを倒し、今すぐにでも二層へと向かう事が出来るが、さすがに疲れが溜まっていた為に私たちは少しだけ休む事にした。
とはいえ、あまり長居することは出来ないし、ほんの数分だけだ。
「あぁ、気持ちいい……あ、そうそう、今回は私たちも情報を持ってたから良いけど、もし情報がないままにあの命乞いをされたらどうしてた?」
「んー、情報が無かったとしてもさすがに倒す以外ないでしょ。確かにモンスターがあんな人間みたいに命乞いするのは予想外だけど、それでも見逃すなんて無理だよ。次の層に進めるかも分からないしさ」
「ま、そうだよね。私も同意見かな。でも、最初にあの命乞いをされた人はちょっと可哀想かもね、油断してた所をやられちゃったんだし」
焔ちゃんの言う最初の人が今二層に居るのか、その一件以来冒険していないかなんて分からないけど、少なくともチャットに怒りのまま書き込んでいたみたいだし、きっと既に復讐は果たしているだろう。
でも、真相なんて分からないし、結果的にその人のお陰で沢山の人が騙されずに済んだのだから、私たちは感謝する他ない。
「ま、湿っぽい話は終わりにしてと、それで、雫から見てあの取り巻きはどうだった? 私もあまり見れないから分からないけど、相当強かったでしょ?」
「うーん、正直言って一個体だったら普通に倒せるって感じかな。でも、あの数で攻められたらそこら辺のボスなんかよりよっぽど強いと思うよ。私も何回か死にかけたし、なんかやばい攻撃もしようとしてきたしね」
「えっ!? そうなの!? あちゃー、やっぱりそうだよねぇ。そんな強いのにも雫は勝っちゃうんだもんなぁ。さすが私の雫だ!」
「いやいや、それを言ったら焔ちゃんこそ一人でボスを倒したんだし、そっちの方が凄いよ!」
確かに私が戦った取り巻きは強かったし、本当に死を覚悟した時も何回かあった。けど、それでもボスであるゴブリンキングよりは弱いはずだ。
それに、仮に役割が逆で焔ちゃんが取り巻きを相手にしていたとしたらもっと早く倒せていただろうし。
「えへへーそうかなぁ。炎を纏った辺りでちょっとやばいかもって思ったんだけど、思ったより弱かったからなんとかなっちゃったんだよね。いやー、でもこれで雫に私のカッコいい所を見せれた訳かぁ。なんだかずっと守られてきた気がするし、なんだか嬉しいな」
「え、私も焔ちゃんに助けられてばっかだしお互い様だよ! あ、てかさ、取り巻きで思い出したんだけど……」
私が最後に一騎打ちをしたあのゴブリン。あれは間違いなく以前焔ちゃんを襲ったやつだし、少なからずトラウマを植え付けた張本人だ。
既にトラウマも克服しているだろうし、件のゴブリンも倒したから話しても問題ないだろうけど、やっぱり私は口を閉ざし、話さないことを選択した。
嫌な思い出を掘り返さない為に。
「ん? あれ? 今何か言おうとしたんじゃないの?」
「あ、うん、ごめん。ちょっと考え事してた。んで、そうそう、あの取り巻きのことさ、チャットに書いておかない? 少しでも情報があった方が後続の人たちも助かるだろうしさ」
無理矢理話を繋げた感は否めないけど、それでも的外れなことは言っていないし、現に焔ちゃんも「そうしよう!」と言ってくれているから、なんとか誤魔化すことは出来たみたいだ。
「よし! それじゃ、チャットにも書いたしそろそろ行きますか!」
「うん! ちょっとワクワクしちゃうよ!」
私たちが得た情報を惜しみなく書き込んだ後、疲れた体に鞭打って二層へと続く扉へと足を進める。
既にゴブリンキングが死に、歓声もなく、誰もいない寂しい闘技場を背にしながら。
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「それじゃ、一層の攻略も終わったし、ステータスを少し見ていこうか!」
「うん! そうだね!
ステータス
名前:兎間雫
レベル:11
ギルド:所属なし
HP:250/99999
MP:110/99999
STR:103/99999《+13》《+35》
VIT:70/99999《+20》
INT:83/99999《+8》
MND:102/99999《+20》《+7》
AGI:95/99999《+9》《+9》
振り分けポイント:残10
素質:MND上昇率20% INT上昇率10% STR上昇率10%
ステータス
名前:暁焔
レベル:12
ギルド:所属なし
HP:270/99999
MP:120/99999
STR:92/99999《+7》《+45》
VIT:75/99999《+20》
INT:75/99999
MND:75/99999《+7》
AGI:172/99999《+57》《+9》
振り分けポイント:残10
素質:AGI上昇率30% STR上昇率15%
「おおっ! 凄い! めちゃくちゃ強くなってるよ! 焔ちゃんはもうスピード特化って感じだね!」
「まぁ私は翻弄する戦い方が好きだからね。でも逆に雫はなんていうかバランス型って感じだけど、そのまま突き進むの?」
「……んー、そこを迷ってるんだよね。今回は振り分けポイントをSTRとAGIに振っちゃったけど、器用貧乏にはなりたくないし、そろそろ考えて振らないとかなぁって思ってるよ!」
「そっか、ま、雫のやりたいようにやるのが一番だよ!」
「うん! これからも頑張っていこうね! 焔ちゃん!」
「そうだね、第二層に行くんだし、気を引き締めていこうか!」
次回から二層になりますので、更新は一週間後か二週間後辺りになります。
そこからはまた隔日更新しますのでよろしくお願いします(*´ω`*)
出来るだけ早く更新出来るように頑張ります(*゜▽゜*)
 




